213話 契約者同士
その後、アイシス以外スカーレットさんに挨拶を済ませて、庭でお茶をすることになった。
お茶をするのはいいが、遠征で帰ってきた男の騎士たちも来る……ファイスさんは休んでいいと言って解散したはずだが、恐らくスカーレットさん目当てだろうな……魔性の女です……。
お茶を飲んでいる姿も色気があるが、ワザとやっているのか?
狙ってやっているようには見えないが、いろいろとミステリアスです。
「こうして契約者同士と一緒にお茶をするのは不思議よね」
「ほかに契約者に会ったことはないのですか?」
「ボウヤ、精霊と契約できること自体おかしいのよ。2人は大精霊と精霊3体なんて、魔力の器が違いすぎる。私がもう1体契約することは絶対に無理、命が危ないわ」
無理ですか……やっぱり転生者と転移者はチートですね……。
すると、エクレールがあくびをしながら出てきた。
「よく寝た~おはよう~」
「起きたわね、ほら、大精霊からいただいたマナポーションよ。飲んでね」
「ありがと~大精霊様~」
エクレールはゆっくり飲み、笑顔になった。
フワフワと飛んで、俺に近づいて顔をスリスリするのですが……。
「やっぱりご主人と一緒だぁ~」
俺から離れて、ソウタに近づこうとすると、精霊たちが阻止する。
「ダメよ、私の運命の契約者に触れさせないわ!」
「あなた……不潔……」
「触るのをお控えください」
「えぇ~ケチ~減るもんじゃあ~ないし~というかあなたたち誰~?」
その発言で精霊たちの圧がすごい。
マイペースだな。3人との性格は合わないみたいだ。
「ところでエクレールは魔女さんと、どうやって出会ったの?」
リフィリアはケンカしないように話を逸らした。
大精霊も大変だな。
「ウチは~雨が降っていて~どこか雨宿りできないか探していたら~寝ているご主人がいて~雨がやむまで服の中に入ったの~」
「私は仕事の疲れで仮眠を取っていて、違和感に気づいて起きたら胸の中から精霊がいて驚いたわ」
「それで~居心地がいいから~そのままご主人とついていって契約したの~」
…………まさかの雨宿りで契約したのか。
偶然にもほどがある。
だから胸の中で寝ているのか……。
「この子のおかげでかなり出世してここまで昇って来たの。エクレールにはずっと感謝しているわ」
なるほど、スカーレットさんの人生も変えたのか。
まあ、好かれるほどの体質を持っているからなんとも言えないが。
「ということで~触らして~」
「「「ダメよ」」」
精霊たちは固い意志だ。
別に触らせるくらいはいいと思うけど。
「ケチ~、ん? この子…………なんでだろう……懐かしい……」
エクレールはルチルの方に行って、ベッタリとくっつく。
「どうしたの?」
「温かい……けど……あれ……おかしいな……」
エクレールは急に涙を流した。
そうか……ルチルは精霊の魔力を持っているからわかるのか。
「大丈夫だよ! 泣かないで! 私たちはずっと側にいるから!」
「うん……けど……涙が止まらない……」
「わかった! 気が済むまで泣いていいよ!」
ルチルは笑顔でエクレールを抱きながら頭を撫でる。
「小人ちゃん、ごめんなさいね……エクレールがこんなに泣くのは初めて見たわ……どうしたのかしら……」
さすがにルチルの素性は教えられないな、どう言い訳するか。
「アタシは精霊と相性が良すぎて、泣いちゃうみたいだよ! リフィリアだって泣いちゃったよ!」
「大精霊が泣いたの……本当なの……?」
「えぇ、三度も泣いたよ。もう泣かないけど」
「じゃあ、本当みたいね……小人ちゃんすごい能力ね……」
問題なくごまかせました……。
まあ、本当のことを言っているけど。
「それで、いつまで警戒しているのかしら? お兄さんと良い関係でいたいのに……私傷ついちゃうわ」
その瞬間、スカーレットさんがソウタに胸チラして――。
「「「ぶはぁぁぁぁぁ――!」」」
周りの騎士が鼻血を出して倒れたぞ!?
大袈裟過ぎないか……。
「「「破廉恥!?」」」
当然、精霊たちはソウタの目を隠す。
スカーレットさんは精霊の反応が面白いのかクスクスと笑っている。
完全に遊ばれている。
「こんな美人な女性が誘ってくれるのは嬉しいが、お断りするよ」
ソウタは欲情せずに冷静に対応した。
いや、無理だろうな。
これならちょっかいはしてこないはず。
精霊も頷いて、納得している……って、騎士たちもなぜ頷いているんだ……。
みんなスカーレットさんを狙っているのか……高嶺の花だぞ。
「あら、お断りされちゃうだなんて、気に入ったわ。今は忙しいけど、いずれお兄さんと一緒に暮らしたいわ……」
その発言に騎士と精霊たちは口を大きく空けて呆然とする……。
マジか……逆に火がついたみたいだ。
「冗談だよな……?」
「冗談じゃないわ……そろそろ私も結婚したいし、お兄さんなら大歓迎よ……」
スカーレットさんは顔を赤くなり始めた。
本気のようです。
『アハハ! 完全に好意を寄せておもしろい! このまま結婚しちゃえば!』
エフィナさん……精霊を刺激してはいけません……すごい殺気が……騎士たちにも出ている……。
「ちょっと待て!? 初対面で結婚の話とか訳がわからない!? なぜ俺なんだ!?」
「私はエクレールと契約して魔力が多くなったから長生きするわ。お兄さんも長生きするからいいと思ったの。ボウヤもいいと思ったけど、完全にボウヤの方が上だから釣り合わない。お兄さんなら釣り合うからよ」
なるほど、同じ長生きをする伴侶がほしいわけか。
確かに精霊と契約すれば不老に近い魔力は得られる。
いろいろと考えているのだな。
しかも俺も対象されていたのか……。
「そうなのか……確かに長生きして一緒にいる人は必要だよな……」
ソウタが納得している……同情しているのか。
「わかってくれたのね……だからよろしくね……」
「ああ……考えさせてくれ」
…………考えるのかよ!?
精霊たちは無言のままソウタの顔を引っ張る。
「や、やめろ!? 決めたわけではないぞ!?」
これだと当分3人は機嫌が悪いの覚悟した方がいいな。
俺は知らないぞ。
「「「精霊使い……許さない……」」」
騎士たちは殺気を強めて諦めてないです……。
その瞬間、騎士たちが剣を抜いて、ソウタに近づいて――。
「なんで剣を向けるのだ!? 今は稽古なんてしないぞ!?」
「「「精霊使い……覚悟……」」」
ソウタは逃げて騎士たちは追いかける。
やっぱりスカーレットさん、魔性の女だ。
「何やっているのだ……お前たち……殺気まみれだぞ……」
ヴェンゲルさんが来て、ソウタたちの光景を見て呆然としている。
面倒だが言わないといけないか……。




