143話 精霊使いと稽古の日々
稽古を開始して3日が経過した。
ソウタとブリーゼは風魔法「エアリアル・リフレクト」の練習をしている。
初日は2人とも体に小さな風を纏って終わったが、飲み込みが早かった。
次の日には魔力が多めに消費しているが、それなりに形になってきた。
そして今日は、魔法がしっかり発動しているか試しに弓で矢を放つと――。
矢は風に遮って当たらないで回避はできた。
俺の方に跳ね返って来なかったがそれでも十分発動している。
この調子なら完璧に使いこなせそうだ。
しかし、2人は同じタイミングで覚えている。契約しているからお互い練習を共有している感じか。
もし、どちらかが完璧に覚えれば片方も使えるってことだよな。
精霊と契約していると効率が良すぎる……まあ、俺も人のことは言えないけど……。
夕方過ぎになると――ザインさんが深刻そうな顔をして来た。
「すまない……リリノアが説得しても無理だった……スールの話が全部通ったらしい……これからサーリトは決闘の申請書を作るみたいだ……」
無理なのか……どんなけ姑息なマネをするんだ……。サーリトさんも全部鵜吞みにしないでくれよ……。
希望が薄れた……。
「それと、ソウタの報酬条件が釣り合わないから、もっと対等な物にしてくれと言っていた。もしソウタが決めないのであれば、あっちから勝手に決めると言った」
確かにソウタは条件はド変態のストーカー行為を防止する条件で――ド変態はソウタの精霊を奪う条件だ。
これは対等ではないから、お互い相応の条件を満たしていない――許可が下りないみたいだ。
しかも、決闘を強制させるためにソウタが決めないと、あっちで決めるのか……ド変態どんなけ卑怯な手口を……。
「わかった、追加で白金貨1枚でどうだ?」
「いや、安すぎだろう……精霊を出しているのだからもっと出してもいいぞ……」
やはり価値として白金貨1枚でも安い方か。
「じゃあ白金貨10枚はどうだ?」
結構デカくいったな。
これくらいが妥当か?
「もう少し出してもいいぞ」
まだ大丈夫なのか!?
「だったら私の条件追加して! あのド変態はこの街にいる自体嫌だから追放させて!」
プロミネンスが大声で言うとティアとブリーゼが頷いた。
この3人はそれが大事ですな。
「よし、その条件なら問題はないな、今からリリノアに連絡するからじゃあな」
ザインさんは急いで出ていき、ギルドに向かった――。
条件がしっかり通ればいいのだが、ド変態のことだから何か仕掛けてくるに違いない、油断禁物だ。
その前にド変態はそんな大金持っているのか?
――――◇―◇―◇――――
――5日経過した。
ソウタとブリーゼは「エアリアル・リフレクト」を完全に習得した。
俺が放った「アイシクルランス」をいとも簡単に返すほどまでになった。
これなら弓とある程度の魔法を対策はできる。
「今日はもう無理……」
「私も限界です……」
2人はどのくらい維持できるか確認をしていた。
1時間以上は保っているから大したものだ。
「お疲れ様、今日は早いが終わりにするか?」
「そうしてくれ……」
「お願いします……」
「お疲れ様、2人とも――マナポーションを飲んで」
リフィリアはマナポーションを渡した。
最近リフィリアは【調合師】のスキルで前に採った魔力草を使って、空き部屋で作っている。
ド変態のせいで予定より遅めの作業となったが、完成度は――。
「いつ飲んでも美味しいな、もうほかのは飲めない」
「甘くて美味しいです!」
2人の魔力は一瞬にして回復し、かなり効能です……。
もう上級のマナポーションです……。
作り方を見たが、本のレシピをアレンジして作っている。
普通なら魔力草を煮詰めてを抽出し――果実系を入れて完成だが、リフィリアの場合は魔力草を
風でミキサーみたいに使い、液体状にして煮詰める。
このやり方だと通常より魔力草を多めに使うこともできてかなり濃縮して抽出できる。
そしてミツキさんの故郷で生産された果物とツリーシロップを使って完成させる。
これで市販と比べて甘くて美味しいマナポーションが作れる。
アップル、オレンジ、グレープ、メロン味と種類が豊富だ。
よく考えましたね……。
俺も同じやり方で作るが――少し雑味がある感じで仕上がる。
調合系のスキルを持っていないと上手にできないみたいだ。
俺は補助くらいでいいか……。
余裕があると、リフィリアはポーションも作ってくれたが大変です……。
軽々と1等級のポーションを作ってしまった……。
さすが【調合師】です……。
まあ、売り物ではないし自分たちの用として使うけど、市場に出回ったら大変なことになる……。
とは言っても商業ギルドに登録していないから売れないけどね。
ただ……ミツキさんは目を輝かせてながら――。
「お金はいっぱい出すので、お願いします!」
故郷の方に送りたいようです……。
色々と貰っているからお金はいらない条件で――果物とツリーシロップを多めに貰うことで承諾した。
回復草と魔力草が足りなくなるな……この騒動が終わったらティアの故郷に行って採取しないと。
夕方前にザインさんが来て――サーリトさん宛てから正式に決闘が決まった。
内容はド変態が言ったのと同じで、予定通りエルフの谷ですることに決まった。
ソウタの条件もしっかり通っていて安心した。
そして審判が…………なぜガレンさんなんだ!?
協会側も興味があるのか……。
「今回は中立な立場で俺がガレンを推奨させた。アイツは喜んで引き受けると言った」
ザインさんがお願いしたのか、それならド変態が卑怯なマネはしない。
というか、エルフの谷でやることが卑怯だけど……。
ソウタには大変だが、頑張ってほしい。
――――◇―◇―◇――――
――6日後。
決闘まで2週間がきった――いつも通り俺はソウタと稽古をする――街の外で本格的にやっている。
もちろん、ド変態が何かすると思い、危ないからギルドのみんなで交代しながら護衛をお願いした。
今日はアリシャたち、重戦士のアルロさんが護衛をして――どのくらいできているか、ザインさん、リンナさんが見ている。
「ソータ、頑張れ!」
「主……頑張って……」
「ソウタ様、ファイト!」
精霊たちは大声を出して応援している。
俺はド変態にマネて弓と剣、魔法を使って攻撃をする――。
ソウタも負けずに剣と魔法で攻防をする――。
「いい感じだ、絶対にスールには負けないな」
「これならエルフの谷でもバカ痴漢に勝てるわ!」
ザインさんとリンナさんにお墨付きをもらった。
今のところ邪魔も入っていないし順調だ。
すると――見覚えのある魔力が……。
それに数十人も反応がある……。
『レイ、ソウタ! 残念で変態の魔力が反応しているから気をつけて!』
エフィナが慌てて言う。
やっぱり来たか……。
稽古を中断して――みんなで警戒をした。
大人数で来て今度は何を仕掛ける……?
姿が見えた――ド変態がニヤニヤしながらこっちに向かってきた。
その後ろにはエルフたちが――エルフの谷の者だな。
この状況はなんだ……決闘前はご法度だろう……。




