100話 違う生き物なのですが……
――翌日。
朝食を食べ終えて――出発する。
「じゃあ頼むよ」
『任せておくれ!』
引き続きシエルが人がいた場所まで案内をしてもらう。
一面に広がる花畑を進み――1時間が経つ。
シエルは飛んでいるのを止めて降りてきた。
『ここでよく人を見るのじゃ』
ほかの場所と違って花が少し大きく、間に道が通っている。
近くに村があるかもしれない。
魔力反応もいろいろとある。
…………近くに魔物みたいな魔力ではないな……どちらかと言うと、精霊に近い感じがする。
その反応がどんどん近づいて来た――。
フワフワと羽で飛んでくる――腰にサイドバック付けた全長1mくらいの黄色いセミロングの女性型で精霊に似た生き物だ。
…………何あれ?
『やつじゃよ、花の蜜を採っている者じゃ』
ハニーハンターではないのかよ!?
全然違う……。
『もしかしてハニーハンターかもしれない』
急にエフィナが唐突なことを言う。
『あれが!? 全然ハチに見えないぞ!?』
『ここの環境に適した姿になったのかもしれないよ』
『じゃあ、シエルと同じ稀種か?』
『う~ん、それとは違うと思う。異常種でもないな……変形種みたいかな?』
『変形種? 全然聞いたことがない……』
『今さっきボクが考えたよ。別に意味的に合っているからそれしか言いようがないね。妖精みたいな存在だと思った方がいいかもしれない』
勝手に決めていいのかよ……まあ、確かにそれしか言えないか。
ということは……まさか人と共存するのに似たような姿になったのか?
「わ~大きな精霊さんだ! 精霊さんの仲間ですか?」
ミツキさんは精霊だと思っているみたいだ。
「小人さん、私に少し似ているけどあの子はハニーハンターが姿を変えた妖精だよ」
精霊はさっきエフィナと同じことを言っている……。
「妖精なんですか!? 初めて見ました! ハニーハンターの……じゃあ、近くにハチミツがありますね!」
ミツキさん、まだ妖精と決まったわけではありませんよ……。
「これは驚いたな……私も精霊とか思ったけど、妖精なのか」
「わたくしもそう思いましたわ」
やっぱり勘違いしますよね……。
そのハニーハンターは花に近づいてバックの中から瓶を取り出し、ふたを開け――魔力を帯びた片手で透明な蜜を採り――瓶に入れていた。
中に入った蜜は少し黄色味がかかっていく。
基本ハチって口で採取して唾液と合わせてハチミツになるよな……。
まさかあのハニーハンターは自分の魔力を使ってハチミツができるのか……。
いろいろと原理がおかしいです……まあ、今に始まったことではないか……特有のスキルを持っていると解釈でもしよう……。
すると、すごい速さで来る――全長2~3m熊がハニーハンターに向かい、襲おうとする。
「ガアァァァァ――――!」
『マズいのじゃ!? あの熊、好物である蜜をやつから取ろうとするのじゃ!』
コイツはハニーベアーだな。
距離がある――魔法を使って間に合うか――。
「――――ウインドランス!」
「ガアァ!?」
精霊が魔法を使い――風の槍を放ち――ハニーベアーの頭に直撃して倒れていく。
ハニーハンターを無事に助けられた。
精霊はハニーハンターの近くに向かう。
「大丈夫? ケガはない?」
精霊が心配をするとハニーハンターは笑顔で精霊をギュッと手で握りしめて顔に当ててスリスリする。
「ちょっと待って――ベタベタする! マスター……助けて……」
助けて好れています……。
言っても離れてくれないから気が済むまでさせておくか……。
ハニーハンターは満足したのか精霊を離すと――蜜がベタベタと全身についている……。
「うぅ……匂いはいいけど……ベタベタ……」
「水を出すから……」
水魔法で水の球体を創り精霊を洗う。
「ありがとう……」
心なしか精霊は艶が出て綺麗になった感じがする……。
ハニーハンターはシエルを見ると笑顔で周りを飛んでいる。
「何かやったのか?」
『いや、こやつに感謝されることはしてないのじゃ、いつも来るとこんな感じよ』
というわりには懐かれているけど……。
「あの、妖精さん! 人がいる場所はわかりますか? よろしければ教えてください!」
ミツキさんが大きな声で言うとハニーハンターは頷いて再び精霊を手で持ち――案内をしてくれるみたいだ。
知っているってことは一緒に暮らしてるのでいいのかな?
「またべたつく!? ま、マスター……」
「我慢してくれ……後でまた流すから……」
「うぅ……」
案内が終わるまで我慢してほしい……。
ハニーハンターと一緒に花畑の間の道を通っていく。
案内してくれるハニーハンターは言葉は理解しているけどしゃべれないみたいだ。
前の精霊と同じだな。
気になることが――このハニーハンターしか見かけていない。
あと遠くだが、魔物反応が多いことだ。
危ないことをしてまで蜜を採りに行ってたのか……命懸けだな……。
何かありそうだ。
「シエルは人が見えてきたら、遠くで待機してくれ」
シエルには悪いが、そうしないと面倒事が起きるから、その回避で待機してもらう。
『承知した。妾が現れると驚いて腰を抜かすからのぉ』
シエルも理解しているみたいだ、話が早くて助かる。
それを聞いたハニーハンターはシエルに近づき首を振るう。
『なんじゃ、お主不満でもあるのか?』
あまりいい顔をしないで頷いてた。
「多分だけど、シエルも一緒に来てほしいのかもしれない」
精霊がそう言うと、笑顔で頷いた。
『妾が? しかしのぉ……』
ハニーハンターは目をウルウルしながら見つめてシエルは困った様子だ。
『主よ……どうすればいいのじゃ……』
と言われても……あっ、そういえばシエルはここでは人に拝まれて神聖な存在だったはず。
まさかハニーハンターもシエルを神聖な存在と認識しているのか。
…………一緒に来ても大丈夫か。
「じゃあシエルも一緒に来るようにしてくれ、俺が責任を取る」
『ふむ……主が言うのならわかったのぉ』
そう決まると、ハニーハンターは笑顔で喜んでいた。
「私もシエルさんが危なくなったら守ります!」
ミツキさん……優しいですね。
歩くこと1時間が経過した。
遠くに丸太で作った柵が見える――村だとわかった。
「あそこに人がいるの?」
精霊が聞くと笑顔で頷く――確定ですな。
「あそこにハチミツが……大量にある……」
「あそこにハチミツ酒がある……楽しみだ……」
アイシスさん、フランカさん……なぜか魔力が漏れていますよ……。
待ちきれないのか……。
「わ~い! 村だ! ハチミツをいっぱい仕入れるぞ!」
ミツキさんも燃えてますね。
村に近づくと入り口前で人がソワソワして――ハニーハンターも、その上に飛んで不安な顔している。
それにあの鎧……王国騎士がいる……住民を説得しているみたいだ。
なぜ騎士がこんな辺境にいるんだ?