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179話 結晶騎士


 いきなり土下座されても反応に困る……。

 浄化されたのか、魔力がキラキラと輝いている……。


『よし、今日からボクたちの仲間だ!』


「約束通り、我はお主たちの仲間になろう!」


「ちょっと待て!? 俺はいいと一言も言ってないぞ!?」


『えぇ~! じゃあ、みんなの意見聞いてからにするよ! ルチルはどう思う?』


 全く……勝手に決めて……ルチルは真顔でデスナイトを見ている。

 いろいろと考えているのか?


「コレクションにできないからどっちでもいい!」


『どっちでもいいのなら、いいってことだね!』


 いいわけないだろ!? グレーだぞ!?

 どうしてそこまでしてこのデスナイトを仲間にしたがる……。


 扉の開く音がしてアイシスたちが来た。

 ソウタと精霊たちは少々疲れている様子だが無事で良かった。


 みんなはデスナイトが土下座しているところを見て困惑しています……。


『ちょうどいいタイミングで来たね! ボクが説明するよ!』


 エフィナが事の経緯を説明すると、状況はわかったようだ。


「コイツ、デスナイトなのか……? 明らかに違う魔物だが……」


 ソウタは疑問に思うことがあるようだ。


「浄化されて違う魔物になったのは確かだ。デスナイトと言うより結晶騎士(クリスタルナイト)だな……」


「確かに輝きと色合いとしてはその方がしっくりくるな」


 ソウタは頷いて納得してくれた。

 ふと思うが、この元デスナイトは普通なら浄化されて倒れるはずだが、何かしらの条件が揃って生かされているのか?

 それとも未練があるのか?

 全然わからない……。 


『そんなことはいいから! 仲間にしてもいいよね!』


 エフィナに急かされてみんなに意見を聞く。


 ソウタ、アイシス、フランカは俺に任せるみたいで、リフィリア、精霊たちは魔力が良いから仲間にしてもいいみたいだ。

 精霊陣は魔力で判断するのか……。


『あとはレイだけだよ!』


 そう言われてもな……かなり迷惑をかけた魔物だからな……強さを求めたとはいえ、傍迷惑だ。

 しかし……このまま放置してもダメだな。

 聞いてみるか。


「もう土下座はやめろ。楽な姿勢になってくれ」


「いいのか……では……」


 元デスナイト――クリスタルナイトは土下座はやめてあぐらをかく。


「質問するが、なぜダンジョンに入った者を帰らないように閉じ込めた?」


「それは我のところまで来られるか試したのだ。ここに来れば強い者だと思うからな」


 だから逃げられないようにしたのか……本当に傍迷惑だ……。


「それで、今は俺たちと戦うことはしないのか? 今のお前ならまだ戦えるはずだが?」


「我は……姿が変わったら、お主たちと戦う気力などなくなった……平常心でいられ――むしろ、清々しい気分だ」


 浄化されたから戦闘狂ではなくなったか。

 仲間にするとしても襲ってくる可能性は……ないな……。

 元デスナイトのときは殺意で戦っていた訳ではない。ただ強い奴と戦いたかっただけだ。

 不意打ちは絶対にしないとは思う。

 騎士団たちは怪我はあったが死者は出ていないから生かしておくが、仲間にするにはまだ少し抵抗がある。


「俺たちについて来ても不便だぞ? 一生強い奴とは戦えないかもしれないぞ?」


「我はもう強者は求めぬ……強さを求める代わりに何かを守りたくなった……そう、お主たちを守りたい! 我はお主たちの剣となり盾となって守りたい!」


 戦闘狂から守護者の方になったのか!?

 浄化……恐ろしいです……。

 

『良くぞ言ってくれた! じゃあ仲間にするの確定だね!』


 だからまだ決まっていない!?

 まだ見極める必要が――。


「我はダンジョンを捨てる覚悟はできておる! 証明して見せよう!」


 そう言ってクリスタルナイトは剣を持って奥の扉に進む。

 扉を開けると広々とした赤い玉座に入った。

 椅子に置かれている球体――ダンジョンコアがある。


 クリスタルナイトはダンジョンコアを持つ。


「これが我の覚悟だ! ――フンッ!」


 ダンジョンコアを上に投げると剣で真っ二つにした……。

 自分でコアを破壊したぞ!?


「この場所は制御しなくなった。そして核を破壊したことで我のスキル【ダンジョン生成】はなくなった」


『レイ、ダンジョンマスター自らコアを破壊することはあり得ないよ! しかもユニークスキルまで手放すのはかなりの覚悟が必要だよ!』


 …………ここまでされると、断れないな……。

 しょうがない……連れていくか……。

 

「わかった……連れていく……」


「感謝する! 我を倒した主殿よ!」


 クリスタルナイトは拳を上げてガッツポーズをする。

 そんなについて行きたかったのか……。


『やったね! これからよろしく! えっと、名前は――』


「我に名前はない、我を倒した主殿よ。我に名をつけてほしい」


 やっぱり最後に止めを刺したから俺に名前をつけてほしいのか。

 見た目はクリスタルだが、違う角度では見渡すと紫色に淡い紫、赤、オレンジ、黒とかに見える箇所が多い。

 パワーストーンのスーパーセブン――セイクリッドセブンだ。


「セイクリッドでどうだ?」


「セイクリッド……ハハハハハ! 我に相応しい名だ! 感謝する主殿よ! このセイクリッド、皆を守る騎士だ!」


 気に入ってくれたようだ。

 さて、解決したことだし、証拠として真っ二つにされたコアを回収して帰るか。

 あれ? ルチルは?


