130話 似た者同士?
ソウタたちが落ち着いたところでお互いにいろいろと聞く。
まずはエフィナが俺が転生した経緯やソウタが迷い人であることを説明をした。
「そうなのか……じゃあ、エフィナ、アイシス、フランカは魔剣なのか?」
「まあ、そういうことになる。俺たちのことは内緒にしてくれよな」
「わかった……しかし俺は迷い人になるのか……てっきり神様のいたずらでこの世界に呼ばれたのかと思った……」
ソウタはため息をついて落ち込んでいる。
やっぱり自分が思っているのと違い、腑に落ちないみたいだ。
「この世界に来て後悔はあるか?」
「いや、何もない……前のいた世界は俺は自由がなかった……。むしろこっちに来て正解だ。後悔や心残りなんてないよ」
逆にこの世界に来て良かったのか、それを聞いて安心した。
「そうか、自分がそれでいいのならいいが、転移して大変だったろう? 魔大陸の森の中で四方八方わからないのに苦労はしただろう……」
「それだが、転移した後に目の前にプロミネンスがいて寂しくもなかった。近くに村もあって、記憶喪失だと言ってみんな優しくしてくれて問題なかったぞ」
大丈夫だったのかよ……意外に恵まれていますね……。
「記憶喪失でよく通じたな……」
「プロミネンスがいたおかげだからな、村人はみんなエルフで――精霊と契約してその後遺症で記憶をなくしたと解釈していたよ」
「ちょっと待て!? 転移早々、契約したのか!?」
「ああ、そうだよ、今思うと無謀だったが、普通に契約できて平気だったよ」
確かに転移してなんにも知識がなく、無知な状態だ。
それにすぐ契約できる魔力もあったなんてソウタ末恐ろしい……。
「私とソータは初めて会ったときに、運命の契約で結ばれていたから当然よ!」
プロミネンスは胸を張って言う。
運命の契約? 精霊で言う赤い糸で結ばれてる的なことか。
「ハハハ……そうなのか……じゃあ不便なことはなかったか?」
「文字がわからなかったくらいだな、1年勉強してやっと覚えた」
文字は1年で覚えるのはすごいな。
俺はティーナの加護で最初からわかっていたけど……それは言えないな……。
というか、普通に会話できたのか。
「大変だったな……それから旅をした感じか?」
「ああ、3年くらい村の人からいろいろとお世話になって旅を出た。それから冒険者になってティアとブリーゼに会って、あっという間に15年過ぎたってことだ。自分のペースでやっているから楽しいよ」
最終的にはソウタはこの世界を謳歌しているから、特に問題もないか。
しかし、しっかりとした人が転移者で良かった。
本当に変な奴が転移したらたまったもんじゃない、世界のバランスが崩れる。
「オルリールさんから聞いたけど、ミスリルカードみたいだな。見た感じ軽装の鎧着ているが――遠距離ではなさそうだな」
「ああ、確かに俺はミスリルカードだよ。そして俺はこの剣を使って戦っている」
ソウタは一瞬にして手から金の両手剣を出す。
気づいていたが鎧を着て手ぶらはおかしいと思ったがソウタも【アイテムボックス】持ちとはな……。
これは日本人の特権ってことか。
「アイテムボックスか、やっぱり楽だよなー」
「やっぱりって……レイも持っているのか?」
「そうだよ、まあ、俺はもう空間魔法の無限収納にしまっているけどな」
「無限? どう違いがあるんだ?」
「時間を止めて保存できるってことだ」
「そんな便利魔法が……俺もまともに魔法が使えればな……」
「まともに? 精霊と契約しているなら上級魔法を覚えているだろう? 少なくても火、水、風が使えるはずだが?」
「覚えたことには覚えているが……普通に使えないんだよな……口で説明するよりその目で見た方がいい――外に出よう」
そう言って外に出ると――ソウタは空を見上げて右手の拳に魔力を込める――。
「――――フレイムナックル!」
拳を振るい、炎の剛球を空に放した――。
…………明らかに違うな……身体を使って発動させる系か?
しかも無詠唱です……。
「これが俺の魔法の使い方だ、ほかには――――トルネード!」
ソウタは両手剣を持って横に振るうと――竜巻を起こす。
やっぱり、身体を使って発動させている。
見た感じ発動する時間が短く、敵をすぐに殲滅ができる。
悪く言えば身体限定だと、遠距離攻撃が限りがある。
ソウタは近距離、中距離型の戦術に特化してある感じだ。
「なるほどね、じゃあ剣にも属性が付けられるのか?」
「ああ、この通り――」
ソウタは剣に水を通した。これだと俺とやっていることと同じだな。
なんというか、精霊使いと言うより――。
「まるで魔法剣士だな――」
そう言うとソウタが泣き始めた…………はい!?
