189話 帰還報告
ウィロウさんとグラシアさんも屋敷から出てきてルチルを見て驚いていた。
アイシスが小人族で賢者の弟子で、最近成人して故郷から離れたと話すと納得してくれた。
「まさか小人が賢者の弟子って……すごいな……賢者はいったい何者なのだ……」
「この子……誰にも負けないのでは……」
いろいろと隠しているが、ここまで噓がバレないのは不思議です……。
【隠蔽】スキルさまさまです……。
それにしてもルチルは小人としてなったが、ミツキさんはよくルチルを小人としてわかったんだ?
もしかしてルチルが小人として完璧だったのか?
ミツキさんに聞いてみると――。
「なんとなくですけど、一目見たとき私たちと同じだってわかりました!」
じゃあ、勘みたいな感じかな。
まあ、仲良くなっているから別にいいか。
屋敷に入り、みんなでお茶をしながら情報確認をする。
街周辺の魔物はほとんど倒して元通りの日常となった。
だが、リリノアさんから商都の方で魔物が大量発生しているからアリシャたち含む――ギルドの半数が応援に行ったのこと、忙しいのはまだ抜けないらしい。
やっぱりどこも大変だな。
小人のみんなは魔物討伐の頼みが終わって、俺たちを早く故郷に招待したいらしく、ウズウズしながら待っていた。
ルチルの件と報告もあるから、申し訳ないが2日後にしてほしいと言ったら喜んで承諾してくれる。
優しくて助かる……。
夕方過ぎになると――。
「みんな帰って来たの!?」
いつも通りリンナさんが来る。
「やっと帰って来たわね! 長いこと待っていたから、アイシス私にお菓子を作って…………誰この子!? 違うところが大きすぎよ!?」
ルチルを見て動揺をしている……。
再びアイシスがルチルのことを話すと、床に膝をつく……。
「ま、負けた……」
自分の胸の大きさを比べていたのか……。
「リンナ嬢、ルチ助が規格外なだけだ……気にすることはない……」
フランカが肩をポンポンと叩いて慰める。
「そ、そうね……」
リンナさんは立ち上がり、お互い手を握る。
『女の友情は素晴らしいね~』
切り替えが早くて助かるけど、これは果たして友情なのか……?
いろいろと考えたらエフィナの思うツボだからやめておく。
ルチルは2人の姿を見て首を傾げていた。
気にしてはいけない……。
なんだかんだリンナさんとは打ち解けたみたいだから良かった。
夕食を終えて、リンナさんとソウタたちが帰宅すると、小人のみんなは俺を見て目が光っている……。
「わ~い! ご主人とお風呂!」
「「「お風呂だ~!」」」
いつも通り強制的に運ばれて浴室に向かいます……。
ルチルが裸になると、みんな気にしない様子だった。
『なんで男性陣はルチルの身体に欲情しないのだ……』
なぜエフィナは期待しているんだ……。
そういう性格だと解釈してくれ……。
俺の特等席の取り合いになって1時間以上入りました……。
そして風呂を上がると、ほかのみんなは膝をついて落ち込んでいた……。
もう慣れてくれ……。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
今日はミランドさんにルチルと挨拶しに行く。
説明するためにアイシスも一緒に同行をする。
ミランドさんの反応は――。
「フハハハハハ! まさか賢者が小人を弟子にしていたとは素晴らしい! 実に素晴らしいよ! この街は一生安泰だ! 喜んで歓迎するよ!」
いつも通り大丈夫でした……。
次にギルドに向かい、ザインさんに報告をする。
オルリールさんから魔道具で言ったとは思うけど、戻ったことは言わないといけない。
ギルドマスター室に入ると――ザインさんはルチルを見て汗がダラダラです……。
「き、来たか……オルリールが言ってた通り……小人の嬢ちゃんを絶対に敵に回してはいけない……」
ザインさんも本能的に危険だとわかったか……。
オルリールさんはルチルのことも言ったのであれば話が早い。
ルチルは挨拶をするが汗が止まりませんでした。
少し落ち着いてから本題に入る。
「依頼が終わったので休暇を取っていいですか?」
「ああ、もちろんだ。だが、予想外なことが起きるから2週間くらいにしてくれよ」
意外にもらえるな、十分すぎると思うが。
「ありがとうございます。では失礼します」
「ゆっくり休めよ」
許可ももらったことだし、あとはミツキさんの故郷を行く準備をするか。
――昼過ぎ頃。
フランカに自分の家に呼び出されてある物が完成した――ミスリルで作られた等身大のティーナさんの像だ。
