114話 勢揃い
庭にいたのはザインさんの腕にべったりとくっつているリリノアさん、シエルを見て驚いているオルリールさん、エミーニャに、尻尾を振って興奮しているフェンリが来た。
勢揃いですね……。
この場合だとシエルを見に来た感じか。
俺に気づいたのか、みんな手を振って近づいてくる。
「レイ、急だがみんな来たぜ!」
「立派な屋敷に住んでいるとは、やるわねレイ」
「よお、レイ、遊びに来たぞ! ブルーワイバーンを飼っているのは本当だったんだな!」
「にゃ、にゃ、にゃ!? 屋敷と平家持ち、噂で聞いた青い飛竜がいるにゃ!? やっぱりレイは只者ではないにゃ……」
「久しぶりだな、レイ! あのワイバーンは強いのか? こいつと稽古したいぜ!」
これだと今日は依頼にいけないな……予定変更だ。
「こんにちわ、みなさん。立ち話もあれですが、どうぞ屋敷に入ってください」
「邪魔するぜ!」
「お邪魔するわ!」
「わりぃな、お邪魔するぞ!」
「お邪魔しますにゃ!」
「そんなことより稽古しようぜ!」
1人違うことを言っているがスルーする。
みんなを客間に案内をして、アイシスがお茶を出してくれた。
久々に会うものだから成長した精霊を見ると大変驚いていた。
「契約もしてないで精霊はここまで成長するのか……まるで精霊使いと同じだな……」
そう言ってオルリールさんは精霊をよく見る。
この機会に前に言っていたことを聞いてみるか。
「そういえば、精霊使いはどんな人でした? いろいろと気になります」
「そうだな……かなりお人好しで気さくなやつだったな。契約してる以外の精霊を探しているとか言っていたな」
探している? 仲間を増やしたいのか?
いや、待てよ、契約って重複できるのか?
エフィナに聞いてみると。
『重複契約は可能性だけど、相当な魔力が必要だよ。次に契約するには今のレイくらいの魔力は必要かな』
やっぱりそれくらい必要だよな。
「私の仲間……」
精霊が不安な表情になっている……。
同族に会いたいのかな?
「会いたいか?」
「うん、故郷を出てほかのみんなに会っていないから会いたい……」
ですよね……。
そう言われても精霊使いの手がかりがわからないからな……。
「だったらそいつがまた王都に来たら、レイのところに来させるよう呼ぶか? 精霊と一緒にいると聞いたら喜んで来るかもしれないしな」
「いいのですか!? 俺としては願ってもないことです!」
「ああ、期待して待っていろよ!」
「ありがとございます! 良かったな精霊、仲間に会えそうだぞ!」
「うん! ありがとう、王都のギルドマスター!」
精霊は大喜びでオルリールさんの周りを回る。
「ハハハ、まあ、気長に待てよ!」
「うん! いつでも待っている!」
最近精霊が元気なかったのは仲間に会いたかったことなのかな。
とりあえず一安心した。
「精霊使いか……あいつと稽古したかったな……」
全くブレていないな……フェンリは……強い相手だと誰でもいいのか……。
「断られたのか?」
「本人はいいみたいだったが、なぜか精霊たちがやめろと言ってきて、できなかったぜ……」
…………はい? 今精霊たちって言わなかったか?
「精霊たち? 複数いるのか?」
「ああ、言い忘れたが、精霊使いは3体契約して連れているぞ」
ちょっと待て!? 3体も重複契約しているのか!?
『あ~もし3体と契約していたらその人あれだね……レイ以上の魔力を持っているね……』
マジかよ……精霊使いっていったい何者なんだ……。
「その人のランクはいくつですか?」
「レイと同じミスリルカードだからランクはないぞ。強さはSランク以上だがな」
ミスリルでSランクの強さか……まあ、会ってから確認しよう。
そして気になるのが……俺たちの話を聞かずに、リリノアさんがザインさんと周りを気にせずイチャイチャしていることだ……。
ザインさんはまんざらでもない感じだが……もうできていますね……。
あれ、スールさん放置ですか……確かザインさんが処分として商都のギルドで面倒見ていたはずじゃあ……。
「あの……スールさんはどうしたのですか?」
「あの変人変態はギルドのみんなに任せてきたわ。もう疲れちゃった……ちょうどレイが稀種を飼っていると聞いて、オルリールたちと一緒に来たのよ。本当に助かったわ、稀種の偵察と言ってみんなが納得して変人変態の面倒を見てくれているから、当分休めてレイに感謝しているわ。こうしてザインちゃんと一緒になれて幸せ……」
そう言いながらザインさんの肩辺りに顔をベッタリくっつける……。
いつものリリノアさんですね……。
ただ単に休みたかっただけか……。
「リリノア……そろそろやめてくれないか……」
ザインさんはさすがに度を越えたのか、恥ずかしいみたいだ。
「いやよ、1週間滞在するけど、あまりに短いから離れないわよ」
1週間もいるのか……よく休みを……いや、偵察だからそのくらいはもらえるか。
「せめてギルドではやめてくれ……みんなにからかわれる……」
「いやよ、みんなにザインちゃんと愛し合っている姿を見せることができて、好都合だからやめないわよ」
「はぁ……」
結構な重いため息をついた。
もうリリノアさんの性格上無理ですな、諦めて早く結婚してください。
「オルリールさんたちはどのくらい滞在するのですか?」
「俺たちも1週間いるぞ、せっかくのカルムだ。ブルーワイバーンがおとなしいとわかれば、あとはゆっくりするだけだからな」
オルリールさんも偵察という名の休みですか。
日頃大変だから息抜きは大事ですね。
「そうだにゃ! 最近忙しくて働きっぱなしだにゃ! 私も休暇が欲しくてボスについて来たにゃ!」
だからついて来たのか……うん、便乗ですね……。
じゃあ、フェンリは――。
「オレはレイとメイドのねーちゃんと稽古しに来たぜ! だからこのあとやろうぜ!」
関係なかった……ただの戦闘狂でしたね……。
この機会に稽古するのもいいか。
すると、フランカが客室に来た。
「賑やかだと思ったらダンナの知り合いかな? 邪魔して悪いな」
フェンリがフランカを見ると――耳と尻尾をピンと立つ。
このパターンは……。
「ドワーフのねーちゃん強そうだな、オレと稽古しようぜ!」
そう来ると思いました……。
今フランカは鍛冶をしてやる暇もないはず。
「えっ? まあ、いいぜ、暇もできたし相手になるぜ」
いいのか……タイミングがいいですね。
「よし、決まりだな。ところでドワーフのねーちゃんは誰?」
アイシスと同じだな……。
オルリールさんは呆れた様子だ。
「お前な……屋敷に行く前にザインが言ってただろう……」
その後、フランカはみんなに挨拶をして外の出てフェンリと稽古に行く。
俺も外に出ようとすると――。
「レイ、ワタシとザインちゃんを置いてくつもりなの? ちゃんともてなしなさい」
「すまないレイ……リリノアの言うことを聞いてくれ……」
これは長居するつもりだな……。
わかりましたよ、しっかりもてなしますよ……。
みんなにお菓子を出して思う存分もてなしました。




