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147話 エルフの慢心

レイ視点に戻ります。


 走り続けること数時間、丘を越えて――平地で休憩をする。

 真っ正面に見える森を抜ければエルフの谷に着く。

 このまま順調に行けばお昼頃に着くのだが、森の中から尋常ではない数の魔力反応が……。

 完全に俺たちを入らせないようにしているな。


「わざとらしいわね……そんなに戦いたいのかしら……」


「腕が鳴るわ……楽しみね……」


 リリノアさんとリンナさんは気づいたのか不気味な笑みを浮かべる。

 この2人を怒らせたらおしまいですね……。


 休憩の間はリフィリアと念話を通じて情報交換をしていた。

 森の中に罠が仕掛けてあるのと、あの怪文書は完全にド変態の仕業のこと、深夜に全裸になって興奮して精霊たちを襲いかけたことを言った……。

 最後の方……頭がおかしいだろう……。

 

『うわぁ……虐待だ……』


 当然エフィナもドン引きしていました……。

 だけど精霊たちは無事で安心した。

 引き続きリフィリアは精霊たちを見守って、ほかに何かやるみたいだ。

 いったい何をするのだ?

 まあ、考えがあるなら止めはしないけど。

 

 情報も確認したことだし、みんなにリフィリアが言ったことを伝えると――怒ったり、呆れてたり、ため息などついていた。


「やっぱりあのバカが……どれだけ精霊といたいのだ……。サーリトに会ったらスールに厳罰化してもらう……さて、行くか――戦闘の準備はしろよ!」


 これでド変態の思惑も消えたな。

 休憩が終わり――森の中に入る。

 リンナさんとリリノアさんは魔力の量が多くなった。

 もうこの2人がいれば怖いものなんてないような気がする……。

 周りを確認すると、リフィリアが言う通り罠がらしき物が設置している。


「こんな姑息な罠で私たちが引っかかると思っているの――――アースサーチ!」


 リリノアさんは地面に手を当て――罠の位置を把握する。

 確認を終えるとため息をつく。


「ほとんど罠だらけじゃない……面倒ね……全部焼き払うかしら――」


「それはダメだ! 火の海にするなよ……近くに街があるのだぞ……」


「しょうがないわね……ザインちゃんの言う通りにするわよ……」


 ザインさんは慌ててリリノアさんが火魔法を使うのを止めた。

 ガチでやりつもりだったか……。


「しかし……罠が避けて通るだけでも日が暮れてしまう……待ち伏せしている奴もいるから厄介だな……」


「それなら俺に任せてもいいですか? 道を開ければいいのですよね?」


「レイがか? 火魔法以外ならいいぞ」


 手荒なマネをするが早く帰るためだ。みんなの前に出て風魔法を使う――。



「――――サイクロン!」


 

 上空から暴風を巻き起こし――木や草、罠を飲み込む。

 そのまま前進させ、道を作る――。


「「「ギャアァァ――――!?」」」


 待ち伏せしていたエルフも飲み込んだ――ちょうどいい、そのまま街の近くにお帰りさせよう。


「わ~い、いっぱい入っている~!」

「楽しそう~」

「私も竜巻の中に入りたい!」


 小人たちは飛び跳ねて喜んでいるのは気のせいだろうか……。

 暴風は街の近くで止め――ボトボト落ちていく。

 真っ直ぐにエルフの谷まで道が開いたことだし、短縮して進める。


「ゴリ押しだが助かるぜ! このまま一気に進むぞ!」


 ザインさんが先頭を進み――俺たちも続く。


「な、なぜこんな早く……て、敵襲だ! スール様の命令で街に絶対入れさせるな!」


 昨日ド変態の近くにいた鎧を着たエルフが大声で叫び――待ち伏せしていた奴が焦りながら出てきて、数百人が道を阻む。

 やっぱりド変態の命令か、そこまでして止めようとするのか。


「大地よ、我が身を守る壁となれ――――アースウォール!」


 地魔法で岩の壁を出して防ごうとするが、もう俺たちからしたら無意味だ。


「邪魔だ! ――――絶拳!」


 ザインさんは白金の拳(プラチナナックル)をつけた左手で岩の壁を砕きボロボロと崩れていく。


「きょ、強化されているのに……く、砕けた……」


 いくらエルフの谷で強化されてもSSランクのザインさんには余裕で破壊することができる。

 詰めが甘い。


「怯むな! 魔法で攻撃だ!」


「「「岩よ、貫く槍と化せ――――アースランス!」」」


「ここは俺たち任せろ! ガルク行くぞ!」


「おう!」


 アルロさんとガルクが前に出て無数に来る岩の槍を盾で防ぐ――エルフたちは全て防がれたの見て呆然としている。


「へっ、魔力で強化されてもこの程度とか残念だな!」


「シエルの尻尾の方が強いぜ!」


「な、なぜだ……エルフの谷では私たちは最強なのにいとも簡単に……」


 確かに魔力は多くなっているけど、こちらとしてはただ単に魔法を当ているだけに過ぎない。


「相手は数が少ない! 攻めろ!」


「「「――――オォォォォォ――――!」」」


 

