210話 王女を接待①
庭で王女さんとヴェンゲルさんとお茶をしているのだが……みんないなくなった……。
フランカは隅っこで自分の家を出して中で鍛冶、リフィリアと精霊たちは書庫室に行って本を読み、ルチルは城内を探検したいと言い出してメイドが見張りながら行ってしまい、ソウタは騎士たちに稽古をせがまれて裏庭に行き、シエルは庭園の花を鑑賞しに行った。
俺だけで王女さんの相手は困ります……まだヴェンゲルさんがいるからいいが……。
だが、王女さんは俺に質問責めしてくる。
主に旅の話やみんなの出会いとかだ。
普通に話しているのだが、王女さんだから神経を使い大変です。
夕食まで保つかわからない……。
「レイさんばっかり質問して聞いていますが、私にも質問してくださいな」
えぇ……王女に質問するとか、何もないのですが……。
家族のことを聞くしかないか。
「では……国王陛下と王妃様は遠方に行かれているのですよね?」
「ええ、そうよ。この大陸の危機に自らお行かれになるのは誇りに思いますわ」
「ハハハ……そうですね……クラーラさんは第二王女と言っていましたが、姉がいるのですね。今お城内にいますか?」
そう言うと、王女さんは下を向いて暗くなった。
マズいことでも言ったのか……まさか仲が悪いとか……。
「ええ……そうよ……確かにお姉様は城の中にいますが……身体が弱く……部屋に閉じこもっていますわ……昔は元気だったのに……」
ああ……聞いてはいけないことだ……。
「そうなのですね……様態の方は……?」
「お姉様は元気と言っておりますわ……ですが、私は諦めていません。絶対にお姉様を治してみます」
女王さんは顔を上げて、立ち直った。
危ない……この話は早く切り上げよう……。
「そうですか……もしよろしければその……治すのを手伝いましょうか?」
「ありがとうございいます。ですが、これは家族――王族の問題ですわ。お気持ちだけ受け取らわせてください」
「わかりました……」
やっぱり王族の問題だから巻き込ませないようにしているのだな。
しっかりしている。
『ええ~ボクたちが手伝えばすぐに治せるのに~』
『エフィナの気持ちはわかるが、王族の問題だから俺たちは首を突っ込めないぞ』
『そう? 今はスタンピードで忙しいから終わったら治そうね!』
何勝手ことを言っているのだ!?
人の話を聞いているのか……。
まあ、この話を聞いてモヤモヤはするのは本音だ。
しかし、身体が弱くなったってことは魔力循環が上手くできていないことか?
それなら「マナチャージ」でなんとかなりそうだが、相手は王族、簡単には手出しできない。
スタンピードが終わったらいろいろと情報を仕入れて考える必要はあるか。
わかり次第、もう一度言って手伝うことにしよう。
「レイ、ザインから聞いたがお菓子を作っているみたいだな。俺たちにもくれよ!」
「お菓子も作れるのですか!? 是非ともお願いしますわ!」
ヴェンゲルさんはこの重い空気を変えてくれた。
本当にありがとうございます。
俺は無限収納からお菓子をいろいろと出して2人は堪能してくれました。
日が暮れる頃にようやく王女さんの接待が解放された。
いったん、部屋に戻って夕食を待とう。
部屋に戻る途中でソウタと会うのだが、かなりお疲れのようでした。
「大丈夫か?」
「大丈夫では……ないな……騎士の稽古するのはいいが、連チャンでするとは一言も言ってないぞ……
次々とやりたいと押し寄せて困ったぞ……」
ため息をつきながら言う。
前に騎士と稽古したが体育会系すぎて困るよな。
「明日もやるのか?」
「そうだよ……代わってくれないか……?」
「俺は王女さんと稽古するから無理だ。お互い頑張ろうな」
「はぁ~王様が戻ってくるまで大変だな……」
いや、王様が戻っても謁見が一番大変だが……。
部屋に入ると、リフィリアとルチルはすでに戻っていた。
2人は笑顔で満足している。
とても有意義な一日中だっただろう。
「ご主人! お城の中はスゴく広くてね! 広くてね――」
ルチルは嬉しそうに飛びながら駆け寄って、いろいろと言いたそうだ。
よほど楽しかった――。
「飽きた!」
飽きたのかよ!?
まだ1日も経っていないぞ!?
「飽きたって……5日待つのだぞ……大丈夫か?」
「大丈夫! ご主人と一緒にいるから飽きないよ!」
そうですか……じゃあ、問題ないか。
「私は本がたくさんあって幸せだよ。王様が戻って来るまで、退屈しないで嬉しい」
リフィリアは充実しているな。
まあ、暇があったらフランカの家で調合するとは思うが。
その後、フランカとシエルも来て夕食まで待つ。
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