158話 本当に救えない
ド変態は歯が欠けてもまだ黙ることはなかった。
「わ、わはひになひをするのてすか、レひ……はぁみのわはひにほんなほとする――」
(私に何をするのですか、レイ……神である私にこんなことをする――)
「まだ言うのか! お前のせいでソウタは死にかけたのだぞ!」
「ひりまへん……へんのほふぁがふぁるい――――ブヘッ!?」
(知りません……洗脳者が悪い――――ブヘッ!?)
怒りが収まらずもう一度ド変態の顔面を殴る。
「何が洗脳だ! くだらない妄想はやめろ! 精霊――3人を見て何も思わないのか! ソウタのために泣いているのにこれが洗脳と言えるのか! お前がやっていることは精霊にとって虐待だぞ! お前に契約する価値も資格もない! いい加減諦めろ……」
ド変態に言いたいことをぶつけた……これで黙らなかったら本当の屑だ……。
「わはひは……いほひのせひえいに……へんほうふぁにせひさひをくばすたはぁけ……」
(私は……愛しの精霊に洗脳者に制裁を下しただけ……)
「まだ言うのか! その口黙るまで――」
「もうこのくらいにしろ……あとは俺たちに任せろ……やっと来たか……」
ザインさんが俺の腕を掴み止めてくれた……。
我に返って、怒りのあまり後ろの大勢の魔力に気づかなかった……。
入り口前には鎧を着た――騎士たちに、それに囲まれるかのように守られている、短髪で髭を生やしている20代後半くらいの若さの筋肉質で正装した金髪男エルフに、ドレスを着たニコニコと笑顔でいる20代前半くらいの若さの金髪女エルフだ。
「ふぁふぁぬえ!? まはぁぬえ!?」
(パパ上!? ママ上!?)
ド変態は希望に満ちた顔で叫んだ、まさかザインさんはド変態の親を呼んだのか……。
「久しぶりですね、親父さん、おふくろさん……早く来てください……」
「久しぶりだね、ザイン……いろいろと忙しかったから遅れてすまない……」
「久しぶり~ザインちゃん、あら~スールちゃんは酷い怪我して大変だね~」
「スールをお願いします……」
「もちろんだとも……」
「ふぁふぁぬえ!? ふぃんはみみちふぁでてみます! ふぁしゅへてくふぁしゃい!」
(パパ上!? みんなにいじめられています! 助けてください!)
まだそんなことを言っている……。
侯爵は笑顔でド変態の近くに行くと――。
「このバカ息子が――――!」
「――――ブシュゥゥゥン!? ゴブエッ!」
侯爵はド変態の顔面を魔力を込めて殴り、歯が5本欠けた。
非常に怒っている。
「ふぁふぁぬえ、はひおしゅるのへす……」
(パパ上、何をするのです……)
「ザインから聞いたぞ……精霊のためにこの街を反乱を起こしたとな! 恥知らずが! 人様に迷惑をかけるな! お前に代わって責任を取りに来た……言い訳は後で聞いてやる……お前たち、バカ息子を見張ってくれ……」
「「はっ!」」
「親父さん、空き部屋を案内するからそこで見張ってくれ……」
「すまない……」
騎士たちがド変態を担ごうとすると大暴れしていた……。
「まっふぁふえ! たしゅへてくなしゃい!」
(ママ上! 助けてください!)
今度は母親にすがるのか……諦めが悪い……。
「スールちゃん……いい加減認めないと――」
婦人は魔力を解除すると――笑顔で【威圧】を発動した。
リンナさんよりも強力だ……。
【威圧】に耐性がない人はゾクッとしているが、騎士たちは全然微動だにしない、鍛えられているな。
「――――ひぃぃぃぃ!?」
ド変態は暴れるのを止めて震えだす。
「うん、おとなしくなって偉いわ~帰ったらたっぷりとお仕置きするわよ~」
この婦人……絶対に怒らせたら怖いな……地獄が待っている……。
ド変態と今だに気絶しているハヌヤは騎士たちに2階の空き部屋へと運ばれた。
これで終わったと思いたい……。
俺の方に侯爵と婦人が来る。
「君がバカ息子がいつも言っているレイだね?」
「はい、そうですが……」
「バカ息子を止めてくれてありがとう……申し遅れた、吾輩はスール――バカ息子の親であるシュニット・ククレットである。そして妻の――」
「イザベラ・ククレットよ~よろしくね~レイちゃん」
侯爵と婦人は深くお辞儀した。
やっぱりド変態は俺のことは言っていたのか……。
「丁寧にどうも……そんな大したことはしていません……お見苦しいところ見られてしまって恥ずかしい……」
「とんでもない、バカ息子は欲しいものは絶対に手に入れるまでしつこくまとわりつくから、このくらいしないとダメだった……いや、すでに遅かった……昔から精霊と契約するとは言っていたからどんな手段を選んでも手に入れたかったのだろう……まさか戦まで仕掛けるとは実に恥ずかしい……」
だからド変態は精霊に執着があったのか……おかげで大迷惑でした……。
「そうですか……もう二度と起きないように強く言ってください……」
「もちろん……これからザインたちと処罰を考えるから安心してくれたまえ、それと精霊と一緒にいるのがソウタだね……」
「はい、そうですけど……」
「謝罪は後ほどするよ」
「親父さん、そろそろ……」
「ああ、わかったよ、その前に――」
侯爵と婦人は今度はリンナさんのところに向かい――深くお辞儀する。
リンナさんはため息をついた。
「久しぶりです、リンナ様。ご家族が心配していますのでたまには王都に――」
「いやよ! 帰る気なんてないわ!」
「親父さん……リンナは身分を控えているので……ここではやめてください……」
「ああ、すまなかった……わかりました……ではこれで……」
「フンッ!」
リンナさんは機嫌が悪くなっていた。
やっぱり家出みたいのしていたのか……。
絶対に聞かない方がいいな。
ザインさんたちに任せて、ソウタが起きるのを待つ。
ソウタが目覚めると精霊たちは大号泣でしがみついたままだ。
魔力暴走して命が危なかったから無理もない、このままにしておこう。
その後、食堂で勝利祝いとして宴が始まった、当然ツケは大迷惑をかけたド変態から出す。
とはいっても侯爵が出すとは思うけど……。
俺は約束通りナポリタンをソウタに提供するが……みんな目を輝かせて俺を見ています……。
アイシスも手伝ってみんなに提供しました……。
あとはド変態の処罰が決まるまでゆっくりと待つ。