「うわ~い! 宝箱だ!」


 玉座のイスの裏からルチルの喜んでいる声が――。

 向かうと、そこそこ大きい宝箱がある。


「それは我を倒したらもらえる財宝が入っている。持っていくがよい」


 まさか、宝まで用意するとか優しいな……。


「わ~い! 開けるよ!」


 ルチルは勢いよく宝箱の蓋を開けると――宝石や王冠、白金、金、銀のインゴットなど入っている。

 

「すごいな……どこで集めた……?」


「長年魔物を切っていたら、たまに光物が出でくることがある。それが面白くて集めた。安心してくれ、しっかり洗っているから問題ない」


 そうすると間違えて食べ物と誤って飲み込んだり、どこかのお偉いの貴族が魔物に丸飲みされて消化しきれなくて胃袋に入ったままが考えられるか。

 

「まさか人は切っていないだろうな……?」


「相手が来ない限り我は剣を振らないぞ。基本、我に驚いて逃げるがな」


 ですよね……デスナイトが歩いていれば大騒ぎになるか……。


「わ~い、アタシこの王冠が欲しい!」


 ルチルは宝石付きの王冠を頭に被って喜んでいる。

 よほど気に入ったのか。


「欲しいならもらっていいよ」


「わ~い、大切にする!」


 ルチルは王冠を無限収納にしまった。


「我も集めた甲斐がある」


 そう言ってセイクリッドは腕を組んで頷いた。

 やっぱり優しい。


 なぜかお宝を楽しみにしていたフランカはあまり喜んでいない。

 白金、金と銀のインゴットもあるから何かしら作れるとは思うが。


「フランカ、お宝に不満があるのか?」


「いや、そうじゃないが……その前に良いのを見つけてしまってな……」


「良いもの?」


「ここじゃあ、狭いからボス部屋で出すよ」


 再びボス部屋に戻り、フランカは無限収納から黄金に輝いている鉱石――倒した前回戦ったミスリルゴーレムより大きいゴーレムを出した。

 

「まさか……このゴーレムって……」


「ああ、オリハルコンゴーレムだ。魔石にならなくて運がいいぜ」


 よくもまあ、倒しましたね……。

 ゴーレム自体鉱石の魔物だから魔石にはならないのか。


「ソウタも戦っているなら山分けはしないのか?」


「俺たちは倒すの無理だったぞ……フランカ、アイシス、リフィリアでしかあの硬い金属に通らなかったからな……山分けなんてとんでもない」


 精霊たちも頷く。

 ソウタと精霊たちは厳しいか……だから合流した時に疲れ気味だったか。


「しかし……セイクリッドもとんでもない魔物を呼ぶな……【ダンジョン生成】のスキルで呼んだのか?」


「如何にも、スキルを発動したら我の魔力が多く持っていかれて、知らぬ間に我の以外の魔物は床の魔法陣が急に出てきて現れた」


 魔法陣? 召喚するのか? それとも転移系か?

 自分でもわからないみたいだから、深くは追究はしない。


 お宝とダンジョンコアを無限収納にしまって帰る準備ができた。


「マスター、私が「ゲート」で外まで移動させるね」


「わかった。よろしく頼むよ」


 みんな集まり、そして――。


「――――ゲート!」


 魔法を発動したらダンジョンの外に移動する。

 外は夕暮れの時間だ。

 目の前にはシエルがうつ伏せで尻尾をゆっくり振って退屈そうに待っている。


『やっと戻って来たかのぉ…………ぬわぁ!? 増えておる!?』


 セイクリッドを見ると驚いて立ち上がった。

 やっぱりそうなるよな……。

 

『あっ、いっけない、ボクがあまりにも興奮しすぎちゃって、シエルに言うの忘れていた! 今説明するよ――』


 エフィナがセイクリッドがダンジョンマスターだったこと、ついてくることを話すと――。


『うぅ……酷いのじゃ……こやつに……独りにされるとは……酷いのじゃ……』


 大号泣でした……。

 ダンジョンに入れなかったこと根に持っていますね……。


「どうして泣いている?」


 セイクリッドは首を傾げる。

 わからないのも当然。


『ほら、セイクリッド! シエルに謝った方がいいよ!』


 謝る必要あるのか……。


「ん? 我が何をしたかわからないが、すまない」


 セイクリッドは頭を下げた。

 謝るのか……それでもシエルは泣いている。


 リフィリアが慰めに入り、30分くらいで泣き止んだ。

 とりあえずセイクリッドを受け入れた。



 もう日が暮れているから今日もここでお泊りだ。

 明日王都に言って報告をする。

 それまでにセイクリッドをどうするか考える。


 みんなでフランカの家に入ってゆっくりする。  

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