135話 害虫駆除
――翌日。
『寝坊助、起きろ!』
「ダンナ、朝だぞ!」
「マスター、起きて」
「レイさん起きてください!」
みんなの声で起こされる。
「おはよう……今から朝ご飯用意するよ……」
「大丈夫よ、朝食分も用意してあるから」
リフィリアはそう言って布団を片づけた後、テーブルを設置して、その上に――おにぎり、山盛りにされた鶏の照り焼き、温野菜サラダ、みそ汁を無限収納から出した。
俺が朝弱いのを考えてアイシスは朝食分も用意したのか、ありがたい。
いつものことだが……やっぱり肉は多めだな……。
「男性はいっぱい肉を食べてね、アイシスから言われてるから残してはダメよ」
「わ、わかった……」
「しっかり食べるよ……」
「わ~い、ありがとうございます!」
俺とソウタはゆっくりと食べていたが、ミツキさんは口いっぱいに頬張りながら喜んで食べていた。
その元気俺にも分けてください……。
朝食を食べ終えて――今日は密林の魔物を倒しながら炭酸水がある場所に向かう。
シエルに乗って――密林に向かう。
今日中に着くようにソウタと相談して、奥の方まで進む――。
「ここで降りてくれないか?」
『わかったのじゃ』
滝が流れている崖の上に降りた。
下を見ると――かなりの高さで水しぶきが散っている。
しかし……かなり奥まで行ったな、シエルがいなければ密林は1週間探索する感じだと思った。
魔力が反応がある、それも数百と――。
――――プ~~~~~~ン――――。
うるさいモスキート音が……。
そいつが現れた――大きな木の少し下の高さで飛行している、全長1mはあるデカい黒い蚊だ……しかも大群で……。
精霊たちはドン引きしていた。
「なんでこんなところに気持ち悪い虫がいるの!?」
「ボクの故郷の近くに……汚い虫が……」
「気持ち悪いです! 早く倒しましょう!」
その発言だと前はいなかったみたいだな。
しかし初めて見る魔物だ。
「なぜここにブラッドモスキートがいるんだ……」
ソウタは驚いていた、ここにいるのは珍しいのかな?
『ブラッドモスキートは魔大陸に生息している魔物だよ』
『魔大陸? じゃあ、この大陸では珍しいのか?』
『そうだね、魔大陸と近いからあり得ないことはないけど、このままだと生態系が崩れるね』
そのまま放置すると危ない感じか。まあ、結局倒さないと進めないけど。
「ソウタ、あの蚊はどれくらいの強さだ?」
「強さはCランクだ、けど普通のブラッドモスキートはこんなに大きくはないぞ……一回り違う……多分ここが良い環境だから影響を受けていると思うが……」
確かこの場所は普通より大きくなるって言っていたな。じゃあ、少々厄介か。
「わ~い、見たことない虫だ! 素材になりますか?」
「見た感じ羽くらいは素材になりそうだな」
やっぱりフランカとミツキさんはそこが大事ですな。
「残念ながら素材にはならないよ、魔大陸では害虫にされている」
「そうなのですか!? 残念ですが倒しましょう!」
「なんだ、じゃあ、全部燃やすか」
素材にならないなら倒すだけだ。
ブラッドモスキートは俺たちに気づいて向かってくる――少々早いな。
みんな戦闘体制に入る。
「気持ち悪い! ――――フレイムナックル!」
「ボクの故郷を……――――アクアナックル」
「駆除します! ――――ウインドナックル!」
精霊たちは相当嫌なのか、まだ遠いが魔法を放つ――見事に命中して次々と倒れていく。
ソウタと契約してることあって遠くでも威力が申し分ない。
「みんな後ろに下がっていてくれ――――トルネード!」
「ぷ~ん…………」
ソウタは前に出て、両手剣を振り、竜巻を起こし――次々と蚊の群れは飲む込まれていく。
竜巻が消えるとボトボト地面に落ちていき、痙攣して倒れる。
「アタイが止めを刺すぜ! ――――フレイムプリズン!」
フランカは蚊を炎の檻で囲み――燃やして灰となった。
「わ~い、――――刹那!」
ミツキさんは相変わらずの速さで次々と倒していく。
俺も【武器創造】で金の剣を創り――切っていく。
「多いね――――エアリアルサークル!」
リフィリアは風の球体で蚊を吸い込み――。
「――――エア・プレッシャー!」
叩きつけて倒す。
だが、逃げのが速いのか思うような数が倒せない。
「ちょっと威力が弱かったみたいね……」
みんなに気を遣って加減をしていたみたいだ。
前は好戦的だった性格が随分変わりましたね。
続いて向かってくる蚊を倒しているがどうもおかしい。
俺たちの方を向かっているが、眼中にない様子だ。
『あ~シエルを狙っているね……』
「まさか、シエルの血を狙っているのか?」
『多分、吸いごたえがあるからね……』
やっぱり大型を狙いますよね……。
それを聞いたシエルがドン引きでした……。
『なんじゃ、この下等生物は!? わ、妾の血が欲しいとは、へ、変態じゃ!』
やっぱり変態扱いされるよな……。
「硬い鱗があるから吸われないような気がするけど……」
『なんじゃ、それなら安心じゃ――ないのじゃ!? 主よ、妾――乙女があの下等生物に襲われてもいいと申すのか!』
『そうだよ! シエルはか弱い乙女だよ! 襲われていいような魔物じゃないよ!』
何を言っているんだシエルとエフィナは!? なぜそうなる!?
