184話 終わるまで待機
ブレンダと会う前に街中でフランカが飲む酒を買う。
見張りをしている騎士に教えてもらい、果実酒専門店に行く。
店内に入ると――棚には酒が入った瓶がぎっしりと陳列してあり、試飲用として蛇口付きの酒樽が置いてある。
できれば、酒樽で欲しかったが、無理そうだから瓶だけにする
この機会にまとめて買うか。
店員に辛口の酒を値段関係なく全部用意するよう頼むと、2人がかりで慌てて用意をした。
目の前に置かれた果実酒は30種類で安いのは大銅貨1枚で高いのは大金貨1枚だ。
フランカにはいろいろとお世話になっているから奮発する。
飲み比べできるように全種類を白金貨1枚分購入を決めた。
店員に辛口を全部購入すると言って白金貨を渡すと、手を震えさせて拝まれました……。
急いで従業員全員で用意をして、500本以上購入をした。
『アハハ! 久々に大量に購入している!』
エフィナはいつも通り面白がっています……。
まあ、今はミツキさんに食材をもらっているから買うのは限られるからな。
その中で1番高い酒は3本購入したが、これはフランカの誕生日に空けようとしよう。
なんだかんだ時間を潰すことができて、昼過ぎになった。
まだ学校が終わる時間ではないが、先にルミンとジョナサンに挨拶をする。
ブレンダの寮に着き、玄関ドアをノックすると、ルミンが出てきた。
「ぼ、ぼっちゃまとお姉様!? お久しぶりでございます! もしかしてこの方は……?」
「久しぶりだなルミン、察しの通り精霊だよ。今は大精霊になって、名前はリフィリアだ」
「お久しぶりです。ルミンさん」
「久しぶり、元気にしてた?」
「美人の大人!? 旦那様から聞いていましたが、ここまで成長するとは……さすがぼっちゃまでございます!」
「お世辞はいいから、急で悪いな。王都に2日滞在するから挨拶しに来た。元気そうで何よりだ」
「はい、おかげさまで! お嬢様はまだ帰って来ないので、中でお茶を入れます。どうぞ入ってください!」
ルミンに案内されて、ジョナサンも出て来て挨拶をした。
リビングに移動して、イスに座ってお茶を用意してくれた。
せっかくだから無限収納から焼き菓子を出してご馳走する。
「美味しい……ぼっちゃまのお菓子は王都の職人より美味しい……」
「久しぶりに食べると……ウマい……」
ルミンとジョナサンは次々と口に運んで大満足して食べる。
まだお菓子は高くて毎日は食べられないからしょうがないよな。
カルムではミツキさんのおかげで一般の人でも買える金額にはなったが。
「ところでブレンダはいつ頃帰ってくる?」
「お嬢様は授業が終わっても帰らず、魔法の練習をしています。日が暮れる前には帰ってきます」
ミランドさんと聞いている話と同じで変わらず頑張っているな。
「そうか、無理はしていないだろうな?」
「前は日が暮れて夕食過ぎになっても帰ってこないときがありました。まだルルナ様と一緒に帰ってくるので良かったですが、寮母として早く帰るよう注意しました」
オーバーワークだな……。
しかもルルナもか……まだ低学年なのにそこまで頑張る必要はないのに……。
「本当に大丈夫なのか……」
「はい、休みの日はゆっくり休んでいるので問題ありません。お嬢様とルルナ様は学年で1、2位を争っていて、お互い頑張っています。お嬢様は負けない性格なので、無理のない範囲でなければ私は止めません」
まさか学年で上位なのか……すごいな。
ブレンダの性格だとしょうがないか。
ルミンが言うなら大丈夫か。
「そうか、それを聞いて安心した」
「ですが、最近……ため息ばっかりついています……。ぼっちゃまと会うのは魔法をある程度覚えていてから会うとか言いまして、我慢していましたが、もうすぐお嬢様の誕生日です。予定では旦那様と奥様方が来るはずだったのですが、外は魔物が多すぎて来られない状況です。お嬢様はかなり我慢をしています……」
我慢していたのが、さらに我慢するハメになったか。
我慢しすぎていつかは爆発するから危ないな。
「それで、俺たちがちょうど来たから何かしてほしいと?」
「お忙しいのは重々承知しております! 明日学校が休みなので、お嬢様と1日一緒にいてくれませんか!?」
「俺からもお願いします……」
ルミンとジョナサンが頭を下げる。
断る理由はないな、しかも明日休みとはタイミングがいい。
喜んでおもてなしする。
「わかった。引き受けるから頭を上げてくれ」
「ありがとうございます!」
「ありがとう……ございます……」
「それじゃあ、ご馳走の用意をしないとな。アイシスお願いできるか?」
「承知いたしました。ではフランカの家に招待して、祝う形でよろしいでしょうか?」
「お任せするよ」
「家……まさか旦那様が言っていた魔法の家ですか!?」
ルミンは目を輝かせて言う。
あっ、ミランドさん……俺たちのこと全部言ってますね……。
「そうだが……」
「私たちも行ってもいいですか!?」
「もちろん……」
「やった! 旦那様から聞いて気になっていましたので嬉しいです!」
そんなに嬉しいのか……まあ、家に入ったら大変驚くだろうな……。
少し経つと、鐘の音が聴こえる。
ルミン曰く、学校の鐘で授業が終わったらしい。
だけど、ブレンダはここから魔法の練習をするから2、3時間は待っていないといけない。
それまでゆっくりするか――。
すると、大きく玄関のドアを開く音がしてバタバタとこっちに来る。
そして姿を現した――。
「ルミン、ジョナサン! 王都にブルーワイバーンがいるって噂が入ったよ! もしかしてお兄…………さん?」
ロープを来て、スカートの制服を着たポニーテール姿で、前プレゼントしたネックレスをつけてブレンダが来た。
…………ちょっと待て、変わりすぎだろう!? 凛とした顔立ちになり大人っぽくなって、身長が150㎝前後はあるな……。
うん、1年で成長し過ぎだ……。
それとシエルがいる噂で俺がいるとわかったのか。
「久しぶり、元気にしてたか?」
その瞬間、ブレンダは持っていた本を床に落して駆け寄って――。
「お、お、お……お兄さん! 会いたかったよ!」
泣きながら抱き着いてきた。
抱き着いてくるのは変わっていないな。
そして予想外なのは……柔らかいものが多少ついていることです……。
アイシスさん……拳を握りしめてドヤ顔しないでください……。




