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204話 唯一ないもの


 畑を見回してもワサビがない。

 基本ワサビは渓流で栽培するからないと思ったが、考えてみれば畑ワサビの栽培もある。

 まあ、【創種】なら環境関係ないから問題はないが、唯一ワサビがない。

 小人にとっては需要がないのか?

 確かにワサビは小人のお腹を満たすことはできないが。

 蕎麦やアナゴとかあるならさらに欲が出てワサビをつけて食べたくなる。

 ワサビ醤油にして刺身も食べたい。

 

 畑で収穫している小人に聞いてみると――。


「わさび? おいしいの?」


 首を傾げてわからないようだ。

 じゃあチトセは【創種】でワサビの種を創らなかったか。

 まさか自分が苦手で創らなかった可能性もある。

 ないのならしょうがない、諦めるとしよう。


「みんな、わさび知ってる?」


 聞いた小人はワサビがなんなのか気になって周りに聞き始めた。


「「「わかんない!」」」


 周りが知らないならこの世には存在しないな。

 代用品を探すしかないか。

 ……って……みんな気になって俺の方に来るのですが……。


「「「わさびって何?」」」


「ワサビは鼻がつーんとする食べ物だよ! 蕎麦のおつゆに入れて食べるとおいしいよ!」


「「「食べたい!」」」


 ルチルの発言でみんな食べたくなってしまいました……。

 

「悪いけど、探しているから聞いただけだが……」


「村長なら知っているよ!」


「村長を探せ~」


「「「おお~!」」」


 多分だが村長も知らないと思うが……。

 みんなで村長を探し――集会場のイスに座ってのんびりとお茶を飲んでいた。


「ん? みんなしてどうしたのだ?」


「村長! わさび知ってる?」


「わ、わさび!?」


 村長は顔を真っ青になり、湯吞をカタカタと震えさせている。

 わかりやすい、知っていますね……。

 

「あっ、知っている! 食べたことがあるの?」


「あ、あれは食べ物じゃない……オイラが勝てない相手だ……」


 嫌いみたいですね。

 だから畑で栽培していないのか。


「じゃあ、わさびの種があるみたいだ! みんなで倉庫で探すぞ~!」


「「「おお~!」」」


「ま、待て!? オイラが全部燃やして捨てたからないぞ!」


 そう言ってもみんな村長のスルーして縦長の大きな倉に向かう。

 中に入ると――棚に大きな袋に入った種が並んで名前を書いて保管してある。

 しっかりしているな……なくらないように保管してるのはさすがだ。


 手分けしてみんなで探しても「ワサビ」という文字はなかった。


「「「ない!」」」


「あれは食べ物ではないからな! 捨てて当然だ!」


 様子を見に来た村長はなぜか胸を張って言う。

 捨てなくてもいいとは思うが……、よほど嫌いだったのか……。

 

「「「ブ~」」」


 みんな顔を膨らまして不満だ。

 

「捨てた物はしょうがない! この話は終わりだ!」


 本当に燃やして捨てたならかなりもったいない……。

 どこかに誤って捨ててはいないかな?

 村長のことだ、ボロがあるはず。


『なんだ? 騒がしいと思ったら何を探している?』


 みんな慌てていたら守り神も見に来た。

 

「守り神様! わさびの種がないの! わさびが食べたい!」

 

 いや、守り神に言っても解決するわけでは――。


『ワサビか? ちょっと待ってくれ、今から儂が持ってくる。 お主も来てくれ』


「「「わ~い!」」」


 あるのかよ!? しかもなんで俺も一緒に行く前提なんだ?


「俺もか?」


『そうだ、ここでは言わないからついて来てくれ』


 小人には言えないことなのか?

 まあ、あるのだったら喜んで行くが。


 守り神についていき、神社に着いた。

 守り神は身体を小さくして社殿内に入る。

 そこに保管してあるのか?


