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149話 異常です


 【威圧】でガクブル状態だったのに、もう平気なのかよ……。

 いや、エルフの谷だから治りも早いか……迂闊だった……。


「さあ、私の精霊たちを返しなさい!」


 いつから精霊がド変態のものになったんだ……意味がわからない……。

 精霊たちはリフィリアの後ろに隠れる。

 

「スールさん、貴方の負けです。諦めてください、これ以上愚か――」


「なんのことでしょうか? 洗脳者から精霊を救っただけですよ。私は何も悪くありません。サーリトがあまりの動かないから私は手段を選びました――洗脳者から精霊の虐待を守るため、行動に移しました」


 サーリトさんの話を聞かないで開き直って、ベラベラと自分のことしか言わない……もう完全な異常者だな……。

 それを聞いた周りのエルフたちは泣いている……。


「精霊を守るため……行動を……なんと勇敢な……」

「まさしく英雄だ……スール様、一生ついていきます……」

「スール様、バンザイ!」


「ありがとうございます! 勇敢なる同胞たちよ! どちらが正しいと思いますか?」


「「「スール様です!」」」


 ド変態は満足げに周りに応えるかのように拳を上げる……。

 なんだこの茶番は……完全に俺たちが悪者にして正当化させようとしている……。

 

「スールさん、いい加減にしてください! これ以上街の人を巻き込むのはやめてください! ただの身勝手ではないですか! 管理者の私も黙ってはいません!」


「はぁ……フーツは何もしてないのによく言いますよね……貴方は男爵失格です。これからは私がこのエルフの谷――楽園を管理します!」


 …………はい!?

 また変なことを言い出したぞ!? 

 それに賛同するかのように周りは喜び、フーツを罵倒する。


「スール様が街を管理する……最高です!」

「お前は用済みだ、帰れ!」

「何もしない男爵なんていらない!」


「なんでこんなことに……」


 フーツは青ざめて膝をついた……ここまでド変態に崇拝するとか……周りも異常だな……。

 反乱してもメリットがないぞ……。

 男爵に手を出したらお偉いさんたちも黙ってはいない……。


「決まれば、早めにパパ上とママ上に報告だ! これで私の土地となる!」


 今パパ上とママ上と言ったか!?

 それに自分の土地?


「このバカ痴漢が……権力を振りかざすのじゃないわよ!」


 リンナさんが権力とか言ったけど、どういうことだ?


「自分が偉いわけではないのにどうして……」


「隠すつもりはなかったが……スールの親父さんは侯爵だ……」


「はい!? 初耳ですけど!? えっ……じゃあ、侯爵の息子で……家名は……」


「家名はククレットだ……権力を使うなと約束しただろう……バカにもほどがある……恥だな……」


『え~アイツが侯爵の息子~あんなマザコンとファザコンみたいなド変態に育てた親はロクでもないな~』


 エフィナさん、文句があるようですが、俺も突然ブッ混んできたから整理がつかない……。

 なぜ、侯爵の息子がカルムに住んでいるのだ……それにリンナさんはアニキ呼ばわりしていたけど、同じ地位なのか……。

 

「じゃあ、リンナさんは……」


「レイ君、察してほしいな……」


 リンナさんは深刻な顔して言う、大当たりでした……。

 俺が触れてはいけない……というか知らないし人も多数だが……。


「とういうことだ、このことは内緒にしてくれ、これからもリンナと普通に接してくれよ」


 そう言ってリリノアさん、サーリトさん、フーツ以外は頷いた。

 今思うとわかる――リンナさんは侯爵以上のご令嬢だからミランドさんがブレンダ第2の妻に受け入れてくれるのか……そしてアイシスが現れた時の焦りはこのことだったのか……納得しました……。

 リンナさんは王都を嫌っているのは家出した感じかな……だから冒険者になって自立したのか……。

 これはあくまで自分の予想にすぎない、考えるのはやめよう……今はド変態の野望を阻止だ。


「おっとみなさん、これ以上近づかないでください。どうなるかわかりますよね?」


 四方八方にはド変態信者が構えている……。

 俺たちで対象できるが、下手なマネはできない……屋敷の中にメイドと執事がいて危害も加わる……。


「大陸の恥が……絶対後悔するぞ……」


「ザインの言っていることはわかりません。だけど私は神に等しい存在です。私の優しさに免じて1時間猶予を与えます――時間内に精霊たちを返してくれたら危害を加えずにお帰りしてもいいですよ。もし守れない場合は私の勇敢なる同胞と一緒に魔法が炸裂しますので覚悟してください」


