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170話 最終手段


 魔結晶ならエフィナの魔力に頼らなくても十分に魔剣を創ることができる。

 ただ……これを使うということは責任と覚悟をしないといけない。


「リフィリア……魔結晶を使うぞ……いいか?」


「うん……いいよ……」


 リフィリアは作り笑いをしながら答えた。

 またつらい思いをさせるが、この状況をわかってくれた。


 ソウタと精霊たちは悲しい目で見る……。


「レイ……止めはしないが本当にいいのか……」


「ああ……危ない状況になったら使うと決めていたからな……」


「そうか……わかった……」


 あまりいい返事はしない。

 無理もない、ソウタは考え込んでいるが頑張って理解しなくてもいい。

 これは俺とリフィリアの問題だ。


「リフィリア様……いいのですか……」

「胸が……苦しい……」

「レイ様も訳があって使うのはわかります……だけど……」


「3人とも……大丈夫だから……私は魔結晶を持っていてもみんなを思い出してつらいことが多い……だからマスターに渡したの……けど、マスターが何かしら使えば楽になると思っていたけど、こんなにもつらい……マスタ……早く使って……」


 リフィリアは涙を流して、精霊たちを抱きしめた。

 本音を言ったか……本当に申し訳ない……辛いなら早く準備を――。


『リフィリア、これだけは言わせてね。今はつらいけど、レイが魔結晶で創れば命が宿る。新しい命が生まれるからそんなに悲しまないでね。種族は魔剣(あの子)次第だけど、故郷のみんなだと思って面倒見てね』


「みんな……わかった、約束する!」


「私も面倒見る!」

「ぼ、ボクも……」 

「わ、私もやります!」


『よろしい! だから泣くのはおしまい!』


「うん!」


 リフィリアは泣くのをやめて笑顔になった。

 エフィナには本当に頭が上がらない。

 

『何しんみりとしているのさ! さあ、早く創ってよ! あれだけ言わせたのだから失敗は許されないよ!』


「ああ、もちろん!」


 もう俺はこの選択には迷わない――絶対に扉を壊せる魔剣を創る。

 無限収納からマナポーションを出して飲み――準備はできた。


 魔結晶に両手を当て――想像をする。


 この世にある硬い物全てを切れる剣――。


 それだけではダメだ、魔力を通しやすい剣――。


 属性は地――いや、岩より硬い鉱物――。


 一番硬い鉱物アダマンタイトか? 

 違う――それよりも硬い――結晶だ。


 すると、魔結晶が光り輝いて――魔剣が頭に浮ぶ。

 創造以上だ……危ないと意識が飛ぶ……。


 だが、創ってみせる――――。



「来い! ――――()()()()()!」



 虹色の光に包まれ――光が消えると()()にはクリスタルのように輝く半透明な魔剣を持っている。

 

