153話 準備万全
――翌日。
視線を感じ、目を開けると――。
小人たちがジッと見ているのですが……。
俺が起きると笑顔でいっぱいで――。
「「「おはようございます!」」」
元気がいいですね……。
『やっと起きたね、寝坊助さん! 小人のみんなは起きるまで30分ほどいたよ!』
なぜ起こさずにいたんだ……食堂に待っていればいいのに……。
「起きたレイさんを食堂まで移動させるぞ~」
「「「お~!」」」
昨日と同じように小人たちが俺を抱えて食堂に移動する……。
まさか運ぶために起きるの待っていたのか……。
「レイさん、連れてきました!」
「ありがとうございます。朝食の用意ができましたので、どうぞ召し上がってください」
アイシスが作ってくれたのは山盛りにしたご飯に納豆、ボアの角煮、厚焼き卵、人参とゴボウのきんぴら、野菜の味噌汁だ。
「「「わ~い! ――――いただきます!」」」
小人たちは箸を進めて笑顔で食べ続ける。
横目で見ていたソウタは箸を止めて驚いている。
「朝からすごいな……」
朝から元気いっぱい食べているのに追いついていけないようだ。
まあ、俺もそうだが。
「フフフ……小人さん、ゆっくり食べようね」
『リフィリアの母性が爆発している……』
エフィナさん、もうわかっているので口に出さなくていいですよ……。
「「「ごちそうさまでした!」」」
「食後の運動だ~!」
「「「お~!」」」」
小人たちは屋敷を出て庭で走り回っています。
ミツキさんは小人のみんながいると性格が違うな、みんなと同じような性格になっている。
本来の性格かな?
――お昼になり、みんなでギルドに向かいに行く。
小人5人は珍しいのか周りの建物と自分より大きな人が歩いているのをキョロキョロと見渡しながら歩く。
「みんな離れちゃダメだよ!」
「「「わかった!」」」
ミツキさんはすっかりお兄さんですな。
ギルドの中に入ると――ギルドのみんなは小人に気づくと拳を上げてガッツポーズしている。
勝ち確定だと思ったらしい。
会議室に入ると一昨日のメンバーがすでに集まっていた。
ミランドさんは小人を見ると――。
「フハハハハハ! 本当に呼んで来るとは素晴らしいよ、ミツキ君! この街は安泰だ! 我々の勝利は確定した!」
高笑いしながらガッツポーズしています……小人という最強の種族が8人いるとそうなりますよね……。
小人5人はみんなに挨拶をしてド変態を倒す会議が始まった。
決まったのは、ソウタをド変態と戦闘ができるように前線になり、俺たち――ギルドのみんなはソウタを守ってド変態のところまで到達させること、街の防衛は商都の冒険者に任せることに決まった。
それと、ザインさんは戦で条件を出した――絶対に殺さないで拘束させることだ。
ド変態を崇拝しているとはいえ、くだらない騒動に巻き込まれたから罪はないからだ。
あとはみんな怪我をしないで無事に終わりにすること――相手は殺すつもりで襲いかかってくるから十分に気をつけるようにと。
「――決まりだな、後日改めてみんなに言うからこれで終わりだ。解散――」
あとは余裕を持って準備をしないとな。
――――◇―◇―◇――――
――5日後。
戦の準備をしているが今のところド変態は何も仕掛けて来ない。
偵察としてセーレさんはシエルに乗って、エルフの谷の近場に様子を見に行ったが、特に動きはないようだ。
周囲を警戒していたが怪しいエルフもいなくて問題はない。
ド変態としては珍しい。あっちも何かしら準備をしている様子だ。
ミランドさんは広場に住民を集めてド変態が襲撃することを言う――。
