131話 避けては通れない
昼過ぎはソウタといろいろと話していた。
驚いたことに、ソウタは転移前に探偵の仕事をしていたらしい。
内容を聞いてみると――。
「浮気調査が主だよ……もうあの頃に戻りたくはない……」
あまりいい感じに答えてくれない。結構大変な職場だったか……。
もうこの話はやめておこう……。
だからソウタのスキルに【第六感】があるのは、勘が頼りになる職場にいて覚えたと納得した。
ほかにも精霊たちに【隠密】のスキルを覚えていたからソウタ自身にもあるはずだ。
意外に探偵ってチート持ちですね……。
まあ、俺も【料理人】のスキルがあるからなんとも言えないが……。
やっぱり転生や転移の人はチート持ちが多いですね……。
ソウタも俺たちのことにいろいろと聞いてきたが、避けては通れないことを言う――。
「レイはよくリフィリアを大精霊にできたな、何かあったのか?」
さすがに隠すことができないか……。
遊んでいるところ申し訳ないが、リフィリアと精霊たちを呼んで大精霊になった経緯を言う――。
「厄災の被害に……災難ってもんじゃないぞ……」
「リフィリア様がそんな苦労を……私の仲間が……厄災に……酷すぎる……」
「うぅ……悲しい……」
「厄災……仲間の命を……許さない!」
ソウタは怒りを堪えているのか拳に力を入れていて、精霊たちもやるせない気持ちだった。
「本当にごめんなさい……」
リフィリアが頭を下げる。
「リフィリアは何も悪くはない……俺たちも早くついていればこんなことに……」
「そうです! 厄災を倒すなんて凄いですよ!」
「リフィリア様は……すごい……」
「リフィリア様は仲間のために戦ってくれました。謝る必要はありません!」
ソウタたちは気を遣ってくれる。
「これは俺の責任でもあるから責めるなら俺に言ってくれ」
『レイ、自分で背負わないで!』
エフィナが慌てて言い出す。
俺の判断ミスだから責められるのは当たり前だ。覚悟はある。
「何言ってるんだ……レイが悪いわけないだろう……厄災を倒しただけでも奇跡に近いぞ……」
精霊たちも頷いた。
「だけど……」
「過ぎたことはしょうがない。気にするな、俺たちも協力するから元に戻そうな」
優しいな……ソウタの言葉で肩の力が抜けて、救われたような気がする。
「ああ、ありがとう……よろしく頼むよ」
「それはお互いさまだろう」
そう言ってソウタと握手をした。
これは最後に見せないといけないと思って屋敷の外に出て――マナイーターの魔結晶を出した。
ソウタたちは精霊たちの魔力が宿っていることに気づき、手を合わせて――。
「みんなが元気でいますように……」
「精霊たちに祝福を……」
「ありがとう……」
「もう誰も失わないよう誓います……」
そこまでしてくれるなんてソウタたちは本当に人格者だ。
「さて、この話はおしまいだ。レイ、お菓子が食べたいからよろしく」
「私も昼前に食べたお菓子が食べたい!」
「ボクも……」
「私もお願いします」
「ああ、わかった」
こうして話が終わった。
本当に気を遣って助かる。
重い話をした分、たくさんガトーショコラ用意した。
――夕方過ぎになると。
「「お邪魔します!」」
ミツキさんたちが来た。
ソウタたちを見ると――。
「わ~い、精霊さんが3人いる!」
ミツキさん、ユナ、ヒナは精霊たちに近づいて喜んで飛び跳ねる。
「微笑ましい……」
「微笑ましいですわ……」
ウィロウさとグラシアはいつものように保護者のような目で見る。
「魔力が多い……レイ、もしかして子供みたいのが、最強の種族の小人族か?」
「そうだよ、ミツキさんは俺たちより年上だから失礼のないようにな」
「年上なのか……もちろんだ、俺たちの前いた世界の食材を持って来てくれる人は大切にしないとな」
ソウタたちはミツキさんたちに挨拶をして――お互い印象が良かった。
「ギルドの人に聞いたよ――大変だったな、スールが依頼そっちのけで精霊使いに会って精霊をよこせと言ったらしいな」
「そうですわよ、よくあの変態――エルフを被った害虫によく逃げられましたわね」
もうギルド内で噂が広まっているのか……。
しかもグラシアさん、しれっと酷いこと言っている。
スールさんの株が暴落していますね。
「当然よ! あのド変態は私が魔法で成敗したから平気よ! 自ら受けにいったのは予想外だったけど」
プロミネンスは胸を張って言う。
…………自分から受けたのかよ!?
