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146話 尾行

リフィリア視点になります。


 愚か者たちの尾行をする。

 先生から聞いた話では伯爵の権限によってマスターたちは何もできなかった……。

 伯爵が酷いことをするとは思わない……愚か者が何かしたのに違いない。

 私の仲間に変なことをしたらタダでは済ませない。


 今のところ誰も私の姿を感知はしてないようね。

 だけど、先生とマスターはエルフの谷辺りから気をつけるように言われた。

 愚か者たちが魔力強化されるから、私の【隠密】が見破られるかもしれないと……油断禁物ね……。


 それにしても……愚か者は興奮して鼻血を出しながらブツブツと言って走っているけど……。

 それを見たエルフは不安そうに話かける。


「あの……スール様……大丈夫ですか……少し休憩した方が……」


「いいえ、問題はありません!」


「ですが鼻に血が……」


「フフフ……貴方にはわからないと思いますが……私は今、精霊から洗脳を解いている最中です! 洗脳が強力なのか、その反動で血が出てしまっているのでお気遣いなさらずに!」


 何バカのことを言っているの……洗脳を解いているわけでもないのに、ただ精霊に欲情してるだけ……。

 そんなことで理解は――。


「なんと!? まさか走っているなか、精霊を解放させようと頑張っているのですか!? す、すごい!?」


「そうですよ、私が何もしないとでも思いましたか?」


「いいえ、とんでもございません! さすがスール様!」


 噓でしょ……愚か者の戯言を真に受けるの……。

 逆にエルフたちは愚か者を大声で讃えている……美化しすぎ……。


「ですが、みなさんがお疲れのようなので、休憩をしましょうか」


「「「ありがとうございます! スール様!」」」


 自分が休みたいくせによく言うわ。

 愚か者たちは魔物がいない小さな丘で休憩をする。

 愚か者は精霊に近づいて息を荒くしてジッと見ている……。

 何もなかったらすぐ助けるのに……卑怯者よ……けどマスターとソウタには迷惑はかけたくない……決闘が終わるまで我慢よ……。

 みんな、私が無力でごめんなさい……。


「愛しの精霊よ! 早く洗脳から解かれよ! これでは契約ができませんよ!」


 バカバカしい……懲りずに洗脳とか言っているの、ブリーゼが何か言いそうだけど。


「私はソウタ様の精霊――ブリーゼだ! このド変態!」


「精霊に名前がついている!? スール様……この精霊は契約してるのでは……」


 エルフたちはブリーゼが名前を言うと、ざわつき始めた――やっと正気になった。

 これなら解放して――。


「みなさん、気をつけてください! 洗脳者が精霊に名前を勝手に言わされてるだけです!  可哀想に……早く解いてくれ……」


 そう言いながら愚か者は悔しそうに拳を握りしめて地面を叩く。

 

「そうなのですね!? 洗脳者め……ここまで精霊を洗脳するとは許さない!」


 また愚か者のことを真に受けている……本当に歪んでいる……。

 もしかして洗脳という名の契約破棄を狙っているのかもしれない……。


「私は洗脳されていない!」


 ブリーゼの大声で言うがもう届いていない……。 

 ここまで愚か者を崇拝してると説得は無理そう……。 


「それではみなさん、行きましょうか! 愛しの精霊よ、もう少しで着くから待っていてくれよ――ンッン……マ!」


「…………」

「いや……気持ち悪い……」

「やめろ! 吐き気がする!」


 愚か者は精霊たちに投げキッスをする……。  

 プロミネンスは眠っているからまだしも……ティアとブリーゼは怯えている……。

 私も気持ち悪くて寒気がしてきた……。

 

 尾行して夕方になる――。

 森の中に入ると――愚か者たちの魔力が一気に膨れていく、もうすぐで着きそうみたいね。

 なぜだろう……周りには罠が多く仕掛けてある……。

 誰も来させないようにしているけど、おかしい……なんでここまで警戒するの?

 何かあるかもしれない……。

 

 森を抜けると――周りには山に囲まれて、街がある――ここがエルフの谷ね……。

 さらに愚か者たちから魔力が多くなった――小人さんよりは少ないけど強化はされている。

 幸いにも、私の【隠密】は気づいていないようだからひと安心。

 

「ただいま帰りました! 私の第3の故郷! みなさん、お疲れ様です!」


「「「お疲れ様です! スール様!」」」


 門番と同行したエルフは愚か者に敬礼をする――さて、これから精霊たちを何をするか見張らないと。

 すると、遠くから慌てて来る正装をしたエルフ――伯爵が向かって来る。


「スールさん、どこに行ってたのですか? 急にいなくなって心配しまし――あの……籠に入っているのはもしかして……」


「はい、洗脳者から精霊を助けに行きました!」


「なぜそんなことを……」


 伯爵は動揺をしている、エルフたちも何かおかしいと思い首を傾げている。


「これはサーリト様に――」


「私が説明します! ちょっと2人っきりで話します! みなさん、待ってください!」


 愚か者はエルフが何か言う前に慌てて割り込む。

 何か隠しているようね……2人の後を追い――みんなと少し離れた距離から話した。


「スールさん……なぜそんなことをしたのですか……? 私が見る限り精霊は怯えています……」


「私もこんなことはしたくありませんが、洗脳者に虐待を受けていたので救いに行きました!」


「そこまでされていたのですか……酷い……本当に契約してはいなかったのですね……」


 話が違う……もしかして精霊を奪うために愚か者が芝居していたの……。


「はい、ですが、私が洗脳を解きますので安心してください。それまでゆっくりと男爵の屋敷で休んでください」


「わかりました……私は失礼します……」


 伯爵はその場を去った。

 この様子をだと伯爵は精霊を攫うようなことは言ってないようね……。

 愚か者は再び同行したエルフの元に戻る。


「スール様、サーリト様は何も知らない感じでしたが……」


「当然です。何も言っていないで行きましたからね」


「そうなのですね……納得しました」


「それとみなさんは、規約のことはサーリト本人に言ってはいけませんよ。規約を書いた本人は後悔していました――自分では完璧に精霊を救おうと思っていましたが、籠に入った姿を見ると――酷い有様で違うと責任を感じていました」


