157話 ド変態の抵抗
セーレさんの指示で気絶しているエルフを運び、まとめることになった。
数千の数は大変だがしょうがない、怪我をしてすぐ逃げることはないが、後々面倒なことになる。
「私に任せて」
リフィリアはエルフたちを風に浮かせてセーレさんの指示された場所に置いて――いや、積み上げていく……。
なぜか楽しそうに積み上げているの気のせいだろうか……。
「それじゃあ、いくよ~! えいっ!」
「――――ブエッ!」
「――――ブハッ!」
「――――ウブッ!」
小人のみなさんは運びではなく投げ飛ばしています……。
「誰が多く運ぶか競争だ!」
「「「お~!」」」
楽しんでいますね……こちらとして助かるが……。
リフィリアと小人たちのおかげで日が暮れる前に終わった。
「アイシスちゃん頼んだわよ!」
「かしこまりました。――――アイスプリズン」
アイシスはエルフたちを氷の檻で閉じ込めた。
「ありがとね! 見張り頼んだわよ!」
あとはみんなに任せて、動けないように全身を縄で巻いたド変態とハヌヤを引きずって街に戻ろうとするが――。
「すぐに俺たちを解放しろ!」
氷の檻の中で、怪我が軽く済んだエルフが起き上がり、叫んでいる。
終わったのに懲りないな……。
「氷なんて素手で折ってや――――ギャアァァァァ!?」
叫んでいたエルフは氷の鉄筋に触れると――いとも簡単に全身氷漬けになった。
ナメすぎだな……アイシスが創った氷の檻は防衛の為に相手が檻に触れると凍る仕様となる。
絶対に溶けも破壊もできないから無駄だ。
ド変態の処分が下るまでおとしくしていればいいものの……。
気を取り直して街に帰宅する――。
城門前で防衛をしていた商都の冒険者が俺たちに気づくと、歓声を上げて出迎えてくれた。
ギルドに向かい――ザインさんに報告をする。
中に入るとザインさんたちがホールの方に待っていた。
「全く……バカなことをしてくれる……」
ザインさんはド変態の姿を見ると呆れている。
すると、ド変態が目を覚まして暴れようとする。
「この縄をほどきなさい! 私は精霊を解放を――ひぃぃぃぃ!?」
リンナさんはミスリルの剣をド変態の首を向け――【威圧】を出している。
あれだけボコボコにされても抵抗するのか……。
「バカ痴漢……お前の立場をわかって言っているのかしら……」
「な、なななななな、何を言っているのです、わ、私はエルフの神様ですよ!? ぶ、無礼者!」
「敗戦して頭がおかしくなったのかしら……その腕切るわよ……」
「――――ひぃぃぃぃ!?」
リンナさんは剣を両手に持って上からの振り上げようとする。
「リンナ、それまでにしておけ……処分を下すから我慢をしてくれ……」
「わかったわよ……」
リンナさんは剣を腕ギリギリのところで振るうのを止めて、【威圧】の発動も止めた。
「い、いい判断ですね! か、神である私に刃向かうなどあり得ない!」
さすがの俺もしつこいあまりド変態の発言でイラッとしていまう……。
もうすぐ処分が下るから我慢だ……。
「しかし……遅いな……昨日来るはずの予定だが、今日も来ないか……」
ザインさんはため息をついている……処分を下す偉い人でも呼んだのかな?