だからプロミネンスの魔法を受けた後に精霊の愛を受け止めたとかなんとか言っていたのはそのことか……。
本当にド変態ですね……。
「お邪魔するわね!」
するとリンナさんも来た。
「わ~受付のエルフちゃんだ~。こんばんは!」
「受付のエルフちゃん……大好き……」
「昼前はありがとうございました!」
精霊たちはリンナさんの近づいて喜んで飛び回っている。
意外にリンナさんは精霊に好かれやすいのかな?
「お疲れさまです。それでスールさんはどうしましたか?」
「空き部屋に縛り付けてギルド長が帰って来るまで、みんなで監視しているわよ。はぁ……まだ精霊ちゃんたちを諦めてないわ……」
リンナさんは深くため息をついた。
度を越えているな……もう諦めて精霊を探す旅に出ればいいのだが……。
「ソウタが契約しているの知っていてもですか?」
「認めていないわ……多分だけど、レイ君のを見て――リフィリアちゃん大きくなった姿が正式な契約と思っているわ……」
俺の契約は規格外だぞ!?
それを普通の契約にするとか頭をおかしいだろう!?
自分の魔力を比べればわかるはずなのに……。
暴走してるほどがある……。
「俺もアイツに契約していると言っても、「していません」一点張りだったぞ。説得をしようと思ったが、「これが契約とか精霊が可哀想――恥を知りなさい、洗脳者」とか訳もわからないことを言って何も聞いてくれなかったぞ」
そんなこと言っていたのかよ!?
最低だ……もうソウタたちには絶対に合わせない。
それを聞いてみんなはドン引きをしていた……。
「あのバカ痴漢アニキ……私がいないときにそんなことを……本当に最低……」
『うわぁ……醜いな……』
「私が精霊でしたら一瞬で氷漬けです」
「アタイだったらもう灰にしているな……」
「あの愚か者……本当に懲りない……」
「また失礼な人、精霊さんにちょっかい出しているのは考えられません。自分が恥だと思ってないのでしょうか?」
「そいつの腹に一発蹴りを入れたい!」
「頭がおかしい!」
「正真正銘のバカだな……」
「やはりエルフを被った害虫ですわね……」
みんな他人事では済ませられない状態ですね……。
早くザインさんが帰ってくればいいのだが……。
「まあ、そんなにしつこいなら俺は意地でも止めるから大丈夫だ」
ソウタはいたって普通だ。
なぜそんなに平気なんだ……。
「また難癖つけてくるぞ」
「そのときはそのときだ、前いた世――故郷よりはまだマシな方だからな」
前いた世界がそんなにつらかったのか……。
どれだけメンタル強いのだ……。
「わかった、無理はするなよ。この問題はソウタたちの問題ではないからな」
「そうなのか? なら俺が手に負えなかったよろしくな」
そう言うとみんな頷いた。
みんなで協力すればスールさんはもう手を打たないだろう。
「それじゃあ、飯作るか――ソウタたちの歓迎会だから何か食べたいのあるか?」
「えっ? 昼飯にあんなにいいの食べてさせてもらったのにいいのか?」
「ああ、好きなの言ってくれ」
「いいのか、それじゃあ、何にしようかな――」
ソウタは腕を組んで悩んでいる。
食べたいのがいろいろあるみたいだ。
「あれは作れるか――――ナポリタン」
「「「なぽりたん?」」」
俺、アイシス、フランカ以外は首を傾げる。
和食を頼むのかと思ったが意外な答えだ。
「やっぱりダメか? それもそうだよな、パスタなんて見当たらな――」
「いや、できるぞ、スパゲッティも作ってあるからな――」
俺は無限収納から乾燥させたスパゲッティを出した。
前もって作り置きしたから大量にある。
「あるのか!? ありがとう、俺の大好物なんだ……」
ソウタは震えながら拳をギュッとする。
無理もないか、この世界にパスタを作っているところなんてないからな。
「ナポリタンだな――今すぐ作るよ」
「レイ君、なぽりたんってなんなの? 聞いたことがない」
リンナさんは気になるみたいだ。
この場合は――。
「アイシスから教わりました。口で説明するより見た方がわかりやすいと思います」
そう言うとアイシスが頷く。
「アイシスが? やっぱり賢者の弟子は物知りね……」
なんとかごまかせました……。
ソウタさん……できれば前世の料理は人前で言わないでください……。
あとで言っておくか。
みんな気になるのか、ワクワクしながらキッチンに集まる。
そんなに期待はしないでください……。
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