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16話 お泊り①

 ミランドさんの屋敷に泊まることになり、ブレンダと稽古をすることになった。

 ブレンダとの稽古はいつ以来だろうか、半年以上前か? 基本はミランドさん、エレセさん、執事長、護衛の人と稽古しているが、果たしてどのくらい強くなったか楽しみだ。先に精霊と一緒に庭で待つ。


「お兄ちゃん、お待たせ!」


 ブレンダは動きやすい服装で、手には稽古用の木製の剣を持って来た。


「どのくらい強くなったか、本気でかかってこい!」


 俺は右手に【武器創造】で木製の剣(ウッドソード)を出した。今回は左手を使わない。右手と魔剣が相性が良いから、慣れさせなければならない。

 それと、メインは双剣だから練習にもなる。


「それじゃあ、いくよ!」


 ブレンダの目が変わり、構えた――。


「……ルイス流・閃撃――」


 いきなり技を使ってくるのか。さて、避けるか、受け流すか、いや、俺もやるか。


「閃撃――」


 ブレンダの剣を同じ技で打ち消す。流派によって技の出し方に違いはあるけど、やっていることは同じだ。流派特有の癖を見れば対処できる。

 それに怯むことなく、後ろに下がり、突っ込んでくる――。


「……ルイス流・翔斬――」


 流派によって通常の「翔斬」より速いな、だけど、ここは受け止める――うん、かなりの重みだ、これだとゴブリンを真っ二つにできるな。

 しかし……技ばっかりだと魔力と体力が消費するから後々持たないって。

 

 ――ブレンダは容赦なく剣撃を繰り出す――それを俺は避けたり、受け流したりする。


 ――30分経過した、結構体力があるな……。


 ――1時間経過、いや、ちょっと待って! どれだけ体力があるんだ! 

 それに【身体強化】を使っているはずだけど魔力も消費して、維持できないはず……この少女、将来化けるな……。

 

 けど、動きが鈍くなってきている、そろそろ頃合いかな。

 するとブレンダは距離をとり――。


「……ルイス流、奥義・剣輝乱華――」


 そこまで覚えていたのか、さすがにこの技は、受け流しにくいかな――。


「――――剣壁」


 ――乱れてくる無数の剣撃をすべて受け止める。すると、ブレンダはすべてを出し切ったかのように倒れ込む、満面の笑みで。


「やっぱり、お兄ちゃんは強いよ!」


「楽しかったよ、それにしてもここまで強くなるとは……」


「だってお兄ちゃんみたいに強くなりたいんだもん!」


 俺みたいにか!? そこはミランドさんではなく?


「それと汗かいているのだからここで寝転んでいたら、風邪ひくぞ」


「じゃあ、お兄ちゃん抱っこ!」


 しょうがないか、体力と魔力が尽きているし……ブレンダをお姫様抱っこし、庭に設置してあるイスに座らせる。


「えへへ……」


『いや~面白いねこの子、【身体強化】を無駄なくこんなに維持できるなんて、この若さで大したものだよ!』


 そうなのか。まあ、この強さなら祭りは余裕だな。

 それにしてもいつの間にか、メイドや執事、護衛が見ていて拍手が鳴り止まない……。

 少しやり過ぎたかな?


「良かったよ2人とも! さあ、お茶でも飲もうか」


 庭でハーブティーを飲みながらゆっくり時間が過ぎる。こういうのも悪くないな。

「あれ、アイシスは?どこ?」


「アイシス君はメイドたちに料理を教えているよ、しかも賢者が食べていた料理をね! いや~夕食が楽しみだ!」な!」


 まさかそこまでしていたのか! 俺の記憶でなんの料理を作るのだ? まあ、いいか。

 ん? 精霊がつまらなそうな顔をしている。長いこと稽古を見て飽きたのかな。


「すみません、ミランドさん、書庫室、お借りできないでしょうか?」


 その言葉に精霊は反応した。


「ああ、構わないが、急にどうしたのかね?」


「精霊が本を読むのが好きなので、もしよろしければと思いまして……」


「なんと……精霊が本を読むのか!? 聞いたことがない……これは世紀の大発見だ!」


「あまり大ごとにしないでください……」


「もちろんだとも! それなら案内するよ!」


「わたしもいく!」


 精霥は喜んで飛び回る。

 ――書庫室に案内してもらい、中に入ると、大量の本が棚にぎっしりと詰まっていて、その量は数百冊ほどある。それを見た精霊はテンションが上がり、本をものすごい速さで探し始める──気になった本を風を使い取り出す。相変わらず器用なことするなー。

 取り出した本は数十冊にも上る……いや、泊まりとはいえ1日で読めないだろう……。


「まさか本当に読むとは……」


「すみません、大切な本を重ねがけしてしまって……精霊には悪気はないのですが……」


「いや、構わないよ! こんな貴重な光景が見られて感動した!屋敷に来た時はいつでも見ていいよ!」


「いいのですか!? ありがとうございます! 良かったね」」


 精霊は喜んで頷く。


「いやはや、レイたちには驚かされるばかりだよ」


「ははは……」


 返す言葉がない……ただ偶然が重なったことにしてください……。

 精霊が読んでいるのは、歴史、薬学、料理、魔法など……結構多様ですね。

 ミランドさんのご厚意で俺も椅子に座り本を読む。ブレンダも隣に座り読もうとする。


 ――2時間後。


 メイドが来て、夕食の前にお風呂に入るように薦める。


「お兄ちゃんと一緒に入る!」


「2人とも入って来なさい、無論、私も入るが」


 いいのかよ! まあミランドさんがいるなら大丈夫か。


 ――浴場に入ると……広すぎだろ!? それに浴槽は30人ほど入れるスペースに、口を開けたドラゴンの像がお湯を流しています……領主さまさまですね。……。 

 さて、身体を洗おうとすると、ブレンダは羞恥心もなく、布も巻かずに堂々とこちらに来て――。


「お兄ちゃん、洗って!」


 ――はっ!? 完全にアウトだろ!