そんなに変なこと言ったっけ……精霊たちも泣いているのですが……。
「うぅ……やっと魔法剣士って言ってくれる人を見つけた……」
「良かったね……ソータ……」
「主……ボクも嬉しい……」
「良かったですね……ソウタ様……」
「いや……なんで泣いているんだ……」
「みんなに精霊使いと言われてるが……そんなすごい奴じゃあない……自分では魔法剣士として活動して、みんなに言っているが……それでも精霊使いと言ってくる……魔法剣士と言ってくる人が初めてで嬉しい……」
泣いて喜ぶことなのか!?
まあ、ソウタ自信譲れない何かがあると思っておくか。
俺も魔剣士だが、賢者と言われているからある意味似た者同士か。
俺の場合は隠しているけど……。
『うん、うん、男の友情は素晴らしいね~』
いや、エフィナさん、今ので男の友情も何もないのだが!
「そろそろ飯の準備をするから屋敷に戻るぞ……」
「うん……楽しみだ……」
泣いているソウタにポンっと肩を叩いて屋敷の中に入り食堂へ――。
さて、昼食を作るか――ソウタはお任せするとか言ってたが、いろいろと作りますか。
俺とアイシスと分担して作る――。
うどんにカレーライス、イクラとサーモン丼、牛丼を多く食べられるように小さい器に盛る。揚げ物に――野菜の天ぷら、トンカツ、唐揚げなど。
あとはだし巻き卵、味噌汁も忘れずに――作った。
当然ソウタは目を輝かせていた。
「召し上がれ――」
「いただきます――――美味しい……懐かしい……うぅ……自分が日本人っていうことを忘れかけていた……」
そう言って泣きながら――味を嚙み締めるかのようにゆっくりと食べる。
やっぱり故郷の飯は最高だよな、俺と同じ15年間食べられなかったのはさぞかし恋しいかったか。
それと…………精霊たちも普通に食べてる……。
ガトーショコラは喜んで食べていたが、好き嫌いないのか……。
これもソウタの影響かもしれない……。
「これがソータの故郷の食事ね! 全部美味しい!」
「主の故郷の味……おいしい……」
「これは食べたことのない味! とても美味しいです!」
まあ、喜んで食べてくれるからいいか。
ソウタは最後に味噌汁を吸い――大満足のようだ。
「レイ、アイシス……本当にありがう……感謝しきれないよ……」
「恐縮でございます」
「お粗末様でした。まあ、感謝するなら旅人と小人たちだな、それでいろいろと再現できたし」
「旅人? それに小人って……この大陸の最強の種族じゃないか!? この街にいるのか?」
ソウタは慌てて言い出す。
「それはな――」
ソウタにミツキさんの故郷と旅人を説明した。
「そんな遠いところから……その【創種】のスキルはなんだ……いろいろとおかしい……」
「まあ、今に始まったことではないからな、夕方辺りに来るから挨拶はしてくれよな」
「わかった、いろいろとあるのだったら、もうこの街に住もうかな――長く泊まるはずだったが、こんなにいいところだと住まないわけがない」
「ソータ、ここに住むの!? やった! 毎日リフィリア様に会える!」
「主……ありがとう……」
「いいですね! ありがとうございますソウタ様!」
精霊たちはソウタ様の周りを喜んで飛んでいる。
住むのかよ!? まあ、色々とあるからそうなるか……。
「宿は取ってあるのか?」
「これから取ろうとしてるが、いい宿はあるのか?」
「だったら、借家を借りるまでここに泊まっていいぞ。空き部屋もあるからそこを使ってくれ」
「いいのか!? なんか申し訳ないな……あとでお金を――」
「そんなのはいいって、飯付きだがタダでいいぞ。借家は明日領主さんに相談するからついて来いよ」
「そこまでしてくれるのか!? レイ、本当にありがとう……」
「大したことはしてないから今日はゆっくり休んでくれ。明日は忙しくなるぞ」
「ああ、わかった……」
ソウタは頭を下げて礼をする。
これも何かの縁だ――元同郷人ってことだし気も合いそうだ。
また一段と賑やかになりそうだな。
昼過ぎは一緒にお茶を飲みながらのんびりしていた。