「――みんな心配はしないでくれ、我々には頼もしい冒険者と賢者の弟子、稀種であるブルーワイバーンがいる! 負けるわけがない! そして強力な助っ人として最強の種族小人族に商都の冒険者が来てくれるから安心してくれたまえ! 我々に敗北という言葉はない!」
住民はそれを聞いて不安も何もなく安心していつも通りの日々を過ごしている。
ミランドさんを信頼をしていますね。
小人のみなさんは――。
「――――旋脚!」
庭で俺が岩の壁を創って蹴り技の練習をしている。
ミツキさんがエルフは腹が弱点と言って中心的に練習をしています……。
まあ、それで気絶させるならいいか。
しかし、その中で魔力が多いカエデは――。
「――――旋脚!」
魔力を思いっきり込めたのに岩の壁が軽々と砕け散った。
桁違いだ……相手は生きて帰れない気がしてきた……。
なぜかカエデは俺に近づいて目を輝かせている……。
『ほら、撫でてやんなよ!』
エフィナさんの言う通り撫でると――。
「うわ~い! 撫でられた!」
喜んで庭を駆け回っていました……。
褒めてもらいたかったみたいです……。
それを見た小人のみなさんは張り切って岩の壁を蹴り続け――砕けたら俺に近づいて撫でてほしいと要求をしてきました……。
しかもミツキさんまで……みんな撫でると大変喜んでいました。
ミツキさんを撫でると、後ろで見ているウィロウさんとグラシアさんは膝に地面について落ち込んでいる……そんなに撫でたいのか……。
そしてフランカは決闘用として作っていたソウタ特注のミスリルの両手剣、ミスリルの軽装の鎧が完成した。
ソウタは装備すると……震えています。
「不備はないか?」
「不備も何も……しっくりくるぞ……いいのかこんな豪華な一式をタダでもらっても……」
「あのド変態野郎を倒せばアタイはそれで十分だ! 絶対に勝てよ!」
「わかった……絶対に勝つ……」
「ほら、もっとシャキッとしろよ!」
「うっ……」
フランカはソウタの背中を思いっきり叩いた、鎧を着ていなければ吹っ飛んで背骨折れていただろうな……。
考慮して叩いたとは思うけど。
小人のみなさんはソウタを見て目を輝いていますが……。
「「「ほしい!」」」
やっぱりそうなるか……。
「あ、あの、お金はいくらでも出しますので、みんなに鎧を作ってもらえないでしょうか!?」
「えっ……まあ、いいぜ、ド変態野郎の件が終わってからだけどな」
「「「やった~!」」」
小人たちは大喜びしてフランカを胴上げをする。
「ちょっと待てって!? 完成してからにしろ!? まあ、悪くわないが」
本人はまんざらでもない顔をしていますね……。
翌日に、商都の冒険者が数十人派遣として来た。
挨拶の為、ギルドに向かう。
その中に見覚えのある鎧を着たドワーフ――ゼネロットがいる。
「おう、兄ちゃんじゃないか、久しぶりだな! 元気にしていたか!」
「ああ、久しぶり、商都からわざわざ来てくれてありがとう」
「何、災害級のお礼だと思ってくれ! みんなそのためにカルムに来たからお安い御用さ!」
やっぱり恩があるってわけか。まあ、恩を売るようなことはしていないけど……。
「じゃあ、これで貸し借りなしだな、よろしく頼むよ」
「おう、任してくれ! しかし……この街も大変だな……あの精霊好き変態野郎が反乱を起こすなんてな……しかも精霊使いの精霊を奪うとかバカにもほどがある……。兄ちゃんたちもよくあの訳わからない奴とよく一緒にいれたもんだ……」
同情をしてくれています……一時期、商都でド変態の面倒を見ていてくれたけど、そんなに大変だったのか……ご迷惑をおかけしたのは申し訳ないと思う……。
その後、夕食はギルド内の食堂で商都の冒険者と親睦会としてみんなで食事した。
ギルド仲間だからお互いすんなりと仲良くなった。
もう準備が整った――あとはド変態の軍勢を待つだけだ。