 魔法を止めて剣を構えて向かってきた――俺は【武器創造】で切れない金の剣(ゴールドソード)を創り、右手に持ち構える。

 真っ先にミツキさん、ヒナ、ユナが走って行く――。


「子供でも容赦はしな――――ブヘェ!?」


 ミツキさんはエルフに近づいて腹の方に回し蹴りをし、吹っ飛んでいった。


「エルフは腹が弱点だよ!」


「「わかった!」」


 いや、ミツキさん……誰でも腹は弱いですよ……種族限定にしなくても……。

 ヒナとユナも続いて向かって来る相手を次々と回し蹴りをする――。


「――――グエッ!?」

「――――ガハッ!?」

「――――ゴホッ!?」


 あまりの痛さに腹を押さえて痙攣したり、気絶して倒れていく。

 絶対にトラウマになりそうだ……仲間がやられてるところを見て動揺している。

 

「こ、子どもなのに強いぞ!?」


「「「小人族だ!」」」


 3人は訂正をするようにハモる。

 小人族と聞くとエルフたちは真っ青になった。


「な、なんで小人族がいるのだ!? そんな話、スール様から聞いていない!」

 

 多分だが、ド変態はトラウマで小人の話なんてしたくないだろうな……。


「たかが、小人3人で何をしている! 好都合だ、ここでは私たちが最強っていうことを示せ!」


「「「わかりました!」」」


 鎧を着たエルフが怯えているエルフを激励すると、ミツキさんたちの方に集中的に向かう。

 ここ限定で最強っていうのも恥ずかしいと思うが……。


「何が最強だ、スールみたいに頭がおかしいな――――絶槍!」

「何を言っているのです。最強の種族はミツキ様たちですわ! ――――水よ、我が拳に宿り、敵を滅せよ――――アクアナックル!」


 ウィロウさんとグラシアさんは周りを退けながらミツキさんたちに駆け寄って行く。

 援護に行こうかと思ったが、あのメンバーなら数が多くても問題ないか。


 俺も目の前の相手が剣を振ってくるのを躱しながら――首裏を叩いて気絶させ、前に進む。

  

「私だっていいところ見せるわ――――豪刃!」

「援護するよ、会心の一撃を付与せよ――――クリティカルエンチャント!

「私も暴れるよ! 雷よ、貫く槍と化せ――――サンダーランス!」


 アリシャ、ミルチェ、アミナも負けずに援護をしてくれる。

 相手は強化されているが、引きを取らない強さだ。

 ただ例外として――。


「「「ギャアァァ――――!?」」」


「これで最強とか……バカみたいね……恥を知りなさい……」


「私のギルドより弱いじゃない――――フレイムナックル!」


 次々と相手が吹っ飛んで行く――リンナさんとリリノアさんはやりたい放題です……。

 2人も強化されて楽しんでいます……。

 

「予想通りだな、魔力があっても何もしていないのは変わらないな……」


 ザインさんは敵を薙ぎ払いながらため息をつく。

 ザインさんの予想は的中した――魔力で強化されただけで、みんな慢心して訓練も何もしてはいない。

 ここのエルフはCランク程度の強さでしかない、とんだ拍子抜けだ。

 ほとんど撃退し、残りは指示をしている鎧を着たエルフだけだ。

 

「な、なぜだ!? たかが少数に押さえられるとかあり得ない!?」


「はぁ……俺たちは修羅場を乗り越えた猛者だぞ……魔力頼りな奴に負けるとか論外だ」


「な、何を言うか!? 私たちはバジリスクやオーガを余裕で倒しているのだぞ!」


「みんなで魔法を撃ちあって倒しただけだろう……エルフの美徳も感じないな……」


「貴様! 我々をバカにする気か!」


 そいつは俺の方に向かって剣を構える。

 …………なんで俺!? セリフ的にザインさんに向かうところだろう!?


「お前がいるからスール様と一緒に暮らせないのだ!」


 個人的に恨みを買われている……喜んでド変態は差し上げるけど……。

 思いっきり一振りしてきたが、軽々と受け止める――なかなかに弱いな……本当に慢心し過ぎだ。

 すかさず剣を弾き――持ち手の手を叩く――。


「――――イッ!」


 その隙に左手に風の魔力を込めて、腹に当てる――。


「――――疾風拳!」


「――――グブヘェ!」


 鎧を破壊し――街の方まで飛んで行った。

 しかし……本当に弱すぎる……アイツ、全然稽古とかしていないな……。

 よくもまあ最強と口にできたものだ。


「片付いたことだし向かうぞ!」


 開けた道を進み出口へ、山に囲まれている街――エルフの谷が見えてきた。

 街の門の前には武器を構えているエルフたちがいる。

 まあ、あれだけ暴れれば警戒するか……。


「面倒ね、私が先に行ってくるから――」 


 そう言ってリンナさんは走りながら行き――膨大な魔力を使って【威圧】を発動した。


「「「ギャアァァ――――!」」」

「「「ひいぃぃぃ――――!」」」


 悲鳴と奇声を上げて、エルフたちは跪いて抵抗しなくなった。

 効果覿面ですね……。

 次々と倒れていくと、中からド変態が真っ青になりながら震えている。

 さて、見つけたことだし、こちらも反撃といきますか。

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