203話 騙された男
男は会話はできるみたいだ。
しかし……魔力が黒いのに蝕まれて長いこと持たない。
「ありがとう……これで……楽になれる……」
だが、男は微笑んだ顔して悔いのない様子だ。
「悪いが、聞きたいことがある。あの石は無理やり付けられたのか?」
「ああ……帝国の実験台にされて……付けられた……」
やっぱり帝国の仕業か……傍迷惑にもほどがある。
「なぜ実験台にされた?」
「金に……困ってた……帝国の手伝いをすれば……金が入ると……それで実験台に……」
金に目がくらんで騙されたか。
しょうがないのか、自業自得なのか微妙なところ。
「その石を開発した奴はわかるか? 関係者でもいい」
「それが……わからない……記憶が曖昧で……石を付けたのはわかるが……思い出せない……」
やっぱり隠蔽するために小細工をしているな。
またあぶり出すことができなかった。
「わかった、楽にしてくれ……」
「すまない……もう帝国には行きたくない……追ってが来そうで怖い……ここはどこなのだ……身体が勝手に動いて……気づいたらここに……」
「ここはプレシアス大陸だから遠く離れている。追っても絶対に来ないから大丈夫だ」
「そうなのか……よかっ…………た……」
男は笑顔で息を引き取り、黒いのが消えて、身体が灰へと変わっていき消えていった。
『帝国のヤツら……また最低なことを……』
エフィナは怒っている。
帝国は邪石で兵器でも作る気か?
この場合は魔王を討伐する準備でもしているに違いない。
人の命をなんだと思っている……ふざけるのも大概にしろ。
王都に報告した方がいいよな。
とりあえずみんなが起きたら考えるか。
「アイツ消えたぞ……レイ……説明してくれ……」
ソウタが駆け寄って、前回のこと――邪石とドセグノの出来事を話した。
「そんなバカげたことを……やっぱりズイールは野蛮な大陸とは聞いていたが、ここまで酷いのか……行かなくて正解だ」
やっぱりソウタは魔大陸の人から聞いてズイール大陸には行かなかったか。
精霊がいるから行かないとは思うが。
「そう言うことだ。今後もあり得なくないから気をつけろよ」
「ああ、絶対に止めるから大丈夫だ」
ソウタに伝えたし、あとはみんなを起こして……気持ち良く眠っているな……。
『気持ち良く眠っているから自然に起きた方がいいよ』
起こさなくていいのかよ……いや、エフィナは様子を見て慎重に判断をしているとは思う。
「アイツの奇声でみんな気を失ったが、催眠効果のある超音波的なものなのか?」
『可能性としてはそうだね。ボクたちには効かないから大丈夫だよ。けど、小人が効くのは意外だけどね』
俺も予想外だとは思う。
まあ、いくら最強の種族でも弱点もある。
限度はあるよな。
みんなが起きるまで様子を見る。
――30分後。
みんな起き上がり、平然としている。
何も害はなかったようだ。
倒したことを伝えると――。
「「「ありがとう!」」」
笑顔いっぱいで返してくれました。
「またアイツらの仕業か……」
「ギルドマスターに報告ですわね」
グラシアさんの言う通りザインさんに報告すれば問題なさそうか。
あとは……邪石を付けた奴が来る可能性がある。
また同じ奴が来られるとみんな対処できない。
「リフィリア、みんなに加護の付与はできるか?」
「うーん、ごめんなさい。今は厳しい――2~3年待てば魔力も上がって、できないことはないよ」
「そうか、わかった。無理なことを言って悪かった」
「ううん、気にしないで」
さすがにリフィリアでも厳しいか。
そんな都合が良すぎる話はないな。
まあ、すぐには来ないと思うし、守り神もいるからなんとかなるか。
「それじゃあ、帰ろう~!」
「「「おお~!」」」
みんな何事もなかったかのように元気よく帰宅する。
今は先のことを考えるより、今を楽しむべきだな。
村に到着すると、もう夕食の時間だった。
「「「ただいま!」」」
「おかえり~もうご飯できているよ~」
「「「わ~い!」」」
夕食はちらし寿司、野菜の天ぷら、茶碗蒸しだ。
どれも美味しくいただきました。
食べを得たら村長にも今日起きたことを伝えると――。
「オイラたちは強いから大丈夫! そんなことよりアナゴが楽しみだ~!」
アナゴの方が大事でした……。
言う人を間違えた……守り神に伝えると――。
『そのようなことが……安心せい、儂がみんな守るから大丈夫だ。心配はせんでもよい』
守り神はしっかりして助かる。
これなら心配は無用だ。
まだ1週間以上滞在できるから思う存分楽しもう。
――――◇―◇―◇――――
村に来て1週間が経過した。
あの騒動の翌日にはアナゴ使った釜飯、煮アナゴ、天ぷら、アナゴの厚焼き卵と焼き牡蠣、牡蠣の酒蒸し、カキフライと大満足なのだが。
一通り村を周ってみたがあるものがない…………そうワサビだ。




