194話 村長の案内
みんなはある程度守り神と話し、満足だった。
「それじゃあ、みんなは歓迎会の用意と作業に戻るのだ!」
「「「は~い!」」」
村長が大声で言うとみんなは解散をする。
「みなさん! 歓迎会まで時間があるので、村の案内をしますよ!」
ミツキさんが案内してくれるのはありがたい。
「ちょっと待ったミツキ!? 案内するのは村長であるこのオイラだ! 任せてくれ!」
村長はなぜか自慢げに胸を張って言う。
村長が案内する役目と決まっていないがしたいのか……。
「村長、私がします! みなさんとは長い付き合いだから私が適任です!」
ミツキさんも一歩も譲らない。
「ミツキはやることがいっぱいあるぞ! もう倉庫には売る食材が山積みになっているから早く行かないと鮮度が落ちちゃうぞ!」
いやいや村長さん、ミツキさんがそんなことで――。
「えっ!? もう倉庫いっぱいなの!? すぐいってくる!?」
ミツキさんは走ってこの場を去り、ウィロウさんとグラシアさんも行った。
マジか……村長はミツキさんの扱いに慣れているな……俺たちにドヤ顔しないでください……。
「よし、ミツキがいなくなったからオイラが案内をする! みんなついてきて!」
村長は嬉しそうに前に出て案内をする。
シエルは守り神と話したいから神社に残る。
西の方――森の奥へと移動して甘い匂いがしてきた。
うん、アイシスさんは顔がにやけてデレモードに入りました。
匂いが濃くなると、周りの木はほかのと違い、かなり大きい木が並んでいる。
「ここはオイラたちには欠かせない、ツリーシロップを採っている!」
その木には穴をあけた場所に蛇口らしきものと繋げて、バケツにポタポタと黄金色の樹液が落ちていく。
採り方は予想はしていたけど、結構速いペースで落ちていくな。
半日ほどでバケツが満タンになりそうだ。
「採れたてが一番おいしいから舐めてみて!」
村長のご厚意で採れたてを指に採り舐めてみると、普段食べているより滑らかで美味しい。
採れたてをヨーグルトと一緒に食べると最高だろうな。
「美味しい……ここは楽園ですか……」
アイシスは一口舐めただけで幸せです……。
まあ、ここでしか味わえないからそうなりますね……。
魔力反応が出てきた、この感じは――。
「――――ガアァァァァ!?」
ハニーベアーが向かってくる。
ハチミツでもなくても甘いのならなんでもいいのか……。
「邪魔な熊だな、とうっ、――――豪襲脚!」
「――――グガァ!?」
村長は高く飛び、ハニーベアーの頭上に蹴りを入れて倒した。
手慣れていますね……普通の人なら大騒ぎして逃げるが、周りで作業している小人は平然としています……。
さらに奥の方から子どもたちがズルズルとハニーベアーを引きずってくるのですが……。
「村長! 遊んでいたらまた熊がいたよ!」
「最近多くて本当に困るなー、倒した熊は歓迎会の料理だ! 調理場に運ぶのだ!」
「「「は~い!」」」
子どもたちは何事もなく、そのまま行ってしまった……えぇ……。
「あの……村長さん……まさか子供が抱えていた熊って……」
「子どもたちが倒した奴だよ!」
ですよね……。
子どもでも倒せるのか……。
「危険ではないのですか……」
「ん? 熊程度だったら余裕で子どもでも倒せるよ!」
余裕なのかよ!?
だから周りの大人は心配もしないで平然としているのか……。
空から見て村に柵とかがなかったが、自分で対処できるから防衛は不要みたいだ。
攻撃は最大の防御ってやつですか……。
改めて大陸最強の種族と実感した。
ツリーシロップの案内が終わり次に南へと進み、農地に案内された。
空から見たが、やっぱり広いな、遠く見渡しても広がっている。
「ここはオイラたち自慢の畑だ! 特にオイラの好物はトマトだ!」
だから村長はトマト畑の近くに来たのか……ちゃっかり自分アピールしている。
じゃあ、在住期間にトマト系の料理をご馳走させよう。
用が済んだのかミツキさんが駆け寄る。
「村長!? またトマトの量が少ない!? もっとちょうだい!」
「ダメだ!? オイラのトマトだぞ!? 全部は渡さないぞ!」
「すぐに生えてくるから大丈夫だよ!?」
少々揉めていますね。
いや、広範囲トマト畑だが……それでもダメなのか……。
隣で作業している小人に聞いてみると――。
「いつものことだから大丈夫! その内ミツキがきょうこうしゅだんをするよ!」
強行手段?
無理矢理採るのかな?
「みんな! またトマトが少ないからいつも通りお願い!」
「「「は~い!」」」
ミツキさんは大声で言うと、周りはトマト畑に集まって収穫を始める。
「オイラのトマト!?」
みんな村長の声を無視して黙々と採り、ミツキさんは取られないように、すかさずアイテムボックスにしまう。
「もう大丈夫だよ! みんなありがとね!」
十分な量になったのか、みんな解散をする。
村長は少し涙ぐんでいます……。
「手塩にかけたオイラのトマト……」
「手塩も何もすぐ生えるのだから我慢して!」
「3日目のトマトがスゴくおいしいのに……」
こだわりがあるようですな。
だが……まだ半分以上もあるのだが!?
自分で食べるのに山ほどあるのでは!?
それともその前にみんな採って食べてしまうのか……。
『可哀想だね~ほら、レイ、慰めてやんなよ!』
エフィナ……唐突に振るのやめてくれないか……。
この落ち込みようだと案内できないよな。
「村長さん、ミツキさんは村のためにやっているので、大目に見てください。俺はこのトマトは世界一美味しいので、本当に感謝していますよ」
「えっ!? オイラのトマトを気に入っているの!?」
「はい、ですから多くのトマトを栽培してみんなを幸せにしてください。よろしければ後日トマトを使って料理をしたいのですがいいですか?」
「わかった!? そこまで言うのだったらトマトの畑を拡大だ~。じゃあ、明日トマト料理お願い!」
機嫌を取り戻して、嬉しいのか、周りを駆け回ります……。
村長といえど、みんなと同じ性格ですな。
『村長だから頑固かなと思ったけど意外にちょろいね。まあ、レイが言えばなんでも聞いてくれるから安心だけど』
なぜ、俺限定なのだ……好かれる魔力があっても限度があるだろう……。
農地の案内が終わり、ミツキさん、ウィロウさん、グラシアも加わり、村長はスキップしながら次の案内をする――。




