106話 後半 村の危機
駆けつけると――村の中心で騎士と村人が武器を持って盗賊と戦っている。
怪我を負い、倒れ込んでいる人もいた。
「うひゃひゃ、弱っちいな!」
盗賊の攻撃にみんな押されている……。
なんだコイツら……魔力の質が悪すぎる……。
それに盗賊を見ると――肩、腕、手とバラバラに禍々しい魔石? みたいのが付いている……。
『まさか盗賊は魔石みたいのを使って強制的に強くなっているかもしれない……』
強制って……そんなことしたら後遺症が残るはずだ……。
コイツらバカなのか……。
そんなことはどうでもいい、奴らを止める。
「――アイスバインド!」
「ギャアァ!? 冷たくて動けね……」
氷魔法を使い――周りにいる盗賊を氷で下半身を拘束した。
「今だ! かかれ!」
「「「ウオォォォォ――――!」」」
「「「ギャアァァ!?」」」
騎士と村人が一斉に盗賊に切りかかり――倒れていく。
ネクスさんがこっちに向かってくる。
「加勢ありがとうございます! もうダメかと思いました……」
「ほかはどんな状況ですか?」
「お願いがあります! 先輩が頭らしき人物と戦っています……助けてください!」
ネクスさんは拳をグッと力を入れて言う。
そいつがいろいろと知っているな。
話が通じる相手ではないが、あぶり出してみせる。
「わかりました。ではそっちに向かいますね」
「よろしくお願いします!」
ネクスさんは頭を下げる――上司の思いのいい部下だ。
「わたくしは怪我人の治療をいたしますのでここに残りますわ」
グラシアさんはこの場に残り――俺たちは行こうとすると、さっき倒れた盗賊が起き上がってきた。
「へへへ……イテーじゃあねぇか……」
「噓だろう……化け物だ……」
ネクスさんは震えながら言う。
切った箇所も再生している。
あの魔石の仕業か――さっきより禍々しい……。
「めんどくさい相手だな――フレイムバレット!」
「ギャアァァ!? あちぃ!」
フランカは魔法で炎の弾を放ち――盗賊に直撃して丸焦げになった。
「また再生するかもしれないから、アタイもここに残るぜ!」
「ああ、頼むよ」
「任せろ!」
その場を後にして、大きい反応の方に向かう――。
途中の盗賊は氷魔法「アイスショック」で全身凍らせて、ほかの人に任せる。
入り口付近でオーウェンさんが鉄の鎚を持った大柄の男と戦っている。
ほかの盗賊より額の方に、禍々しい大きな魔石を付けている。
アイツがリーダーってことか。
「俺はオーウェンさんのとこに行きます。周りの方をお願いします!」
「承知しました」
「わかりました!」
「レイ、絶対に無茶はするなよ!」
アイシス、ミツキさん、ウィロウさんに任せる。
また、ほかの盗賊が立ち塞がる。
「うへへ、お頭が遊んでいるから邪魔はさせないぜ!」
「俺たちと遊ぼうぜ~」
「ムヒヒ、奴隷にしてやる」
こいつらに構っている暇なんてない……。
「――アイスショック!」
強めに全身を凍らせた――もう息の根はないだろう。
オーウェンさんに近づくと――大柄のスキンヘッド男に蹴りをくらい吹っ飛ばされる。
「――――グアァァ!?」
頭に血を流し――息が荒い。
「オーウェンさん、大丈夫ですか!? ――ハイヒール!」
治癒魔法を使い――傷を完治させた。
なんとか間に合ったようだ。
「レイ殿……ありがとうございます……相手は強すぎです……」
「もう大丈夫ですよ。ここは俺に任せてください」
「しかし……増援を……」
「まあ、なんとかなりますよ」
オーウェンさんから離れ――男に近づく。
「へっ、まさかここに騎士がいると思わなかったぜ。だけどいい玩具で楽しかったぜ」
人を玩具扱いとかいい御身分だな……。
「お前が頭か?」
「ああ、そうだぞ小僧、泣く子も黙るドセグノ様だ! まあ、この大陸にでは知らないと思うけどな」
「ズイールか?」
「そうだ」
「なぜこの辺境を知っている……」
「あの方の情報で妖精がいると聞いて遥々ここに来た――妖精が手に入れば金ががっぱりもらえるからな」
あの方? そいつが黒幕か?