忠実に再現されていてティーナさんも文句は言わないだろう。
少々遅れたが、約束通り会いに行かないといけない。
お菓子を渡すためにアイシスを呼んで、像に祈りを捧げて行こうとすると、ルチルも急に来て、祈りを捧げる。
行きたいのか……。
視界が変わっていき――花の庭園に来た。
本当に成功した。
これで教会に行かなくても済む。
遠くからシャーロさんがゆっくりと走って来て、俺に抱き着き、嬉しいのか尻尾を振っている。
「ヤッホー……魔物討伐お疲れさま……元気にしてた……?」
「はい、この通り」
「うん……無事で良かった……さっそくだけどお菓子をちょうだい……」
『いきなりそこ!?』
心配していたのはお菓子が欲しいからか……。
「こんにちは、私たちがいるタイミング来るとはありがたいな。ティーナだけだとお菓子を独り占めするから空気を読んでくれるとはさすがだ」
ソシアさんも来る。
いや、タイミングいいのは、たまたまですよ……。
しかもティーナさん独り占めするのか……。
「こんにちは……ところでその本人はどこに?」
「ああ……なんと言うか……あれだな……」
「少し会うの遅れただけで拗ねている……状況的に忙しいから大目に見ればいいのに……」
2人とも呆れるように言う……。
そして顔を膨らませながらティーナさんが向かって来ます……。
『アハハ! ティーナが拗ねている! おもしろい!』
エフィナさん……前回と同じように油を注ぐような発言はやめてください……。
何も言わずに近づいて来る……。
「レイ……今回は仕方がないから許すわ……だけど今回は私がお姫様抱っこする番よ! シャーロどきなさい!」
とりあえず大丈夫みたいです……お姫様抱っこは承諾はしていないが……。
ティーナさんが言ってもシャーロさんは無視して離れてくれない。
「シャーロ……どいて……」
「イヤ……」
「どきなさい……今回は私の番……」
「早い者勝ち……」
2人とも圧がすごいです……。
キリがない……ソシアさんに助けを求めるが、首を振って無理みたいです……。
『アハハハハハ! だったらレイが2人とも抱っこすればいいじゃん! 余裕でしょ?』
エフィナさん……無茶を言わないでください……いや、【豪力】のスキルがあるから大丈夫か……。
「しょうがない……我慢する……」
「それはこっちのセリフよ! まあ、いいわ……レイお願いね」
右にシャーロさん左にティーナを持ち上げて、お菓子を置く為にテーブルが設置してある場所に向かう。
『アハハ! 本当にやっている! おもしろい!』
エフィナ……適当に言ったな……まんまとハメられた……。
「あれ? 今さっきいたルチルはどこに?」
「ルチル君ならあそこに――ん? コイツは驚いた……」
ソシアさんが指を差すとルチルは庭を手入れしている双子の天使を喜んで追いかけている。
「わ~い! 待て~!」
「「わ~い! 捕まえてごらん!」」
双子の天使も喜んでいます……。
あの双子は人見知りだがルチルは大丈夫みたいだ。
指を差したソシアさんも大変驚いている。
「意外だわ……」
「意外……」
ティーナさんとシャーロさんも驚いている。
「あの……庭園を駆け回っていいのですか……ダメでしたすみません……」
「別に問題ないわよ。自分の庭だと思っていいわ」
問題ありませんでした……女神様は寛大です。
一緒に遊んでいるなら邪魔しないでおこう。
テーブルに移動してアイシスは前頼まれていたお菓子を大量に置く。
忙しいなか、よく大量に作れるよな……。
当然、目の前に置かれたお菓子を3人は急いで無限収納にしまうかのように取り合いになる。
「私が頼んだから私が先よ!」
「早い者勝ち……」
「私もいつもここにいないからな! 多めにもらうぞ!」
用も済んだことだしこのまま帰宅は……できるのか?
いつも魔法陣が出て帰還できるけど、あれは女神様の力で発動していると思うが個人で帰還はできるのか?
とりあえず「帰る」と念じてみるか――。
その瞬間、床に魔法陣が表れる。
自分の力でも帰れるみたいだ。
それに気づいたティーナさんとシャーロさんは手をかざして――。
「「させない」」
魔法陣は消えていった……。
帰るのを遮断したのか……。
「レイ……まだたくさんお話したいことがあるの……逃がさないわよ……」
「お菓子で夢中だったけど、大事な話がある……」
「すまないがレイ君、まだ付き合ってほしい」
無理でした……強制的にイスに座らされて、もう逃げられません……。
シャーロさんは大事な話とは言ったがいったいなんだ?




