195話 温泉
北東の方に進むと――鼻につかない程度の硫黄の匂いがして、湯気で視界が遮る。
次は温泉でも紹介するのかな?
フランカは察したのかそわそわしている。今すぐにでも入りたいみたいです。
縦長で大きい小屋に入ると、番台の上に座布団を敷いて正座している小人が待っていた。
「村長! 空いているから今ならゆっくり入れるよ!」
「そうなのか!? だけど、今は案内をしているからあとで!」
「わかった!」
受付をしているのか。
まるで銭湯のようです……。
目の前には小人たちが服を脱いで棚に置いてある籠に入れる――脱衣所だ。
ミツキさんが言ってた通り混浴なのか……。
俺たちが来ても男女関係なく恥じらいがない。
むしろ喜んでいる……。
パターン的に精霊はソウタの目を……隠していない。
珍しいな。
「小さいから安心ね」
「問題ない……」
「かろうじて大丈夫ですね」
胸基準で判断しているから問題ありませんでした。
「温泉、温泉、楽しい温泉!」
上機嫌な小人が入ってきた――しかもルチル以上にナイスバディです。
服を脱ぐと精霊はすぐソウタの目を隠した。
「何よ、あの子……大きすぎよ!?」
「うぅ……大きすぎて……問題あり……」
「かろうじて大丈夫ではありません!」
いつも通りでした……。
結局ソウタはあの子が通り過ぎるまで目を隠されていました。
「ここが自慢の温泉だ!」
小屋に出ると――周りは岩盤で出来た広々とした温泉である。
広すぎだな……1000人以上は余裕で入れるな。
しかもシエルと守り神が小さくなって入っているのだが……。
守り神も【身体強化・変】を使えるのか……。
「村長! もう我慢できない! アタイも入っていいか!」
「空いているからいいよ!」
「やったぜ! ほら、ダンナも入るからこっちに来てくれ!」
「えっ? 俺も!? 夕食後でも――」
「細かいことは気にするな! さあ、入ろうぜ!」
「アタシも入る!」
フランカとルチルに引っ張られて脱衣所に戻り、無理矢理脱がされる……。
「私も入ります」
「私も入ろうかな」
「我も入る!?」
「じゃあ、オイラも入る!」
「私も入りますよ!?」
「み、ミツキさんが入るなら私も……」
「ミツキ様が入るのでしたらわたくしも……」
次々と便乗するが――。
「じゃあ、俺も――」
「「「ダメ!」」」
精霊は大きくなってソウタに抱きついて脱ぐのを阻止する。
まあ、やましいことを考えなければいいと思うが……。
「久しぶりの温泉だ! 入らせてくれ!」
「大きい人が入るからダメよ! 特にさっきの子とリフィリア様、アイシス、ルチルが入るからダメ!」
「主……不潔すぎ……」
「絶対にダメです! 我慢してください!」
精霊は頑固たる意思だ。
ソウタには悪いが日を改めて入るしかないか。
「その必要はございません。この日のために用意をしてきました」
アイシスは無限収納から青い衣類――湯浴ゆ着を出す。
本当に用意がいいことで……。
「これで一目を気にしないで入れます。多めに作ってありますので着たい方は言ってください」
「私も着るよ」
「助かるよ。アイシス」
「ありがとうございます。アイシスさん」
次々と女性陣が着ていく。
これで精霊も――。
「アタイはいいや。普通に入る」
「アタシは着なくても大丈夫!」
フランカとルチルは着ません……。
2人はそこまで気にしないようです。
まあ、さっきの子も普通に入っているから今日は無理か。
「みんなで入った方が楽しいし、あったかくなるよ!」
隣で聞いていた小人が目を輝かせながら言う。
精霊は少々動揺しています。
「今日はやめておくわ……」
「今日はちょっと無理……」
「今日は事情があって入れないです……」
訳を話すとその子は落ち込んで下を向く……。
「みんなで入った方がいいのに……」
『あ~かなりショックを受けているね~小人を悲しませてはダメだよ~』
エフィナの発言で精霊たちは焦り始める。
なぜか楽しそうに言うな……。
「わ、わかったわよ! 入ればいいのでしょう!」
「は、入るよ……」
「入りますから、落ち込まないでください!」
「うん!」
その子は機嫌を良くなって笑顔で返した。
押しに負けましたね。
結局全員で入り、身体を洗い湯船に入る――――最高に気持ちいいです。
日頃の疲れが一気に吹き飛ぶ……それしか言えない……。
フランカの魔力が通常の風呂に入っているより倍輝いている。
村にいる間はほとんど入りそうだな。
ソウタは湯船に入ると、精霊が警戒をしている。
胸がそこそこある小人が近くを通ると目を隠す。
これだと落ち着いて入れないのでは……。
そして気になることが――。
「ハハハ! 温かくて気持ちがいいな!」
セイクリッドは高笑いして入っている。
鎧が自分の身体だとわかるが、お湯の感覚がわかるのか……。
まあ、考えてもキリがないからゆっくりとしようと思ったが……小人たちが俺の方に近づく。
ルチルが俺の股に座っているのをジッと見つめる……。
「代わってもいい?」
「いいよ!」
ですよね……。
なぜか俺と一緒に座るのが定番になっています……。
喜びながら小人は俺の特等席を座り、数分くらいで次々と交代する。
落ち着かない……。
『おかしいな……いっぱいいるのに欲情してない……非常に残念だ……』
『だからするわけないだろう!』
全く……エフィナはいつも変なことを言う……。
アウトだからするわけないだろう……。
もう逃げられないのはわかったけど、もう少し温泉をゆっくり入りたいな……。
小人たちの要望を応えていたらかなりの時間が経ち、夕日が暮れていました。