「責任ですか……サーリト様は何も悪くありません……悪いのは洗脳者です……」


「そうです! ですが、サーリトは責任感があるので今後も気にします! だから規約のことは言わないでくださいね」


「「「わかりました、スール様!」」」


 もう明確にわかった……愚か者が精霊を攫おうとした愚かな芝居だと……。

 絶対に許さない……マスターに報告しないと……。


『そっちはどう?』


 先生から念話がきた――今までのことを話すと。


『黒だね、ボクたちもあのド変態の仕業だって証拠が見つかったよ! だから明日エルフの谷に行くから待っててね!』


 証拠が見つかった? 何か考察して導いたのかな?

 先生の方もそれまでの経緯を話してくれた。


『わかった、引き続き監視するから待っている』


『うん! リフィリアも無茶しないでね!』


 マスターたちが来てくれるなら安心ね、ソウタは精霊たちに念話で私が近くにいることを言ってくれたみたいだし、これで不安を取り除けばいいのだけど……。


「スール様、精霊はどうしますか?」


「もちろん、私の家に運んでください! できるだけ洗脳を解けるように頑張ります!」


「わかりました。気をつけてください」


「っと、その前に精霊を救った祝いに宴をしましょう!」


「「「もちろんでございます!」」」


 非常にマズいことになった……愚か者と精霊だけは……虐待に等しい……。

 その夜、街中は愚か者が精霊を救出したと広まり、街中はお祭り騒ぎだった。


 広場の中央に精霊を置いて――見世物とし、エルフたちは訳のわからない踊りをして愚か者を讃えている……。


「スール様、最高です!」

「さすが、英雄様でございます!」

「スール様は精霊の契約者として相応しい!」


「みなさん、ありがとうございます!」


 ずっと愚か者のことを聞いていると頭が痛くなってきた……。

 この場から逃げたいのは本音だけど……3人のつらさに比べていれば軽い方……。

 早く狂った宴が終わってほしい……。


 宴が終わり、愚か者の後を追う――。

 護衛みたいな人が精霊を持って歩いている……いい御身分ね。

 貴族街らしき場所にまで歩いたけど……もしかしてそこに愚か者の家があるの?


 愚か者は立派な屋敷へと入って行く――。

 家じゃなくて……屋敷だけど……。


 その中に入ると――。


「「「――――おかえりなさいませ、スール様――――!」」」


「ただいま戻りましたよ! 精霊を寝室までお願いします!」


 執事とメイドたちが迎えてくれる……ここでは英雄扱いだから待遇は良さそうみたいね……。

 愚か者は精霊たちをメイドに運ばせて違うところに行った。

 私はメイドの後を追い、2階へ行き――寝室らしきところに入った。

 その中はとても広く、領主様の客室用の寝室と似ている……。

 メイドはテーブルに上に精霊を置いて部屋から出て行った。


 今のうちに無限収納から紙とペンを出して書く。

 【隠密】を解除するとすぐにバレるから今はこの方法しかない。


「そこにいるのはリフィリア様ですか!?」


 ブリーゼが気づいてくれた。

 プロミネンスも目を覚まして、ティアは泣くのを止める。


「リフィリア様がいるの!? って……ここどこよ!?」


「リフィリア様がいる……」


 私は3人に紙を見せる――。


『私は今隠密を使って姿を見せなくて愚か者の監視をしているよ。だからみんな心配しないで、絶対指一本触れさせないから安心して待ってね』


 紙を見せたら不安だった3人もホッとした。


「リフィリア様、ありがとうございます!」

「ありがとうございます……」

「いつもありがとうございます!」


 だけど、この後が問題――噂をすれば愚か者魔力が……急いで紙をとペンをしまって隅の方に移動する。


 ドアを開けて――なんで全裸なのよ!?


「愛しの精霊よ! 私と一緒に遊びましょう!」


「いや――――! ド変態!」

「お、犯される……」

「き、汚いものを見せるな!」


 当たり前だけど、精霊たちは大慌て……。

 愚か者はゆっくりと近づく度に鼻息が荒く興奮している……。


「そんなに恥ずかしくなくてもいいのだよ! さぁ、目をそらさないで!」


 両手を広げて誘っている……精霊たちは目を閉じて身体を震えて怯えている……。


「も、もう我慢できない――――」


 愚か者が急に走り出して向かって行く。

 危ない、魔法を使うしか――。


「うひょ、ひょ、ひょ――――!?」


 愚か者は興奮のあまり足を滑って――勢い良く床に真っ正面から転ぶ……。


「――――ブヘェ!?」


 打ち所が悪かったのか、痙攣をして鼻血を出して起き上がらない……。

 いったい何がしたかったの……。

 その後、執事とメイドが来て――治療してもらい、服も着せられて、そのまま眠りに入った。


 危なかったけど、とりあえず難を逃れた……。

 このままずっと寝ていることを祈る……。

 

 マスター、早く来て……。

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