145話 やるせない気持ち
ギルドに向かい――気絶しているソウタをベッドに寝かせてホールで集まり相談する。
アイシスとフランカも来た、エフィナが念話で言ったみたいだ。
相談するはずが……みんなため息をついている……。
「全く……スールの奴……大陸の恥にもほどがある……」
「バカ痴漢……ソウタが契約していることがわかっているはずなのに……あんな暴挙に出るなんて信じられない……」
「精霊のために手段を選ばないなんて……本当に変人変態の愚行ね……」
「ふざけるなよ!? あんなクソな規則のせいで何もできなかった……この怒りはどこでぶつければいいのだ……」
「あれが正当なんて意味がわからないわ……」
「スールの奴……頭が狂ってやがる……」
「精霊たちは大丈夫かな……」
「これからどうするの……」
やるせない気持ちであった……。
あんな訳もわからない罰則でみんな不完全燃焼で終わったから無理もない。
気持ちに整理がつくまで待つ。
夕方になったが、同じ状態だ……。
それにしてもリフィリアから返事はない、変なことをされていたら報告するように言ったが、今のところ大丈夫だ。
「悪いな……みんな……寝てしまって……」
ソウタは頭を押さえながら来た。
「大丈夫なのか!? これを飲んでくれ!」
「助かる……」
無限収納からリフィリアが作ったポーションを渡して――ソウタは飲み、つらかった顔も少し和らいだ。
「ごめん……精霊を守ることできなくて……」
「しょうがない……規則には勝てない……」
「今リフィリアが追跡している。不安だろうが我慢してくれ……」
「大丈夫だ、遠くでも会話できるから何かあったら言ってくれる――だけど……プロミネンスは眠っていて、ティアは怯えて泣いている……ブリーゼは落ち着いて様子を見ているけど……」
契約しているから念話が使えるのか。
だからソウタは焦らず落ち着いているのか。
「そうか……精霊たちにリフィリアが近くにいるから何かされたら守ってくてると言ってくれないか?」
「わかった――」
リフィリアが近くにいるとわかれば、精霊たちの不安も多少消えるだろう。
みんなソウタに謝るが――。
「大丈夫だ、気にしないでくれ……アイツが悪いのだから……」
大人の対応をしているが……1番つらいのはソウタだ……突然、家族を理不尽に引き裂かれて不安でいっぱいだ。
この調子だと決闘が本領発揮ができない……。
しかし、関係者が1週間が入れないとかどういう規則だ……訳がわからない……。
本当にサーリトさんが承諾したのか……?
「あ~もうっ、イライラする! サーリトの奴、怪文書なんて書いたのよ!」
リリノアさんは怒りをぶつけるかのように怪文書を床に叩きつける。
気持ちはわかります……。
「今に思うがサーリトがこんなことするとは信じられん――」
ザインさんは怪文書を拾い、再確認をすると……真っ青になり、ガタガタと身体を震えている……。
見落とした箇所があるのか……。
「――って、おい…………リンナ、レイ、文字をよく見てくれ!」
そう言って、リンナさんと怪文書の文字を確認する――よく見ると…………一部の文字だけ癖があり、見覚えのある書き方が……。
「噓でしょ…………これバカ痴漢が書いているじゃない!?」
「俺たち……まんまとハメられたってことですか……」
「ああ……だが、署名はサーリトがしてある……もしかすると何かの手違いで署名したはずだ……スールはサーリトをマネて書いたみたいだが……あの状況で細かい文字の癖に気づくはずがない……やられた……」
「じゃあ、この怪文書は……」
「無効の可能性が高い、だがサーリトに確認しないといけない……」
まだ確証ではないか……。
けど、いろいろとおかしい点はあるよな。
「リリノアさん、サーリトさんはもうエルフの谷に行っているのですよね?」
「そうよ! サーリトとこの執事が言っていたわ! 噓をついているようには見えなかったわ!」
「ザインさん、もしエルフの谷に行く前にサーリトさんが途中この街に来て挨拶くらいはしますよね?」
「サーリトの性格上――礼儀正しいから来るはずだが、スールが来させないように仕向けた感じはする……」
「じゃあ、サーリトさんを街から遠ざけたのは何か不都合なことはありますか?」
「それはない……まさか――」
「もし、サーリトが挨拶に来たら怪文書のことも言うはずです」
「全部スールの思惑か…………クソッ!」
ザインさんは拳を強く握りしめ――床を殴る。
完全に黒だな。
「バカにしやがって――――明日からエルフの谷に行き、サーリトに会う――行きたいやつはいないか?」
ザインさん自らエルフの谷に行くのか。
当然みんなも賛同してついて行く。
「俺も行く……」
「すまない、ソウタは誤解が解けるまで待機だ」
ザインさんが言うとソウタ落ち込んだ。
気持ちはわかるが、ソウタが行くと危険だ――ド変態のことだから何か仕掛けてくる。
「わかった……みんな気をつけてくれ……」
「大丈夫だ、すぐに会わせるから待ってな」
そうと決まれば屋敷に戻って準備をする――。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
薄暗い中、起き――朝食を食べて、アイシス、フランカ、シエル、ソウタに見送られ、アリシャたちと一緒にギルドに向かう――。
今回は日帰りで帰れると思うからアイシス、フランカ、シエルには留守にしてもらう。
まあ、ソウタの身の危険があるから護衛をさせる。
ギルドの外にはもうほかのみんなが集まっていた。
エルフの谷に行くメンバーは俺、ザインさん、リンナさん、リリノアさん、アルロさん、アリシャ、ガルク、ミルチェ、アミナ、そして――ミツキさん、ヒナ、ユナ、ウィロウさん、グラシアさんだ。
ミツキさんたちはド変態の愚行を許さないみたいで参加をしてくれる。
忙しいなか、本当に助かります……。
もうメンバー的にはあり得ない組み合わせです……ギルドマスターと小人族がいる時点でエルフの谷で戦闘になっても負ける気がしない。
ザインさんは白金の鎧を着て――腰には白金の剣、左腕には白金の拳を装備し、リンナさんは竜の鎧を着て、フランカにはもらったミスリルの剣を腰に装備している……2人とも本気だ。
「集まったか、日が暮れる前に帰るから早めに行くぞ――」
ザインさんが先頭を切り――俺たちは続いてエルフの谷に向かう。




