109話 大丈夫だろうか……
――6日後。
帰り道は相変わらず魔物が多すぎる……。
街から中間距離辺りの平地にキングバッファローが数十頭の群れが走っている……。
――――ドドドドドドドドド――――。
「「「モオオオォォォ――――!」」」
これ……放っておくと大変なことになるな……。
群れで行動するとかまだ繫殖の時期は早い気がする……。
あと2ヶ月以上はあるぞ……。
「まさか帰りに大量な素材がいるとかツイてるぜ!」
「わ~い、おいしいお肉がいっぱいいる!」
「美味の肉じゃ!」
真っ先にフランカ、ミツキさん、シエルはキングバッファローの方に向かい――倒す。
「「「モォォ…………」」」
見事な連携っぷりで時間もかけずに仕留めた。
「半分に分けましょう!」
狩った12頭をもらい、無限収納に入れた――これはシエルの食事として助かる。
その後は、街に近づくにつれ魔物の数も減ってきた。
長い旅が終わる。
『ここは寒いのぉ……』
温暖の気候で暮らしていたシエルにとっては寒いみたいだ。
まあ、ここの場所は四季があるからもう少し待ってほしいところだ。
「寒いの嫌いか?」
『いや、大丈夫じゃ、少し身体の熱を増やせば問題ない』
体温調整できるのか……問題なかったようです。
休憩を取り――あと1時間くらいで着きそうだ。
「レイ、そろそろ街に着くが、シエルをどう説明するのだ? 話を聞かないで攻撃する奴も出てくるぞ、特にスールとか」
「そうですわ、街中が大騒ぎになりますわよ。悪い噂が広まっては大変なことになりますわ……特にあの変態には気をつけてください」
ウィロウさんとグラシアさんの発言で、シエル以外頷く……すでにスールさんは問題児されている……。
『やっぱり残念変態エルフは注意が必要だね』
『ところでお主たちが言っている、そやつは危険なのかのぉ?』
シエルは首を傾げて聞いてくる。
「話せば長くなるけどいい?」
「構わんよ」
精霊がスールさんの日頃のストレスを吐き出すかのように話す――。
主に俺とアイシスがゴーレム討伐のとき――留守にしていたことを話した。
リンナさんの仕事を手伝っているとき、遠くにいたが、何かと興奮して精霊を見ていたこと、我慢できずに鼻息を荒くして不気味な顔して1日中追いかけたり、しつこいあまり隠れようとするが【魔力感知】ですぐに見つけられて逃げ場を失った途端に急に全裸になって自分の身体を自慢すること……。
最後の方、明らかにおかしいだろう!?
なんで全裸になる必要がある!?
訳がわからない……変態よりド変態だろう……。
しかし精霊もトラウマだったことをよく話せましたね……。
それを聞いたシエルは……号泣している……。
『うぅ……精霊よ……そんなに酷いことをされていたのかのぉ……破廉恥にも限度がある……虐待じゃ……』
「だからシエルは残念変態エルフには関わらないでね」
「そのエルフ……妾の炎で灰にしても良いかのぉ?」
「うん、いいよ!」
精霊は笑顔で返した――恐ろしいこと考えてますね……そうしたら街中が大火災になる……。
『街中で火を吐いたらレイが責任を取らないといけないからダメだよ』
意外にエフィナはまともなことを言うな。
『けど、迷惑にならないように残念変態エルフが街の外に出たなら好きに吐いてもいいよ!』
そっちの方か……いつも通りでした……。
まあ、冗談で言っているとは思うけど。
休憩を終え――街に向かう。
昼過ぎ辺り街に帰宅した――とりあえずシエルは人がいないところで待機するように言って、まずはギルドに行く。
中に入ると――周りは賑わっていた。
「レイたちが帰ってきたぞ!」
ギルドの人が声を上げてみんな集まって来る。
「どうだ、見つかったか?」
「長旅だったね、どうだった?」
「おかえり、お土産はあるか?」
「すみませんが、ザインさんに報告があるので、あとにしてください」
「俺がどうしたって?」
「おかえりなさい、みんな、長旅お疲れ様」
ザインさんとリンナさんがちょうどホールにいて気づいて来た。
「ただいま戻りました。あの……相談したいことがあるのですが……」
「どうした? ハチミツが見つからなかったのか?」
「いえ、大収穫でしたよ。これはお土産です。みんなで分けてください」
無限収納から瓶に入っているハチミツを5個渡す。
「こんなにか!? ありがとよ!」
「本当に見つかったのね! ありがとう!」
みんな拳を上げて喜んでいます。
「それで、相談とはなんだ?」
「実はですね……魔物に好かれて……連れてきたのですが……」
それを言うとみんな静かになった……。
「魔物だと!? 好かれるってどういうことだ……」
「簡単に言えば……助けて、餌付けしたらついてきました……」
「助けたのかよ!? …………レイのことだから意味があって助けたのか?」
「はい、街の外で待機してますので見た方が早いです」
「わかった……そこに連れってくれ」
話が早くて助かる。
「面白そうね! 私も行く!」
リンナさんも来るのか……まあ、問題はないけど。
「俺も見たいぜ!」
「レイについて来るなんて可愛い魔物かしら?」
「俺も行くぜ!」
……みんなついて来るのかよ!?