「すまないが、ブレンダはメイドたちに身体を洗わせているんだ……ブレンダ今日は1人で洗いなさい」


「イヤ! 今日はお兄ちゃんに洗ってもらいたいの!」


 うわぁ……ここだけワガママになっている……。ミランドさんは俺の方を見てなんとか説得してくれって顔で見てくる……わかりましたよ。


「ブレンダ……そろそろ1人で洗えるようにしないと、立派な女性になれないよ……」


「え……でも……」


「俺はブレンダを立派な女性と思っているから身体を洗わないよ」


「そうなの!?」


「ああ、髪の毛は洗ってあげるから身体は自分で洗いな、あと男の前では布は巻くんだよ」


「うん、わかった!」


 ブレンダはいったん浴室に戻り、待機しているメイドから布を受け取りに行く。

 なんとか回避できた……。


「すまないレイ、まさかブレンダを説得できるとは信じられん……」


「たまたま運が良かっただけですよ」


「そうか……。なぜ髪の毛は洗うのだ?」

 

「あの子、髪が傷んでいて、良く洗っていないみたいですよ」


「そんなことがわかるのか!? ……実はブレンダは髪を洗うのを嫌いでね……」


 やっぱりそうか、じゃあしっかり洗わないとな。そして体に布を巻いてブレンダが来た。


「お兄ちゃん、お願い!」


「あぁ、ちゃんと目をつぶるように」


「うん!」


 ブレンダの頭にお湯をかけ、バブルプラントの粉末をお湯に溶かして泡立て、髪を洗う。髪が傷んでいるせいか、髪が絡み合っている箇所がある。そこは優しくほぐすように洗う、あとは軽く頭皮マッサージをするように洗う。


「痛いとこはないか?」


「痛くないよ! 気持ちいいよ!」


 本当に髪を洗うのが嫌いなのか? それにしてはお利口さんなんだが。

 お湯をかけて泡を流す。


「おわった!」


「ごめんよ、まだ仕上げがあるんだ」


「しあげ?」


 無限収納から風呂用の純度が高いグリーンオイルを出した。そう、トリートメントの代用だ。


「これはいったい……」


「純度が高いグリーンオイルですよ、これで傷んだ髪を綺麗にします」


「なんと!」


 ブレンダの髪に付いている余分な水分を手で優しく取り、グリーンオイルを付ける。

 頭皮に付かないようにするのがコツだ。髪にオイルが馴染んだら、お湯でしっかり洗い流す。

「これでおしまい」


「ありがとう! お兄ちゃん!」


「どういたしまして、身体は自分で洗うんだぞ」


「うん!」


 俺が言う通りに自分で身体を洗っている。さて、俺も身体を洗うか。

 途中で不機嫌そうな顔をして、精霊が来た。本に夢中だったからいいかなと思ったが、彼女はダメみたいだ。

 身体を洗い、浴槽に入る――はあ~落ち着くな……。

 えっ!? なぜかミランドさんが泣いている。


「まさか……あのブレンダが頭を嫌がらずに洗うなんて……いったいどんな魔法を使ったのか……」


「いえ、何もしてませんから!」


「ありがとう……本当に……ありがとう」


「お礼を言うほどではないですから!」


ただ髪を洗っただけなのに、なんて大袈裟な……。


『君、お母さんみたいだね!』


 エフィナにそう言われるが、否定はしない。まあ、お節介だと言われる方が正しいけど。


 ――お湯にゆっくり浸ることもでき、浴場から出て、身体を布で拭き、置いてあるバスローブを着る。

 そのあと、俺が着たことを確認したのか、待機していたメイドが来て、ブレンダの世話をする。精霊に、ブレンダの髪を乾かしてほしいとお願いすると頷き、髪に風を当ててくれた。

 乾かし終えると、ブレンダの髪はサラサラで綺麗になっていた。

 メイドはブレンダの髪を見て驚きを隠せない。


「おっ……お嬢様! その髪は!」


「お兄ちゃんに洗ってもらった!」


「なんと……ぼっちゃまに!?」


 メイドはこちらを見て泣いている……。


「うぅ……ありがとうございます! ぼっちゃま! お嬢様が髪を洗うなんてめったにないのですよ……」」


 メイドにお礼を言われた! そこまで酷かったのか!?


「別に大したことはしてないって……」


「いいえ! とんでもございません! それに綺麗な髪になっていますけど、どうしてですか!」


「それは――」


 純度が高いグリーンオイルを使っていること、やり方、使用の頻度などを教えたら、メイドは大興奮だった。


「ありがとうございます! 早速試したいと思います!」


 やっぱり、トリートメントの概念がなかったか。まあ、基本的にバブルプラントで毎日洗っていれば大丈夫とは思うが。

 これは屋敷内に広まるな……。

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