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18話 秘薬作り、その報酬

 朝食を終え、いよいよ豆乳作りだ。台所に向かうとメイドたちはメモの準備をしている。

 気合が入っているな……それに屋敷内の人ほとんどが台所に来ている。

 いや……ただ豆乳を作るだけなのに大袈裟だな……。

 

「では、賢者の秘薬を作りたいと思います。まずは――――」


 約1日浸してある、大豆の水を切り、挽き肉にする手動のミキサーに入れ、細かくする。

 うん、よく考えているな、この世界に自動ミキサーなんてないからな、その代用があって良かった。


「まさか大豆をこのように細かくするとは……」


 ミランドさんも興味深々だ。

 

 その細かくした大豆と水を鍋に入れ、火にかけ混ぜ合わせる。焦げ付かないように混ぜれば大丈夫だ。

 大体10分くらい加熱したら、布を敷いたボウルに入れ、布に包み、手で絞っていく。しかし……すぐ絞るの熱くないか? 火傷するだろう……。


『大丈夫だよ! 氷で手をコーティングして絞っているから熱くないよ!』


 器用なことしますね……。

 豆乳とおからに分ければ完成だ。


「完成でございます」


「「「おお~」」」

「「「さすが、お姉様!」」」


 周りに拍手をもらい、アイシスは少し顔を赤くして照れている。


「賢者の秘薬と聞いて作るのが難しいかと思いましたが、こんなに簡単にできるとは思いませんでした……」


 いいえ、エレセさん……賢者の秘薬ではなく、豆乳ですので簡単ですよ……。

 勘違いしないでください……。


「では、誰か試飲をお願いします」


「わたしが飲む!」


 コップに入れた豆乳をブレンダが飲む、砂糖入れてないから飲みづらいはず……。


「…………おいしい! ミルクみたい!」


 マジか……質が良いから飲みやすいのかな? 


「私にもください! …………美味しい!? 本当にミルクみたい……」


 エレセさんにも好評だ。メイドたちも飲み続け……。


「美味しい!」

「これ本当に大豆なの!? おいしい……」

「こんなに美味しいの作るなんてさすが、お姉様!」


 人気のあまり、すごいペースでなくなる……。

 俺も飲んでみるか――って美味しすぎるだろう! 甘味もあって癖もない、これ調整豆乳みたいに飲めるな……。

 これだと砂糖いらずだ。 


「皆様、あまり飲みすぎると身体に悪いです。1日2杯までにしてください」


「「「わかりました! お姉様!」」」


 メイドたちは良い返事をするな……確かに豆乳を飲み過ぎると、生理不順を起こすとか言われているからな。

 

「あの……お姉様、この絞ったカスは捨てるのでしょうか?」


「良い質問ですね、これはおからと言って、賢者の秘薬と同様に同じ効果があります。では、これも有効活用していきます。すみませんが、紙に書いた材料を持ってきてくれませんか?」


「はい! 喜んで!」


 また何か作るのか? メイドたちは小麦粉、パン粉や肉、卵、ロングオニオンその他色々と持ってきた。

 あっ、何を作るかわかった……。


 アイシスはロングオニオンをみじん切りにし、先程使った手動のミキサーで肉をミンチにし、その2つをフライパンに入れ炒める。

 炒めたら、おからと合わせて成形し、小麦粉、卵、パン粉に付け、油を敷いた鍋で揚げて完成した。

 うん、おからコロッケだ。


「完成しました、おからコロッケでございます。試食をお願いします」


 みんな試食をすると……。


「食感がたまらない!」

「まさか絞ったカスがこんなに美味しくなるとは、さすが、お姉さま!」

「これは魔法ですわ!」


 うん、しっとりして美味しいな。おからだけだと、パサつくと思っていたが全くない。主食にしてもアリだな。

 おからコロッケも好評であった。これで終わりかな?


「まさか豆乳がこんなに美味しいとは思わなかった……これなら豆乳でパンナコッタ作れるな」


 それを言うとみんな視線が俺の方に向いた――。

 あっ……余計なことを言ってしまった……。

「ご主人様、本当ですか!?」


「豆乳と生クリームを半分合わせて作るけどな」


「なるほど、勉強になります!」 


「また昨日の甘味を作ってくれるのか!?」


「でもゼラチンがなければ――」


「こちらにあります」


 アイシスはアイテムボックスから板ゼラチンを出した……。まだあるのかよ!