『こいつが神だったら世界がとっくに終わっている……地獄行き確定……』


 エフィナさんもご立腹です。

 いや、1時間だけとか、かなりケチだな……。


「いったん屋敷に戻るぞ……」


「いい判断ですね! さあ、よく考えて絶望しなさい!」


 ド変態の声を無視してザインさんの指示で屋敷に入った。

 みんな絶望より呆れています……。


「面倒事になったがどうするか……帰るのは当然だが……フーツもここを出たほうがいいよな?」


「是非お願いしたい……。あとメイドと執事も一緒に連れて行きたい……危険すぎる……」


「だよな……あの数を護衛して行くのは厳しいな……」


「バカ痴漢を切り刻む……」


「火炙りにする……」


 リンナさんとリリノアさんは屋敷を出ようとするがザインさんが前に出て止める。


「待て!? 根本的な解決にはならないだろう!」


「ギルド長、どいて! バカ痴漢を懲らしめないと意味がないわ!」


「そうよザインちゃん! もうアイツは法を犯してるのと同じだからもう何してもいいじゃない!」


 ド変態を討伐しても信者の怒りを食らって、何しだすかわからないな……屋敷内なら俺とリフィリアで「エアリアル・リフレクト」で交代しながら守れなくもないが、相手は無限の魔力を持っている……ジリ貧だ。


「何よ……もうド変態の傍なんて嫌よ……」

「うぅ……主のところに帰りたい……」

「本当に無事に帰れるでしょうか……」


「大丈夫よ……心配しないで……」


 リフィリアは精霊たちを抱いて慰める……そして俺の顔見て悲しい表情をする。

 …………わかった、やればいいのだろう……今日中にソウタに会わせる。

 背に腹は代えられない、()()を使う。


「リフィリア、「ゲート」を使うぞ、半数任してもいいか?」


「うん、いいよ!」


 笑顔で返してくれた。

 はじめからそのつもりだったか――それじゃあ、善は急げだ。


「フーツさん、ここにメイドと執事を全員集めてください」


「わかりました……いったい何をするのです……」


「これから転移魔法を使います。急いで呼んでください」


 それを言うと周りが動揺する……。

 やっぱりそうなるよな……。


「ちょっと待て!? いつからそんな魔法覚えたんだ!?」


「物心ついたころですよ……」


「まあ、レイのことだからおかしくはないか……魔力は大丈夫なのか?」


「リフィリアと一緒に使うのでなんとかなりますよ」


「あのとき、大精霊が使っていた魔法ね……納得はいくわ……」


 やっぱりリリノアさんは察していたか、長年生きてると考察が鋭い。


「この魔法は内緒でお願いします」


 みんな頷いてくれた。

 まあ、いつかはバレるとは思ったがいいか……。


『ゲート使うならボクも相談に乗るよ!』


 フーツがメイドと執事を呼んでいる間――俺とエフィナとリフィリアで地図を広げて何処に転移するか相談をする。

 できるだけカルムの近くに転移したいが、その分魔力が消費する――相談した結果、カルムか10㎞離れた場所の森で転移することに決めた。

 ここなら周囲に誰もいなくて大勢を護衛するのに問題ない距離だ。


 フーツが数十人のメイドと執事を集めて準備ができた。


「じゃあ、始めようか――」


「うん、任せて――」


 俺とリフィリアは空間魔法を使う――。


「「――――ゲート!」」


 みんなを転移し、一瞬にして――森の中に移動した。

 成功した……だけど……ギリギリだな……前よりは魔力が多くなったとはいえ、この人数と距離はキツイ……。

 無限収納からリフィリアが作ったマナポーションを飲んで少し落ち着いた。


 みんなは目の色を変えて驚く。こんな体験滅多にないもんな……。


「さすがレイ君とリフィリアちゃんだわ!」


「わ~い、移動した!」

「この魔法おもしろい!」

「本当に森に着いた~」


 リンナさん、ミツキさん、ヒナ、ユナは大興奮しています……。


「リフィリア……大丈夫か?」


「かなり消費したけど、3分の1はあるよ」


 リフィリアは魔法が得意だからまだ余裕があるか……さすがだな……。


「「「ありがとうございます! レイ様、リフィリア様!? この恩は一生忘れません!」」」


 精霊たちは俺とリフィリアの周りを喜んで飛び回る。

 とりあえず無事に帰らせることができるから良かった。


「高度な魔法……普通の人が使ったら危ないわよ……いや、レイと大精霊なら可能か……これを覚えればザインちゃんとすぐ会える……」


 リリノアさんは「ゲート」の魔法について考えて始めた……まさか自分も使いたいのか……。


「すごい魔法だな……2人ともお疲れさん、あとは俺たちに任せろ。レイは動けないみたいだからおぶるぞ」


「ありがとうございます……」


「サーリトとフーツは魔法が使えるから魔物の戦闘は手伝えよ」


「もちろんだよ」


「わかりました」


 ザインさんにおんぶしてもらい、魔物に警戒しながら街へと帰宅する。

 今頃ド変態は慌てているだろうな。

 一方スールは――。


スール「ムフフ……みんなの気配がなくなったが、どんな魔法やスキルを使っても私には通用しません! すぐ探して見せます!」


――1時間経過した。


スール「それではみなさん、お願いします!」


スール信者は屋敷に「アースランス」を放ち、窓を破壊して侵入した。

隈なく捜したが、誰もいないことが判明するとスールはパニックっていた。


スール「どこに行った!? 私の愛しの精霊たちはどこに行った!? これでは私の計画が台無しではないか!? 許さない…………勇敢なる同胞よ! 緊急事態です! これから会議をします!」


スール信者「「「はい、喜んで!」」」


またスールはよからぬことを企み始めた。

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