211話 王女を接待②
少し休んでいるときにアイシスが来て、夕食の準備ができたらしい。
俺たちは部屋を出て食堂に向かう。
中に入ると王女さんとヴェンゲルさんは笑顔で座って待っていた。
料理長――ワネッカが満面の笑みで待機している。
どうやらカレーの作り方を教えてもらい喜んでいる。
「みんな来ましたわね。それでは食べましょうか」
「はい! アイシス様に作り方を教えてもらい確信しました! まさに賢者の料理と! クラーラのお口に絶対に合いますよ!」
『アハハハハハ! 賢者の料理って何それ!』
料理長が自慢げに言うが、エフィナは大爆笑である。
カレーが賢者の料理になってしまった……。
アイシス、何か変なを言ったな……俺を見てドヤ顔をしている。
メイドたちが料理を運んで来る――パン、お肉たっぷりのカレー、シーザーサラダ、柑橘系のソースを使ったパンナコッタだ。
「いい匂いですわ。では――こ、これは!? 口に入れた瞬間、香辛料が鼻に通り、深みがあり、美味しいですわ!?」
王女さんはカレーを次々と口に運んでいく、気に入ったようだ。
「こんな美味しいもんザインが毎日食べているのはズルいな!」
ヴェンゲルさんは豪快に食べながら言う。
いや、ザインさんはたまにしか食べていないが……。
しかしカレーは正義だな。
王族も虜にさせるとはさすがです。
「明日の朝もお願いしますわ」
「わかりました! ですが、昼食はカレーは控えてください。アイシス様にほかにも賢者の料理をいろいろと教えてもらえるので楽しみにしてください」
「ほかにも教えてくださるのですね。アイシスさん、ありがとうございます」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
ほかにも教えるのかよ!?
まあ、城にいてもやることないからそうなるか。
食事が終わり、俺とソウタはヴェンゲルさんに連れていかれ、大浴場に来た。
うん、広い。大勢の騎士たちで賑わっている。
身体を洗い湯船に浸る。
「はぁ~仕事後の風呂は最高だな~」
いや、ヴェンゲルさん……今日は何もやっていない気が……。
日頃の激務で疲れはあると思うが。
「そういえば、スタンピードはどのくらい把握しているのですか?」
「ああ、そのことだが、デストルツでの情報によると俺らの大陸に来るのは、2~3週間くらいと予想している。動きに変動はあるがな」
じゃあ、まだ来るのに時間があるか、しかしよく把握しているな。
「誰か偵察とかしているのですか?」
「そうだ。魔大陸の者と協力していてな、特にハーピー族が空から偵察をしている」
「ハーピーなら適任だな」
ソウタが頷く、やっぱりと魔大陸の人と協力しているか。
止められなくて魔王が手配していると思うが、大助かりだ。
「まあ、そういうことだ。国王陛下が戻るまでゆっくりしていろよ」
城にいる時点でゆっくりする神経はないです。
明日は王女さんとの稽古で頭がいっぱいですよ……。
大浴場を上がり、部屋に戻って早めに就寝をする。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
ルチルに起こされると、ほかのみんなは部屋にはいない。
朝食前に各それぞれで何かしらやっているみたいだ。
アイシスが部屋に来ると、朝食の用意ができて食堂に行く。
朝食は夕食と同じでカレーが出てきた。
「昨日食べたより深みがありますわ」
確かに深みがある。
昨日作り置きして寝かせたみたいだ。
朝食を食べ終えて、ソウタと裏庭に移動する。
俺は王女さんとソウタは騎士たちと稽古だ。
お互いため息をつきながら待機する。
先に騎士たちが来て、ソウタは稽古をし始めた。
数分後には王女さんとヴェンゲルさんが来る。
「お待たせいたしました。ではよろしくお願いしますわ」
王女さんは稽古用の槍斧を持って構えた。
ヴェンゲルさんに教わっているから同じ武器を使うのだな。
俺は切れない鉄の剣を右手に持って、準備ができた。
「いつでもどうぞ」
「では、行きますわよ――」
王女さんは真っ先に向かってくる。
迷いなく突っ込んでくるから防ぐか。
その瞬間、サイドステップをして後ろに回る。
ヴェンゲルさんと同じにマネて――いや、違う上だ。
「――――落烈槍!」
俺は剣で防ぎ持ちこたえる。
魔力が多いのか、重みもある。
この王女さん、Aランク以上の強さは間違いない。
「素晴らしいですわ! みんな技を避けますが、レイさんは全然違います! さすがです!」
王女さんは後ろに下がって、体制を整える。
「それはどうも……」
「もっと誇りに思ってくださいな! まだまだ行きますわよ!」
俺は王女さんに怪我させないかヒヤヒヤしてそんな余裕はないです。
今度は真っ正面に向かって、豪快に槍斧を振ってくる。
やっぱりヴェンゲルさんと同じようにマネている。
だが、師と違い隙が多い。
先を読んで受け流すことができる。
だけど、誰かと似ている癖だな……。
『う~ん、誰かに似ている……』
エフィナも気づいたか、けど似ているだけで、気のせいだとは思う。
ここまで思い出せないなら、違うかもしれない。
「レイさん、もっと本気でお願いしますわ! 師と稽古したように!」
えぇ……それ一番困ります……。
怪我させないようにやっているから自分では攻めな――。
「レイ、加減しすぎだぞ! クラーラ嬢だからって手加減は不要だ!」
「そうですわ、私は王女と言っても敵地に行ったら通用しませんわ! そう、相手は女兵士だと思わないですわよ! 手加減は不要です!」
なんだその例えは!?
もしかしてヴェンゲルさんに言われたのか……。
戦争が起きても王様が王女を派遣なんてするわけでもないが……。
「さあ、お願いしますわ!」
しょうがない……普通にやるか……頼むから【手加減】のスキル発動しろよ――。
王女さんが突いてくる瞬間に――。
「――――豪刃!」
「――――っきゃ!?」
切り上げて、王女さんの槍斧は手から離れて地面に落ちた。
これで圧倒的な差を見せて終わって――。
「す、素晴らしいですわ!? 師と騎士団長以外に私のを弾くなんて燃えてきました!」
王女さんは再び槍斧を持って構える。
逆に火をつけてしまった……。
「休憩はしなくていいのですか……?」
「不要でございます! 昼食まで休憩しませんのでよろしくお願いします!」
勘弁してください……。
結局、昼食の準備するまで稽古が続いた。
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