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182話 元サブマスターと勝負


 勝負と聞いたルチルは首を傾げる。


「なんで勝負するの?」


「オイラは協会の者だからな! 嬢ちゃんの強さを疑わっているわけではないが、見極めないといけない! 嬢ちゃんの強さを知りたいのさ!」


 そう言ってヴィクトリアさんは大きく尻尾を振っている。

 ただ、単に勝負したいだけですな……。

 オルリールさんはため息をついている。もう止められないな。


「わかった、勝負する!」


 ルチルは躊躇いもなく笑顔で返す。

 少々騙されている気もするが、ルチルには頑張ってもらおう。


 1階にある稽古場に移動すると、次々と人が集まってくる。

 気になるのはわかるが、騎士団の人も見るのかよ……。

 仕事はいいのか……。


「お前たち、我々を救ってくれた恩人の強さをよく見るように!」


「「「はい、団長!」」」


 問題ありませんでした……。

 見るのも仕事の内ですな。


 稽古場に着くと、ヴィクトリアさんは無表情だが、先ほどよりも尻尾を大きく振って、魔力を放っている。

 その前に魔物を狩っていたのに疲れも一切ない。いや、ただの準備を運動に過ぎないか。

 

 今回は稽古用の武器を使用すると、すぐ折れる可能性があるから普段使っている真剣――ミスリルの大剣を使う。

 本気だな……。 


 ルチルは飛び跳ねながら【武器創造・結晶】で結晶の短剣(クリスタルダガー)を2刀創り、準備ができた。


「母ちゃんだけズルい……」


 フェンリは耳と尻尾と垂れ下げて、羨ましそうに見る。

 あとでルチルにお願いして稽古させるか……。


「ハハハ! 小人と闘うのは初めてだ! 準備はいいか?」


「いつでもいいよ!」


 ヴィクトリアさんは剣を構え――真っ先にルチルに向かい、剣を振るう。

 いきなり先手を取るのか……。


 ルチルは2刀構えて大剣を軽々と防ぐ。


「ハハハ! さすが小人だな! 小柄でもオイラの剣を受け止めた!」


「こんなの余裕だよ!」


 ルチルは大剣を弾いて、剣を逆手にして攻める。

 あまりの速さにヴィクトリアさんは攻めずに防御に徹する。

 

「ボスの奥さんが押されているぞ……」

「すげぇ……剣筋が全く見えない……」

「小人強すぎだろう……」


 周りは息を吞み、次元が違うとわかったみたいだ。

 しかし……攻めが得意のヴィクトリアさんが押されるのは意外か。

 その本人は満面の笑みです……。


「ハハハ! 楽しいな!」


「小人の嬢ちゃんが強さがわかったならもういいだろう……」 


 オルリールさんは震えながら言う。

 やっぱりルチルには勝てないと思ったのか。


「全然当たらない! これらならどうだ!」


 ルチルは後ろに下がり、ヴィクトリアさんの周りを走って、四方八方に向かって剣を振るう。


「威力はあるが、オイラには届かないぞ!」


 その瞬間、ルチルは消えて背後にいた。


「――――刹那!」


 すぐさまヴィクトリアさんは腕と剣に思いっきり魔力を通して振り向かず、背後に剣を向けて受け止めた。


「ハハハハハ! オイラが後ろを取られるとは予想外だ! そろそろオイラも行くぞ!」

 

 そのまま後ろに下がり、お互いに体制をを整えて突っ込む――。


「――――狂乱走斬!」


「――――羅刹!」


 剣と剣がぶつかり合い、ほぼ互角だ。

 なぜかルチルはミツキさん――小人が使う技を使っているのだ?

 しかも完全に再現している。


「やるな! これならどうだ!」


「おい、ヴィクトリア!? ここではやめろ!?」


 オルリールさん大声で言うが遅かった。

 膨大な魔力を使い、剣を思いっきり床に叩きつける。

 

「――――烈撃衝破!」


 衝撃波はルチルを襲う。

 セイクリッドの「覇閃斬」より威力がある。

 さすがのルチルも食らったら一溜まりもない。


「う~ん、避けられない! ――――クリスタルランパート!」


 魔法で床から厚い壁――結晶の城壁を創り、衝撃波を防いだ。

 そのまま壁上に上って高く飛び、【武器創造・結晶】で結晶の脚(クリスタルレッグ)を創り、脚につけて――。


「とうっ、――――豪襲脚!」


 ヴィクトリアさん目掛けて蹴りを入れるが剣で受け止められた。

 ルチルも負けじと脚に魔力を通して押しに掛かる。


「ハハハハハハハ! 少しキツイな! だが負けない!」


 お互い一歩も譲らない状態だが、ヴィクトリアさんの大剣がヒビが入り――剣が折れる。

 

「ミスリルが折れたぞ!?」

「あれ、特注品の剣だよな……白金貨2枚するよな……」

「ミスリルより硬いのか……」


 周りは大変驚いています。

 ルチルはミスリルくらいなら問題なく折れると思うが弁償した方がいいのかな……。


 折れた瞬間、ヴィクトリアさんはルチルの蹴りを避けて、手を上げて勝負は終わった。


「ハハハハハハハ! オイラの剣を折るとは驚いた! オイラの負けだ! ほら、ミスリルカードだ! 受け取れ!」


 ヴィクトリアさんは気持ち良く高笑いしながらルチルにミスリルカードを渡した。


「わ~い! アタシのギルドカード! ご主人、もらったよ~!」


 上機嫌で俺に向かって来た。

 これでルチルも不便なく過ごせるな。

 ただ問題として――。


「すみません、ヴィクトリアさん……大事な剣を壊してしまい……」


「ハハハハハハハ! 謝らなくていいぞ! とても楽しかったからな! 気にするな!」


 すごい寛大ですね……。

 だが、こちらとしても予想はしていた範囲だ。

 弁償はしないといけない。


「フランカ、お願いがあるけどミスリルの大剣を作ってくれないか? できればあれと同等を」


「お安い御用さ! なんならそれ以上の仕上がりになるがいいか?」


 問題ありませんでした……。

 

「お任せするよ……。と言うわけで代わりにフランカが作ってくれますので、勘弁してください」


「なんと!? オイラの武器を作ってくれるのか!? それじゃあ遠慮はいらない! よろしく頼むぞ!」


 相変わらず豪快で気持ち良く返事をしますね。

 そうと決まれば、ミスリルの大剣が完成するまで王都に泊りますか。

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