「みんな今日はありがとな、コイツの面倒は俺たちが見るからにゆっくり休んでくれ」
「わかりました、では屋敷に帰ります」
俺たちは帰ろうとすると――。
「待て、洗脳者! お前を首を必ず取ってやる! たとえこの身が朽ち果てようとも必ず精霊を解放して見せる――」
まだ諦めていないのか……。
どれだけ異常なんだ……。
「ソウタ無視して行くぞ」
「ああ、もちろん」
「――愛しの精霊よ! 待っていてくれよ! 絶対に誓約――結婚をして子どもを産みましょう!」
精霊はド変態の卑猥な発言で青ざめて身体を震えている。
ソウタは足を止めて魔力を解除して怒っている……。
「その言葉……撤回しろ……3人が嫌がっているぞ……」
「洗脳者の言葉など耳など聞かない! お前のせいで計画が台無しになったぞ!」
「…………」
無言でゆっくりと近づく、拳に魔力が思いっきり込めている。
前よりも量が多い……あれを受けたら致命傷だけでは済まないぞ……。
「精霊は私の者だ! 今から解放してくれるのであれば命だけは助けてやる!」
「…………」
さらに魔力が増している……少々マズいことになったな……。
ド変態もバカなのか……余計挑発してどうする……。
「ソウタ、殴ってもいいが加減しろよ……」
「…………」
ザインさんが言っても無言のままだ。
「どうした洗脳者よ、精霊を解放する気になりましたか? だったら今すぐ私に謝罪と解放しろ!? もちろんその後は精霊と契約――結婚して子作りに励みむ、さあ、早く――――」
その瞬間ソウタから全身に魔力が解除された。
ソウタの周囲には風が発生して今に吹き飛ばされそうだ……。
「おい、ソウタ!? 今すぐやめるんだ!? お前自身危ないぞ!?」
ザインさんが慌てて言うが、声が届いていない。
『魔力暴走しかけている……早く止めないと危ないよ!』
暴走って……魔力消費も激しいな……ソウタの命も危ないことか……。
『止める方法はあるか?』
『多分だけど、ド変態を殴らないと気が済まないみたいだね……』
『今のソウタの食らったら確実に死ぬぞ!?』
『ボクいいけど……魔力が異常に消費しているから殴る前に間に合わないかもしれない……』
『わかった……なんとしてでも止める……』
ほかに方法を止めるとしたら――。
「ソータ!? 目を覚まして魔力が危ないよ!」
「主……目を覚まして……」
「ソウタ様、しっかりしてください!」
――それしかないか。
「3人とも、ソウタの近くに言って声をかけてくれ」
「近くに行きたいけど風が……」
「と、飛ばされる……」
「私でも無理があります……」
「俺がソウタまで運ぶから大丈夫、できるか?」
「「「わかりました!」」」
先ほど不安だった精霊たちはしっかりと返事をしてくれた。
「じゃあ、しっかり掴まっていろよ!」
「「「はい!」」」
「私も手伝うよ、何すればいい?」
「リフィリアはソウタが正気に戻ったら「マナチャージ」で魔力を回復するように準備をしてくれ」
「わかったわ」
俺は精霊たちを抱いて風の遮りながらゆっくりと進む――。
リフィリアと魔剣の加護がなければすぐに飛ばされてたな……。
ソウタに近づき――精霊たちはソウタにしがみつくて――。
「ソータ、お願い、目を覚まして! 私、ド変態のことなんて気にしてないから大丈夫よ!」
「主……ボクは平気だから目を覚まして……一緒に帰ろう……」
「ソウタ様、私はここにいますから、大丈夫です! ずっと一緒にいますから正気に戻ってください!」
精霊たちの声で少しだが、魔力の減りが遅くなった――よし、このまま――。
「愛しの精霊よ! なぜ洗脳者を止める! ああ……可哀想に……そのまま魔力が尽きれば精霊を解放――」
まだそんなこと言うのか……少しは黙っていろ……。
「――ウインドバレット!」
「――――ブヘェ!?」
魔法で風の弾丸をド変態の腹に当て――おとなしくさせた。
精霊たちは泣きながら必死に説得をしている。
俺も試みる――。
「ソウタ、もう誰も責める奴はいないから目を覚ませ! これから精霊と楽しい生活が待っているのだぞ!」
もう一度言う――。
「3人ともド変態のこと気にしていないから帰るぞ! 帰ったらお前の好きなナポリタン作るから楽しみしてろよ!」
再び言う――。
「お前が死んだら誰がこの3人の面倒を見るんだ! 精霊を悲しませることしたら許さないぞ!」
そう言うと徐々に魔力が抑えられ――。
「ソータ!」
「主……」
「ソウタ様!」
最後に精霊たちが声をかけると暴走が止まった。
あとは――。
「リフィリア!」
「任せて――――マナチャージ!」
リフィリアすぐに駆け寄り――ソウタの背中に手を当て、魔力を回復させる。
間に合ったか……。
「お、俺は……いったい……みんなに迷惑をかけたのか……?」
ソウタは正気に戻り、少しぐったりとしているが無事でよかった。
「誰も迷惑は掛けていないぞ、少し横になってくれ……」
「そうか……ならいいのだが……」
そう言ってソウタは眠りについた。
暴走を止めてみんなはホッとした――ただ例外で1人いる……。
「せっかく洗脳者から精霊が解放されそうだったのに……なんて惜しいこ――――ゴグブエッ!?」
ド変態の屑発言で俺は我慢できず、顔面を思いっきり殴った。
もう……いい加減しろ……。