「頼む! 今から作ってくれないか? 私はあれの虜になってしまった!」


「承知いたしました。ではすぐに――」


「ちょっと待て、アイシス! 手を洗ったとはいえ、生の肉を使った後で作るのはダメだ」

 

「申し訳ございません……不甲斐ないです……」


『そこは結構厳しいのだね』


『まあ、元料理人だし、衛生管理は厳しいぞ!』


 この世界の食中毒事情は知らないけど、職業柄そこは譲れない。


「代わりに俺が作るからそこで見ててくれ、疲れてもいるし」


「いいのですか!?」


「ああ、しっかり休んでくれ」


「ありがとうございます!」


「まさか、レイが作ってくれるなんて……」


「まあ、見ててください」


 まさかこの世界で初めて菓子を作るのが豆乳のパンナコッタとは……。

 やるからには本気で作る。

 

 まずは、板ゼラチンを水に入れてふやかし、豆乳、生クリーム、砂糖を鍋に入れて火にかける。

 沸騰直前に火を止め、ふやかした板ゼラチンを入れ溶かす。溶かしたら、ボウルに水を入れて魔法で氷を出し、鍋を置き粗熱を取り、トロミが出るまでゆっくりかき混ぜる。

 これをやらないと豆乳や生クリームが分離して層に分かれてしまうし、舌触りも悪くなる。トロミが出たら器に入れて氷で冷やし固める。

 もちろん、この世界には冷蔵庫がないから氷魔法を使って冷やさなければならない。本当に便利で助かる。

 冷やしている間にソースを作る。豆乳を入れたから少しあっさりしているし、カラメルソースでいいか。鍋に砂糖、水を入れ、火にかけて、焦がして完成。

 ――1時間後、しっかり固まっていることを確認して完成した。


「どうぞ……」


 ミランドさんに渡す……。


「では…………ん!? ウマい! 昨日と同じ味でウマい! ソースは違うがまたこれも良い!」


 それに続いてエレセさん、ブレンダも食べる。


「秘薬を入れて、それに美味しくいただけるなんて魔法だわ!」


「お兄ちゃん、おいしいよ!」


 そしてメイドたちも……。


「「「おいしゅうございます! ぼっちゃま!」」」


 みんなに好評で良かった、それにアイシスは震えながら……。


「ご主人様の……パンナコッタ……すごく美味しいです!」


 ケーキ食べたのと全然違う魔力の輝き方をしている……そんなに良かったのか!?


「ところでレイ、まだ大量にあるのは……」


「夕食の分ですよ、帰るので作り置きしました」


「なんと! ありがたい! いっそこのまま住んで、養子として――そしてアイシス君をメイド長として――」


「いえ、帰りますからね!」


 ――料理を終え、帰る為庭に出た。ミランドさんたちが見送りをしてくれる。


「いや~レイとアイシス君には本当に感謝してるよ! いろいろともらってばかりじゃあ、悪いね!」


「いえ、大したことはしてないので」


「そう謙遜するなって! ハハハ!」


 ミランドさんは上機嫌だな……。


「お兄ちゃん! 楽しかったよ! また来てね!」


「ああ、祭りで会ったらよろしくな」


「うん!」


「レイ、アイシスさん、本当にありがとう! 賢者の秘薬は適量を守って飲みますので!」


「はい、よろしくお願いします。それと周りにはあまり言わないでください。大豆が品薄になってしまいますので」


「もちろん、言いませんよ!」


「それでは、また……」


 そして喜びながらメイドたちは……。


「「「――――いってらっしゃいませ! ぼっちゃま! お姉様――――!」」」


アイシスも加わった……こうして濃いお泊りが終わった。

 帰りの途中、ミランドさんの見送りのときはクールだったアイシスが笑顔でいる……。

 なぜかというと、報酬として砂糖を10㎏もらったからである。

 さすがにもらいすぎかと思ってアイシスは板ゼラチンをあげた。まだあったのか……。

 これだと祭りが終わった後はキラースネーク狩りだな。

 もしかしてアイシスは砂糖狙いで料理を教えたのか? 

 そうだとしたら意外と策士だな……。


『砂糖をもらって良かったね!』


「はい、嬉しい限りです! ご主人様、何を作りましょうか?」

 

 目が輝いているな……。作るったって明後日、祭りのこともあるし軽い物しか作れない。


「さすがに今日は無理だけど、明日マドレーヌを作るのでいいか?」


「はい、喜んで!」


 マドレーヌでいいのか……。 


「じゃあ材料買って帰るか」


「はい!」


 市場によって材料を買い、帰宅した。 

 その後、俺とアイシスの称号に【栄養士】が追加されていた。

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