シエルはあの蚊なんて火を吐いたら一瞬で消せるぞ!
まあ、密林で吐いたら火の海になるから――そこはわかってシエルは戦闘に参加していないか……。
「ハハハ、まあ、結局はブラッドモスキートを倒さないと進めないからな―――紅蓮斬!」
そう言ってソウタは剣を炎で纏い、切りつけ――蚊を真っ二つにする。
「そうよ! あの得体の知れない虫に襲われたらたまったもんじゃない! ――フレイムアロー!」
プロミネンスは火の矢を放ち――蚊は燃えて地面に落ちる。
わからなくもないか……。
「別に襲われてもいいとは思っていないからあまり動くなよ……」
『わかったのじゃ!』
シエルは邪魔にならないように木の裏に隠れる。
さて、守りながら倒していくか――。
――数十分経過した。
まだまだ向かって来てがキリがない――。
どんなけいるんだ……もうここは蚊の縄張りか……。
「うぅ……ボクの故郷……大丈夫かな……」
ティアは涙を流して不安でいる。
さすがにこの数だと心配だよな……。
「大丈夫だから……ティアは少し休んで……」
「うん……」
ソウタはティアを慰める。
風上級魔法で一層させたいが、この様子だとまだまだ来るよな……。
タイミングが合わない……。
「ティアの故郷は私が守るから心配しないで」
「リフィリア様……」
リフィリアは笑顔で言う。
「みんな、大き目な魔法を使うから離れてね」
大き目な魔法? オリジナルの魔法を使うのか?
「わかった、ミツキさん! こっちに来てください!」
「わかりました!」
遠くにいるミツキさんを呼んで――みんな、リフィリアから離れる。
そしてリフィリアが魔法を使う――この感じは【混合魔法】を使うのか、風と闇――――空間魔法も重ねている!
「――――ブラックホール!」
蚊の大群は次々と黒い穴に吸い込まれていく――。
こんな高度な魔法が使えるのか……。
『ボクが教えた通りに上手くいっているみたいだね!』
『エフィナが教えたのか?』
『そうだよ! リフィリアは使えそうだったからこっそり教えたよ!』
それなら納得した。
リフィリアは魔法が得意だから教えることができたか。
黒い穴が消えると――蚊の姿はもうない。
「これで大丈夫よ」
「すごいな……」
「リフィリアさん、す、凄いです!」
「リフィリア様、さすがです!」
「リフィリア様……強い……」
「あの気持ち悪い虫を蹴散らすなんて感服しました!」
リフィリアのすごさにみんな褒めている。
気になる点が色々とある。
「助かった……あの蚊はどこに行った?」
「滝に落としたよ」
滝の下を見ると――蚊の大群は川に流されている……。
「つまり、滝の下に出口として空けたことでいいのだよな……」
「そうだよ」
リフィリアは笑顔で返して来た……。
こういう仕組みなのか。てっきり亜空間に閉じ込めると思っていたが、そうではないみたいだ。
あとは――。
「魔力は大丈夫か? 今までで一番使っているが……」
「半分以上は使ったけど、大丈夫だよ」
やっぱり3つも重ねるとそのくらい使うか。
「わかった、今日はもう休んでいいよ」
「そうしたいけど、まだ大型がいるから休まないよ」
そう言ってリフィリアはマナポーションを出して飲む――。
確かに比べものにならない反応がある――2体か。
段々と反応が近づいてくる――先ほどとは比べない大きさの2体ブラッドモスキートだ。
「キングとクイーンだ……」
恐る恐るソウタは言う。
こいつらが元凶ってことか。




