160話 祝ってくれます
日にちが経ち――。
『起きろ、寝坊助さん! 朝だぞ~』
エフィナの声で目を覚ますと――。
アイシス、フランカ、リフィリアが立って待っていた。
『誕生日おめでとう~』
「お誕生日おめでとうございます」
「誕生日おめでとう!」
「お誕生日おめでとう」
みんなでお祝いの言葉をいただきました。
今日は俺の誕生日だ、朝早くからありがとうございます……。
「ありがとう……そんなに気を遣ってなくても……」
「いいえ、ご主人様の大事な日ですから当たり前です」
「ダンナのめでたい日にアタシらが気合いをいれないとおかしいだろう!」
「そうだよ、いっぱいマスターのお祝いをするよ」
気合いが違いますね……嬉しいけど。
「私たちからのプレゼントです。どうぞ受け取ってください」
アイシスが無限収納から深緑色のコートを出す。
前よりも凝っているような気がするが……。
「ありがとう……こんないいの受け取っていいのか……」
「はい、みんなの意見をまとめて作った高品質な防具であります」
「アタイは鎧にしてプレゼントしたかったが、アイシスとリフィリアがコートがいいって言うからデザインして作ったぜ! ミスリルと魔石を染み込ませたから高性能な出来になっているとは思うが」
「私の予想通りの仕上がりだから嬉しいよ、さあ、早く着て」
ミスリルは察していたが魔石も使ったのか……とんでもない防具を作りましたね……。
着てみると――今着ているコートよりも魔力循環が良く、ミスリルを染み込ませたから重いと思ったが前と同じ軽さだ。
『いや~似合っているね~ボクはみんなの意見を聞くのに大変だったよ~意見がバラバラで納得するのに1週間以上かかったよ~』
意見だけでそんなに経ったのかよ!?
みんな本気ですね……。
「大事に使うよ……」
『さあ、早く朝ご飯食べてティーナたちに会いに行こう!』
誕生日には教会でティーナさんにお礼の挨拶しに行くが、エフィナは凄い楽しみだ。
誕生日が近くなると鼻歌を歌って機嫌がいいからこの日を待っていたみたいだ。
『ただいま帰って来たのじゃ――――!』
シエルが大声で叫ぶ――ソウタたちと5日前出かけていて帰って来た。
庭に行くと――シエルはウズウズとしてソウタたちはホッとしていた。
『主、誕生日おめでとうなのじゃ――――!』
「間に合って良かった……レイ誕生日おめでとう……」
「「お誕生日おめでとうございます!」」
「ありがとう、間に合ったとか、何か苦戦していたのか?」
「ああ、誕生日祝いにコイツを獲ってきた――」
ソウタはアイテムボックスから見覚えある黒い大きな魚が7頭…………。
「マグロじゃないか!?」
「そうだよ、この世界ではCランクの魔物――スピードフィッシュって言われている。最後の最後に釣れて本当に良かった……」
「ありがとな、久々にマグロを食べられるのは嬉しい! けど、この大陸ではスピードフィッシュの魔物は聞いたことないぞ、魔大陸付近の海域で獲れるのか?」
「そうだな、魔大陸しか生息してはいないな、すぐ腐るから市場では売られていない――ただの厄介な魔物でしかないみたいだ。人魚族は好んで食べると聞いていたが」
腐りやすいのは前世と同じか……人魚族は確か魔大陸海域にしか住んでいないな。
ソウタは普通に言っているが俺からすればこの大陸では珍しい種族だ。
魔大陸を旅していたから普通かもしれない、ほかにもこの大陸ではいない、ハーピー族、ラミア族、鬼人族、魔大陸最強の種族――竜人族など色々と見たかもしれない。
まあ、俺は魔大陸は行く予定はないけど、機会があれば行ってみたい。
「そうか、ゆっくりと休んでくれ、あとで釣った場所を教えてくれないか?」
「わかったあとでな、お腹空いたから朝食をお願いするよ」
「かしこまりました、すぐ用意します。スピードフィッシュは私が腕によりをかけて作りますので楽しみにしてください」
「じゃあ、アイシス、管理よろしく」
「承知いたしました。寄生虫予防のため一度瞬間冷凍します」
アイシスがスピードフィッシュを氷魔法で瞬間冷凍させて、アイテムボックスにしまった。
すぐには解凍できないから、明日以降食べられるかな? 楽しみだ。
朝食はいつも通り量が多いのだが……早速スピードフィッシュを使ってマグロのカツが大量に出てきました……。
すぐに解凍させたのか……いや、冷凍したまま揚げたのか……。
「朝から揚げ物……」
「揚げ物ですが、食べやすいよう中はレアな状態になっております。どうぞ召し上がってください」
レアにしたからというと問題ではないと思うが……。
食べていみると――味が濃くて美味しいな……旨味が強いのか熟成されたマグロを食べている感じだ。
ソウタも喜んで食べている。気に入ったらみたいだ。
「朝食が食べ終わったら教会に行って女神様に会いに行くから少しの間、留守にするよ」
「会いに行く? 女神様に会いに行くのか? 俺も会いに行っていいか?」
ソウタは気になるみたいだ、すると精霊たちはその発言で食べるのを止めて固まる。
「そ、ソータ!? まさか胸が大きい女神が見たいの!?」
「あ、主……不潔……」
「ソウタ様!? また悪い癖が出ています!?」
胸が大きい? ああ……祀っている銅像と同じ姿だと思っているのか……胸だけサイズが違いますけど……。
「そ、そうじゃない!? ただ気になるだけだ!」
ソウタ……理由になってないぞ……。
「俺は構わないけど、会うとしてもソウタは大丈夫なのかな?」
『別に大丈夫じゃない? レイの親友だし会ってくれるよ!』
「じゃあ、大丈夫か」
「私は大丈夫じゃない!?」
「ボクも……」
「私もです!?」
精霊たちは顔を膨らませて納得していない様子だ。
胸の基準で会いたくないのか……。
『大丈夫だよ! 銅像と少し違うから安心してね! この目で見ればわかるよ!」
「そうなの? ……わかった……先生信じる……」
「せ、先生を信じます……」
「先生が言うのでしたら行きます」
なぜだろう……精霊たちもエフィナのことは聞くよな……。
前から思うけど、説得力はそんなにないけど、不思議だ……。
朝食を食べ終えて庭に出てシエルに教会に行くと言うと――。
『うぅ……妾も女神様とやらに会いたいのじゃあ……』
涙を流して訴えかけています……。
そんなに行きたいのか……。
『ごめんね、教会の入り口が狭くてシエルは入らないから我慢してね……』
いや、エフィナさん……ワイバーンが教会に入ったら礼拝している人が驚きますよ……。
「残念だが、留守番よろしく……」
『わかったのじゃ……』
シエルは泣きながら手を振り、俺たちを見送ってくれた。