警戒を解いてくれるならいいか……。
結局、ギルドを出てみんなでシエルが待機しているとこに向かう。
街に出ようとすると、門番の人がどうしたのか聞いてくる。
ザインさんが説明して――慌ててミランドさんに報告しに行った……。
あっ……タイミングが悪いな……。
不安しかない……。
街道を逸れて小さな森の中に行く――。
ザインさんはシエルの気配に気づいた――スキル【直感】が働いたみたいだ。
「おいおい……ワイバーンかよ……」
「ワイバーンと言えばワイバーンですが……少し違いますけど……」
「少し違う……まさか異常種のブラックワイバーンなのか!?」
「それも違います……見ればわかります……」
奥に進み――みんなシエルの姿を見たら大変驚いていた。
「まさか……稀種のブルーワイバーンかよ!?」
ザインさんはブルーワイバーンの存在を知っているみたいだ。
『主よ、妾は入れるのか?』
「「「しゃべった!?」」」
再びみんなが驚いた。
精霊の時と同じ反応ですな……。
「噓だろう……魔物が話すなんて聞いたことがないぞ……」
「私もこの光景があり得ないわ……」
普通はそうですよね……。
「しかし、どうやって見つけたのか、もう少し説明してくれ」
みんなに出会った経緯を詳しく話した――。
「なるほど……ウィロウとグラシアも本当のことなのか?」
「ああ、言っていることは本当だよ。レイが噓なんてつくわけないだろう」
「そうですわよ。わたくしたちと旅をしていましたし、問題ありませんわ」
「なら本当か……」
ザインさんは納得はしたようだ。
「危害を加えることは一切ないので、ミランドさんに街に入れるように許可をお願いしたいです……」
「ミランドにか……今回に関してはなんとも言えないな……別に俺は構わないけど」
やっぱり厳しいか……当分シエルは外で暮らす感じになりそうだな。
「会話もできるから街に入っても問題ないと思うわ。こんな可愛い子、外で飼うのは可哀想よ」
えっ、今リンナさんが可愛いって言わなかったか……。
ドラゴンを討伐した人から見れば可愛い方か……。
それを聞いたシエルは顔を赤くなって尻尾を振っている。
嬉しいみたいですな。
「危なくないならいいと思うぜ!」
「おとなしそうだから私は賛成」
「今誰も襲われていないし別に問題ないと思うよ」
意外にみんな賛成で助かる。
「お前ら、まだいいとは決まってないのだぞ!」
シエルはザインさんをウルウルと見つめてきた……。
「ギルド長、女の子を泣かすんじゃないわよ」
「雌なのか!? …………はぁ~しょうがない……今日中にミランドに話すからそのあとでいいか?」
「ありがとうございます」
「飼うことならそれなりの責任があるけどいいか? 嬢ちゃんたちもそうだぞ」
「大丈夫です」
「問題ありません」
「問題はないぜ」
「まあ、嬢ちゃんたちもいるから心配ないか、とりあえずブルーワイバーンは城門前で待機な」
アイシスとフランカがいれば問題ないのか……。
賢者の弟子の名目は凄いですね……。
「良かったね、シエル!」
「良かったですね!」
『嬉しいのぉ……これで寂しい想いはしないのじゃ……』
精霊はシエルの喜んで周りを回り――ミツキさんは飛び跳ねている。
シエルはボタボタと涙を流して大号泣している。
意外に涙もろいのかな。
「ま、まだだぞ! 街に戻るぞ!」
こうしてシエルも加わり――城門前へ移動する。




