136話 キングとクイーン
普通のと比べてかなり大きい――全長10m以上はあるか。
「どっちがキングとクイーンなんだ?」
「羽が多く、黄色い目がキングで、口先が長いくて赤い目がクイーンだ」
じゃあ右がキングで左がクイーンってことか。
――――ブ~~~~ン――――。
かなりうるさい、モスキート音というよりハエの音に近い。
「いや! さっきよりも気持ち悪い! ――――フレイムランス!」
「こいつらが……ボクの故郷を――――アクアランス」
「前戦ったのと全然違います! ――――ウインドランス!」
精霊たちは魔法を放つが、すんなりと躱される。
速いな……。
「ソウタ、あの2体は強いのか?」
「見た通り異常な速さで厄介だ。あと、吸われたらおしまいと思ってくれ。強さは2体ともAランクだ。だけど、ここの環境で大きくなっているからそれ以上かもしれない」
非常に厄介だな、恐らくこいつらもシエルを狙っているに違いない。
「所詮、ただの蚊だろう? アタイが燃やしてやるよ――――フレイムショット!」
フランカはキングに豪炎の弾丸を放ったが躱される。
「なんだよ、あの気持ち悪い動きは!? 本当に蚊なのか!? ハエにしか見えないぞ!」
確かに動きはハエと同じだな。
クイーンは――しまった、もうシエルの近くにまでいる!?
「危ない! クイーンは口を伸ばして獲物を吸うからあの距離だと届くぞ!」
シエルは避けられないだったら――。
「――――アースウォール!」
地魔法で岩の壁を厚く創り――クイーンは口先を伸ばす。
間に合った、硬く創ってあるからさすがに岩を削れるはずはない。
しかし、クイーンはそのまま岩の壁を口先を伸ばすと――岩を貫通させる。
噓だろう……いとも簡単貫通させた……あの口は凶器か……。
「シエル大丈夫か!?」
『大丈夫じゃ……ギリギリ回避できたのじゃ……』
シエルは危険を察知したのか下にしゃがんで躱した。
危機一髪だった……あの威力だと簡単に鱗を貫通する。
今のうちにクイーンに近づいて切る――。
「――――豪刃!」
躱され高く飛んでいく。
もう蚊ではなくハエだな……。
「とう、――――豪襲脚!」
ミツキさんは岩の壁登って飛び――クイーンの頭上を狙って蹴りを入れようとするが、躱され、そのまま着地する。
「全然当たらない!」
ミツキさんは顔を膨らす。
小人の速さでも追いつけないのか……。
今度はキングが俺たちに目掛けて突っ込んで来る――。
「させない――――ウインドシールド!」
リフィリアは風の盾を創り――キングを弾いた。
その衝撃で動きが鈍くなった。
隙ができてソウタが狙いにいく。
逃がさないように援護をする。
「――ヘイスト!」
ソウタに時魔法をかけ――身体を速くする。
「助かるよ、よし、これなら――――紅蓮割砕!」
ソウタは高く飛び――炎を纏った剣でキングの頭を狙って切る。
頭に当たったが――金属音が鳴り響いて切れていない……。
「か、硬い……」
キングが羽を高速でばたつかせ、その勢いでソウタを地上に飛ばす。
「ソータ!」
「主……」
「ソウタ様!」
「大丈夫、怪我はさせない」
リフィリアは風を使ってソウタを包み込んでゆっくりと降りる。
「ありがとう……体制が整わなくて、焦ったよ」
「気にしないで」
「ありがとうございます、リフィリア様!」
「うぅ……主を助けてくれてありがとう……リフィリア様……」
「ありがとうございます、リフィリア様! この恩は一生わすれません!」
精霊たちはリフィリアにお辞儀をしてソウタに駆け寄る。
さて、どうするか……魔法を当てられない、ソウタの剣でも刃が通らない……。
このまま続けてもジリ貧だな。
…………魔剣を使うしかないか。
対抗できるのは風の魔剣だ、ミツキさんがいるがこの状況はしょうがない、早く蹴りをつける。
「みんなはシエルを守ってくれ、俺があの蚊を倒す」
「わかったが……策はあるのか?」
「策はないが、これを使う――」
俺は左手に風の魔剣を出す。
それを見たミツキさんは目を輝かせる。
「綺麗な剣ですね! フランカさんに作ってもらったのですか?」
「あとで話しますので、シエルのところへ……」
「わかりました! シエルさんを守ります!」
リフィリア以外はシエルの近くで行った。
「私も前で戦うよ」
そう言うとリフィリアも魔剣を出して――風で浮かす。
『リフィリアもあの蚊の速さに余裕で追いつけるから大丈夫だよ!』
エフィナが言うのであれば問題ないか。
「クイーンの方、頼めるか?」
「任せて」
「じゃあお願いするよ」
そう言って俺はキングの方に向かう――。
高く飛んでいるから空中戦になるか――。
「――ウインドフライ!」
風魔法で身体を浮かせて飛び――キングに近づいた。
キングは羽を高速でばたつかせて追い払おうとする。
無駄だ、俺は風の抵抗は受けない。
無理だとわかると逃げようとする――俺はすぐに目の前に飛んで塞ぐ。
そしてまた違う方向に逃げようとする――再び俺は先に飛んで塞ぐ。
これを何回か繰り返す。
風の魔剣を持っていると身体が軽く、キングの速さが遅く見える。
常にヘイスト状態の感覚だ。
さて、遊びは終わりだ――。
「――プレスバレット!」
風圧の弾丸を放ち――キングに直撃し、徐々に下に落ちていく。
抵抗をして羽を思いっきりばたつかせるが、上には飛べない。
無駄な抵抗だ、この魔法が当たれば風圧で身体が重くなる。
その隙に頭を狙う――。
「――――風烈迅!」
魔剣で頭を叩き――地面に落下する。
キングは痙攣して倒れる。
俺も地上に降りて、「エアリアルソード」を創り、右手に持って仕留める――。
「――――風迅乱華!」
「ブ~~ン……」
風を纏い、羽、胴、足を切り刻み――倒した。
最後までうるさいハエ――いや、蚊だった……。
リフィリアはどうなった――振り返ると上空でクイーンと戦っている。
今すぐ加勢に――。
『そろそろ終わるから大丈夫だよ!』
エフィナの言う通り終わりそうだ。
よく見るとクイーンは全身ボロボロで、長かった口先も切られている。
リフィリアは魔法を発動する――多めに魔力を使っているから、これで止めを刺すみたいだ。
『――――スパイラルランス・レイン!』
螺旋の槍はクイーンを囲み――串刺しにする。
そして浮かした魔剣に魔力を込めて切る――。
「――――風迅・一閃!」
クイーンを真っ二つになり、地面に落ちて終わった。
剣を浮かせて切るとか相変わらず器用なことをしますな……。
リフィリアの特権ですな……。
「お疲れ様、魔力は大丈夫か?」
「マスターもお疲れさま。う~ん、ちょっと使い過ぎたから後はみんなに任せるよ」
まあ、その前に魔力をかなり使ったからそうなるか。
「じゃあ、みんなに言って休むか?」
「うん、その方が助かるよ」
終わったとわかると、みんな駆け寄る――。




