137話 密林の湖
ソウタはホッとした様子で話しかけてきた。
「すごいな……よくあの硬いのを倒したな……」
「前に戦ったのだろう? 今回は異常なのか?」
「そうだな……レイたちがいなければ、やられていたのかもしれない」
「そうか、これで生態系が崩れることもないから安心だな」
「ああ、ティアの故郷を守ってくれてありがとう。かなり魔力を使ったから休んで行くか?」
「礼はいいって、それで頼むよ」
「わかった」
「ダンナ、休むのだったらキングとクイーンを解体してもいいか? 魔石があると思うし、目と羽とか硬いから需要があるかもしれない」
フランカは素材目当てだもんな、確かに硬いし素材としては需要はあるか。
「いいよ、その素材はフランカが管理していいよ」
「ありがとな! じゃあ、すぐ取りかかるぜ――」
フランカは「アースソード」を創り、解体を始めた。
「わ~い、素材だ~ところであの綺麗な剣はフランカさんが作ったのですか?」
ミツキさんは喜びながらフランカに聞く。
「それはだな…………」
フランカさん、なぜそこは黙るのですか……「作った」と言えば解決するのに……。
まさか自分で作っていない物だからプライドが邪魔しているのか……。
「小人さん、あの剣はマスターと契約して創った魔法の剣よ。これは私たちの奥の手だからほかの人には内緒にしてね」
「魔法の剣ですか!? すごいです! わかりました! 内緒にします!」
リフィリアのおかげでなんとかごまかすことができた。
半分は本当のことだけど、まあ、いいか。
「うぅ……レイ様……リフィリア様……ボクの故郷を守ってくれて……ありがとう……」
ティアは泣きながら頭を下げる。
「いや、大したことしていないし、いいよ」
「泣かないでティア、ほら、よしよし」
リフィリアはティアを抱いて慰める。
まだ安全かはわからない。魔物の反応は――滝の下の方しかないな。
やっぱり蚊がここら辺を縄張りにしていたか。
けど、油断はできない、休んだら確認しないと。
俺とリフィリアはマナポーションを飲んで――1時間くらい休憩をする。
フランカもすぐに解体が終わって、キングとクイーンとも灰色の魔石が出てきた。
ほかにも――目と羽は硬くて使えそうみたいだ。
「わ~い、綺麗な目と羽を貰った~!」
ミツキさんは目を輝かせて――解体した素材を見つめていたから、キングとクイーンの片目と羽を分けた。
ソウタにも欲しいか聞いたが、いいみたいだ。
精霊たちがあまりいい顔をしないからである。
「あの気持ち悪いのは遠慮しとく」
「ボクも……いらない……」
「私たちはいらないので、どうぞ有効活用してください」
あれだけ嫌っていたらそうなりますね……。
休憩も終わり、予定より時間がかかってしまったから、シエルに乗って――進むことにした。
上空で魔物の確認をしたが、さほど強い魔物はいない――安全は確保できたようだ。
飛んで数十分が経過して――空からハッキリとわかった。
密林の中央に周りとは違う濁った水ではなく綺麗な湖が見える。
「あそこが……ボクが住んでいた場所……」
確かに見た感じ精霊が住める環境だ。
シエルに湖の場所を指示をして降りる。
そこは密林の中にあるのに蒸し暑くはなく、適温で周りには花や薬草が多く生えて、密林の樹木と違い一回り小さく乾燥している。
不思議なことに近くには魔物の反応がない、本当に安全な場所だ。
確かに密林を抜けて森に入ったと思うほど、環境が変わっている――ソウタが森と言ってもおかしくはない。
それに広範囲の地形だ。
シエルは何か違和感があるみたいで首を傾げる。
『何か匂うのぉ……』
「匂う? 何がだ?」
『うむ……なんともいえぬ……』
「嫌な匂いなのか?」
『そこまでではないのぉ、平気じゃ』
「マスター、この花――魔物除けの花だよ。シエル本当に大丈夫なの?」
リフィリアが紫色の花を指した。
…………ダメじゃん!?
だからここ周辺に魔物がいないのか……。
「シエル本当に大丈夫なのか……害は……?」
『別になんともないのじゃ、ほれ――」
シエルは魔物除けの花に寄って匂いを嗅いだ。
問題ありませんでした……。
シエルは効かない体質なのか、長年生きているから抗体を持っているとしか考えられないな。
「マスター、薬草採りに行っていい?」
「いいよ、安全みたいだし自由行動にしようか」
「私も採りに行きます!」
リフィリアとミツキさんは薬草を採りに行った。
「やっぱり故郷の水は美味しい……」
「ティアが住んでいる場所は本当に落ち着くわ!」
「いつ来ても落ち着きますね!」
精霊たちは湖の中に入り――浴びながらはしゃいでいる。
魔力が少しずつ回復しているが、この湖の特徴か?
『この湖、魔力が少し溶け込んでいるね!』
「エフィナはわかったか。そうだよ、周りを見ればわかるが――ここの湖のおかげで薬草や花が生えているよ」
「じゃあ……この湖はマナポーションと同じ効果があるのか?」
「微量ながらね、本当なら煮沸して飲むけど、ここの水は普通に飲めるから安心してくれ」
それほど新鮮なのか。
まあ、魔力が溶け込んでいるならそうだよな。
「そうか、炭酸水の場所はその奥にあるのか?」
「ああ、そうだよ。少し歩いた先に湧水があるよ」
「わかった、昼食を食べてから案内よろしく」
「もちろん」
みんなが自由行動している間、地面に座り、湖を眺めながらゆっくりする。
「わ~い、いっぱい薬草が採れた~」
リフィリアとミツキさんは満足げに戻ってきた。
「何が採れましたか?」
「回復草、魔力草、解毒草といっぱい採れました!」
ミツキさんはアイテムボックスから大量の薬草を出した。
こんなに採ったのか……。
「マスター、薬草を採ったからポーションとマナポーションが作れそうだよ」
前に作りたいとか言っていたな。【調合師】のスキルを持っているから今すぐにでも作れるか。
「じゃあ、帰ったら道具を用意して作る?」
「うん、そのときはお願いね」
これで上手く作れたら市販のは買わなくて大助かりだ。
みんなある程度満喫したら、昼食を食べて――ソウタの案内で炭酸水の場所に向かう。
穏やかに流れている川を辿って行くと――川から小さな気泡がプクプクと上がっているのが見える。
「これ……炭酸か?」
「そうだよ。ここだとガスが抜けて微炭酸くらいかな、もう少しで着くよ」
「泡がいっぱい出ている! おもしろいです!」
ミツキさんは珍しいのか興味津々で川の方ずっと見ている。
段々と気泡が多くてなっていく――そろそろ着くみたいだな。
「着いたよ、ここが例の湧水さ――」
そこは直径10mはあるボコボコと炭酸が出ている湧水で周囲には薬草――魔力草が一面に生えている。
すごいな……ここは……。