 社殿の中は何もない、守り神は下の床を足でトントンと叩くと――飛び出て下には階段へと続く。

 隠し扉か……下へと降りていくと暗くて何も見えない。


『着いたぞ』


「いや、何も見えないのだが……」


「儂は暗くても見えるぞ」


 夜目なのか……しょうがない光魔法を使う――。


「――ライト!」


 周りを明るくすると――倉庫並みの広さで同じように種が袋に入って棚に置いてあるが、違うのは文字……これは日本語で書いて分けられている。

 

『あったぞ、これで間違いないか?』


 漢字で「山葵」と文字が書いている。間違いなさそうだ。

 というか守り神は漢字読めるのか……。


「ああ……ありがとう……まさか社殿下に保管してあるとはな……」


『念には念を入れると言ってチトセが小人に作ってもらった。これは儂たちの宝物だ』


「宝物を使ってもいいのか?」


『同郷なら問題ない。ここは小人に内緒にしてくれぬか?』


 守り神が言うならありがたく使わせてもらうが、疑問がある。


「なぜ小人には内緒なんだ? ここの倉庫を作った本人にも内緒にしろと言ったのか?」


 ここを教えても守り神の宝物として粗末には扱わないとは思う。


『理由は作った小人はもういないのだ……それも不治の病で……みんなつらかった……みんなに見せると誰が作ったか聞くであろう……言ったらあの頃を思い出して泣いてしまう……』


 他界したのか……しかも気を遣っているとは……。

 いや待てよ――。

  

「その小人って……」


『お主に関わりが1番深いミツキの両親だ』


 まさかのミツキさんの両親が作ったのか……すごいな……。

 

「じゃあ、ミツキさんはここを……」


『安心せい、知らんよ。ミツキの両親は口が堅いからたとえ息子でも言わんよ』


 なるほど、口の堅い人に作ってもらったのか。

 徹底している。

 

「わかった……内緒にする……」


『理解が早くて助かる』


 ミツキさんの両親、チトセに感謝してありがたく使わせてもらう。


「どのくらい持っていいのか?」


『1袋いいぞ』


 やっぱり10袋あるから1袋いいのか。

 無限収納に1袋しまう。


「あそこに倉庫にはないのがあるが少し見てもいいか?」


『いいぞ、欲しいなら1袋持ってってもいいぞ』


 いいのか……。

 とりあえず周りを見ると……大変です……ここに眠らせた方がいいのでは……。 

 文字に「松茸」「白トリュフ」「高麗人参」と書かれているのですが……。

 高級食材はダメだって……確かに宝物だよな……。

 そういえばキノコ類も【創種】で創れたっけ……うん、チートです……。

 さすがに高級食材はもらえない、少しくらいはいいけど、いったん保留で。


『なんだ、全部1袋貰えばいいのに~』


 エフィナさん……1袋貰うと頭が追いつかなくておかしくなりそうだから……いろいろと考えてからでないとダメだ……。


 ほかには「桜」と書いてある。

 しっかり大切にしているのだな。

 

 倉庫から出てみんなのところに向かう。


「戻ってきた! ご主人、あったの?」


「ああ、この通り――」


「「「わ~い!」」」


 前に出てきたルチルに無限収納からワサビの種を出して見せると、みんな喜んで飛び跳ねる。  

 村長はガクガクと震えているが……。


「なんであったのだ!?」  


『儂が大事に穴を掘って取っておいたのだ。儂はワサビが好きだからな』


 上手いこと言い回すな。

 これなら誰にも怪しまれなくて済む。


「えっ!? 守り神様、ワサビが好きだったの!? みんな、早くてワサビを植えるのだ!」


「「「は~い!」」」


 みんなワサビの種を持って畑の方に向かった。

 たとえ村長がワサビが嫌いでも守り神のことになると話は別になる。

 無事に収穫できるだろう。


 今植えても滞在期間内に収穫できるから楽しみだ。

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