142話 理不尽な決闘
「エルフの谷?」
ソウタは首を傾げる。
知らないのも当然だ……。
「エルフの谷は……なぜかわからないが、エルフのみが強化できる場所だ……魔力が尽きない奴と闘うと思ってくれ……」
「あそこを選ぶなんてエルフとして恥だわ……」
エルフの谷――街から南に150㎞離れた谷の場所で、20年前にド変態が発見したらしい。そこ限定だがエルフだけが膨大な魔力が得られる。
ド変態はもったいないと思い、病弱だったエルフを連れて行くとあっさりと元通りになり、エルフの男爵――フーツ・モガンが土地を管理し、エルフたちが住み始めるようになって小さな街ができた。
ド変態はエルフの谷で英雄扱いされてかなり調子に乗っている。
俺も小さい頃から無理やり連れてこられたが、街の人は英雄の息子だと聞くと待遇は良かった。
けど、むず痒くてあまり行かない場所だ、もう3年は行ってない。
卑怯にもほどがある……しかもソウタには完全にアウェーだ……。
そこの人に変なことを吹き込むに違いない……。
ド変態の策にやられてしまった……。
けど、あまりにも理不尽な決闘だ。非正式だし無視してもいいと思うのだが……。
「非正式の決闘ですよ……ソウタは無理にしなくてもいいと思います……」
「それが……アイツは正式な決闘にするみたいだ……これを見てくれ……」
ザインさんは持っている手紙を渡してくれた。
ド変態からの手紙だ。俺とソウタは内容を確認すると――――はい!?
サーリトさんに正式許可を申請させるのかよ!?
上の権力を使うきか!
「もし、許可が通ったら……」
「ソウタは強制参加だ……逃げたら負けとなり……正式に精霊はスールのものになる……」
最悪だ……だからド変態は4週間――長期間を設けたのか……。
今頃ド変態は商業都市に向かってサーリトさんにとこへ……。
「リリノアさんには言いましたか?」
「手紙を見て、すぐ魔道具で連絡した……サーリトには説得するとは言った……。あとはリリノア次第だ……」
リリノアさん頑張ってください……。
ド変態のコネに負けないでください……。
「バカ痴漢……本当に許さない……」
リンナさんは怒りが頂点になり、【威圧】が抑えきれない。
そこまでして精霊が欲しいのなら自分で探せばいいのに……変なところで体力を使うな……。
「公式なら勝てば俺の条件もちゃんと通るよな?」
「ああ、そうだ……」
「だったら勝てばいい話だ、3人の安全確保できるなら好都合だ」
ソウタはいたって落ち着いている。
むしろ、魔力を出して燃えている。
「すまない……ここまでしつこいとは思わなかった……俺もできるだけ協力をする……」
「もちろん私も協力するわ! またバカ痴漢が精霊ちゃんたちに何かするかもしれないから守るわよ!」
ザインさん、リンナさんも協力してくれるなら怖いものはない。
これでド変態が来ても大丈夫だ。
2人も加わり、今後のことについて話した。
――夕方頃。
ミツキさんたちが来て――。
「ソウタさん、あの失礼な人に絶対勝ってください!」
「ギルドの人から聞いたぞ、スールが卑怯な決闘を申し込んだとな……」
「はぁ……あの変態……外道すぎますわ……。決闘前に倒した方がいいですわ……」
もう噂が広まっていました……。
だけどギルドのみんなはソウタ応援をしてくれるから、ド変態がこの街に見かけたらすぐ報告することとなった。
――――◇―◇―◇――――
――――翌日。
昼頃に庭の外でド変態対策としてソウタと稽古をする。
「よろしく頼むよ」
「ああ、その前に――」
ド変態の使う武器――弓と剣、魔法――火、風、地、回復魔法を使う説明をして稽古を始めた――。
「最初から本気で行くから死ぬ気でやれよ」
「もちろんだ」
50m位離れて、俺は【武器創造】で金の弓と矢を想像して――魔力を通してソウタ目掛けて放つ――。
ソウタは軽々と躱していく――引き続き矢を放ち、ソウタは躱したり、剣で受け止めたりする。
慣れているな、これはどうだ――。
「強いのいくぞ! ――――絶矢!」
「――――危なっ!?」
魔力を思いっきり込めた矢は鎧をかすめた。
一瞬当たったと思ってヒヤヒヤしたぞ……。
「レイ様、もうちょっと手加減して!」
「少し手加減してください……」
「レイ様、ゆっくりでお願いします!」
精霊たちに指摘された……。
いや、本気でやらないとド変態に勝てないぞ……。
「ごめんね、愚か者を倒すのに本気で稽古しないといけないから応援しようね」
「「「わかりました」」」
リフィリアが説得してくれた。
助かります……。
気を取り直して再び「絶矢」を放つ――。
「――――ウインドシールド!」
ソウタは腕に風を纏い、防ぐ――そんなやり方で防ぐのか、まだまだ余裕がある。
待てよ、あれが覚えそうだな。
「悪いがソウタ、これから魔法を教えるから覚えてくれ――――エアリアル・リフレクト!」
俺の周りに風の球体に覆われる。
「この魔法は?」
「リフィリアのオリジナルの風魔法だ、説明より見た方がいいな――リフィリア魔法を撃ってくれ」
「わかった――――ウインドランス!」
リフィリアが放った風の槍は俺の方に向かい――当たらずに風の球体の周りを回ってリフィリアに跳ね返る。
「「危ない!?」」
「大丈夫だよ――――ウインドシールド!」
すかさずリフィリアは風の盾を創り、防ぐ。
「これが反射型の魔法だ」
「すごいな……知らない相手だと自滅するな……」
「予定を変更するが、覚えられるか?」
「わかった、やってみるよ」
「す、すごいです! 私も練習したいです!」
ブリーゼが目を輝かせて言ってくる。
風の精霊だと覚えたくなるよな。
「ブリーゼならすぐ覚えるから一緒にやろうね」
「はい!」
こうしてソウタとブリーゼは「エアリアル・リフレクト」の練習を始めた。
大量のマナポーションを用意した方がいいな。