 成功はした……だけど予想以上の負荷だ……エフィナはいつもこんな負荷を耐えていたのか……。

 膝をついてしまった。

 まだやることはある……起き上がれない……。


「マスター! 今あげるからね! ――――マナチャージ!」


 リフィリアは俺の背中に当て――魔力を注ぐ。

 身体も楽になった……しかし、こんなにあげて大丈夫なのか……。


「助かった……リフィリア……あげすぎだぞ……」


「大丈夫だよ。マスターが魔剣を創ったら魔力がいっぱい流れてきたから平気だよ。アイシスとフランカを見て」


 リフィリアの言う通りアイシスとフランカを見ると――2人とも膨大な魔力で覆われている。

 いつもより全然違う……かなり増している。


『わ~い! 早く扉壊そう!』


 結晶の魔剣から可愛らしい少女の声が聞こえる。


「ああ、もちろんだ。よろしく頼んだよ」


『うん!』


 いい返事をする。

 自信があるみたいだ。


「ちょっと待てダンナ、リフィリアから魔力をもらったといえど、体調は大丈夫か? 今のアタイならあの扉を壊せるから休んでいてくれ」


 フランカが心配してくれる。

 確かに体調は万全ではない、今のフランカならあの扉をは絶対に壊せるはずだ。

 フランカの言う通り休憩するのもアリか。


『えぇ~アタシが壊したい! フランカは見学していいよ!』


 結晶の魔剣も一歩も引かないな……。 


「創られたばっかりで一丁前なこと言っているのだ!? ダンナのことを考えろ! アタイがやる!」


『アタシがやる!』


 お互い一歩も譲らない……。

 2人とも頑固だな……。


『2人ともケンカしないで、レイ、扉を切る気力はある?』


「まあ、大丈夫だけど」


『じゃあ、2人で壊そうね! 早くしないと騎士団が助からないよ』


「わかったよアネキ……」


『わかった! エフィナ!』


 お互い納得してくれたか。

 すると、頭の中からスキルと魔法の獲得が浮ぶ――。

 スキルは【魔力感知】から【第六感】にかわり。

 魔法は新しく【結晶魔法】に【地魔法】上級、【光魔法】中級を覚えた。

 

 新しく覚えた魔法を使う――。


「――――クリスタルソード!」


 左手に結晶の剣を持つ――。


「2人とも準備はいいか?」


『うん!』

「おうよ! ――――ブルーフランベルジュ!」


 フランカは右手に豪炎に青く燃える剣を持ち、準備はができた。


 お互いに扉に近づき――。


「――――極晶乱華!」

「――――蒼炎乱華!」


 扉を一心不乱に切り刻む――あれだけ硬かったのに簡単に入り、徐々に扉が崩壊していく。


 数分もかからず、扉全体を壊した。

 苦戦したのが噓のようだ……また強い魔剣を創ってしまった……。


『わ~い、楽しかった! ご主人! 早くアタシを置いて! 【人化】するよ!』


 忘れていた、早く【人化】させないと騎士団に見られてしまう。


「わかった、これでいいかな?」


『うん! 大丈夫だよ!』


 元気がいいな……。

 結晶の魔剣を地面に置くと、輝き始め――光が消えると、そこには結晶の軽装の鎧を着た、キラキラと輝くセミロングの白銀髪で、クリクリとした黄色い瞳の可愛い女の子だ。

 ミツキさんより少し小さいな。


「わ~い、やっと【人化】できた~!」


 喜びながら飛んでいる。

 そんなに嬉しいのか。


「なんだ、大物かと思ったらチビ助か」


「アタシは小人なの! チビじゃないもん!」


 フランカの発言で口を膨らました。

 最強の種族になりましたか……。

 小さいのも納得です……。

 

「小人かよ!? 全く……紛らわしいことするなよ……」


「紛らわしくないもん! それと――」


 結晶の魔剣はリフィリアの方に向かう――。


「リフィリア! みんなの記憶で伝言があるよ!」


 記憶? 魔結晶の中に精霊の記憶も閉じ込もっていたのか。


「えっ……それはいったい……」


 リフィリアは身体を震わせている……。

 嫌な伝言ではないればいいのだが……。


「私たちの故郷を救ってくれてありがとう! 私たちはずっと傍にいるから心配しないで! いつも笑っているリフィリアが大好きだってさ!」


 それを聞いたリフィリアは涙を流して、結晶の魔剣に抱きついた。

 

「ありがとう……本当にありがとう……」


「苦しいよ! 離して!」

 

 これでリフィリアは気が楽になったと思う。

 まさか魔結晶に精霊の記憶が入っていたとは予想外だ。 

 いや、マナイーターは容赦なく吸い取っていたからあり得なくはないか。


 騎士団たちもそろそろ来る…………ダメだ……力が抜ける……。


「レイ、大丈夫か!?」


 ソウタが俺が倒れたのを見て大声で叫んだ……。

 あっ…………いつものパターンだ……ダメだ……眠い……。

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