「そいつは誰なんだ?」
「教えるわけないだろう。立ち話がすぎたな小僧、お前もあの騎士と同じに遊んでやる――」
ドセグノは俺に鎚を振ってくる――遅い、横に躱す。
鎚は地面に叩きつけられ――えぐられる。
「ほう……少しはやるようだな……」
「じゃあ、俺も遊んでやるから期待外れになるなよ」
コイツは王都に連行しないといけない――死なない程度に加減しないとな。
【武器創造】で金の剣を創造して――右手に持つ。
鎚を持っている腕を狙い――下から切り上げる――。
「――――豪刃!」
「――――ぐっ!?」
腕を切り落とし――地面落ちる。
どうもおかしい……普通だとあまりの痛さに叫ぶのに……笑っている……。
「フハハハハハ! この程度か小僧!」
片方の腕で殴ってくる――避けて後ろに下がる。
すると額に付いている魔石が黒く光――男の腕が再生していく……。
「ば、化け物だ……」
オーウェンさんは声を震えて言う。
「どうだ驚いたか? これがあの方からもらった聖石の力だ! どんなに強い相手がいようが俺様は不死さ、ハハハハハ!」
聖石? 邪石の間違いだろう。
『外道だコイツ……人をやめているよ……』
エフィナは怒っている。
触れてはいけない物に触れてしまったか。
「だったら石を壊すまでだ」
石さえなければ只の弱者だ――ドセグノは再び鎚を持ち振ってくる――。
鎚を剣で受け流し――石を狙う――。
「――――刺剣!」
硬い……予想以上だな。
「ハハハハハ! そんななまらな剣じゃあ聖石は破壊できないぞ――!」
再び鎚を振ってくる――躱すことができないから剣で受け止めて――その衝撃で後ろに下がる。
「へへへ、そろそろ子分らが妖精を引っ張ってくるはずだ」
「何言ってるんだ? この状況で見てわからないのか?」
俺たちが来て明らかに不利な状況になっているがバカなのか……。
「甘いな! 裏から遅れて来る子分がいるから【魔力感知】があろうともお前たちは罠にひかかったってことだ!」
「それだけか?」
「へ?」
すると、空から丸焦げされた盗賊がボトボトと落ちてくる。
ドセグノは焦った様子で盗賊に近づく。
「お、お前たち――どうしたんだ!?」
「お、お頭、見たことないワイバーンと……小さい妖精に……やられた……もう聖石の力でも回復ができない……」
『マスター! 変なのが後ろから来たからシエルとやっつけたよ!』
精霊から念話が来た。
『ああ、助かるよ、引き続き頼むよ』
『うん!』
報告してきて偉いな、精霊とシエルが妖精を守ってくれてるから、こんな愚か者に負けるはずがない。
「よ、よくも……俺様の計画を踏みにじったな! 殺してやる!」
何勝手にキレているんだ。
ドセグノの石はまた黒く光――男の身体が変化する。
「コろス…………コろシてヤル……」
オーガくらいの大きさになり、よだれを垂らしながら息が荒くこっちを睨んでいる。
醜い姿だ……救いようがない。
『レイ……コイツの石は魔剣でしか壊すことができないよ』
『ああ、わかっている……あんなクズに魔剣を使う価値もない』
『だけど……』
『大丈夫心配するな、多少魔力を使うだけだから』
金の剣を解除して炎魔法を使う――。
「――――炎刀・焔」
青と赤に燃える豪炎の刀を創り――左手に持つ。
「ユるセナい――――!」
醜い男は鎚を投げてくる――後ろにオーウェンさんがいるから危ない――刀を納めた鞘で防ぐ――。
「フせガれタ……」
お返しだ――まずは腕から――。
「――――抜刀・蒼炎刃!」
「――――イデェ!? アぢぃイィィィ!?」
右手で刀を抜き――蒼炎を纏う刃で腕を下から切り落とす――。
「カ、カイふクしナイ……」
痛いのか切った箇所を片腕で抑えている――回復もしないってことは、石の力を使いすぎたなようだな。
もう片方の腕も同じ技で切り落とす――。
「イデェェェェェ――――!? ユるしテくださイ……ナんデモしまス……」
いまさら何を言っているんだ――こいつに情けをかける筋合いはない。
終わりだ――刀を鞘に納め、石目掛けて再び刀を抜く――。
「――――抜刀・蒼炎一閃!」
「アジィ――!? イしがクダげタ……」
石を真っ二つにし――地面に落ちた。
落ちた瞬間――石は黒い灰になり跡形もなく消えた……。
調べさせないように証拠隠蔽まで徹底しているな。
まあ、いい……こいつに聞けば問題ないか。




