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討伐

翌日から勇者パーティは分かれて活動することになった。

勇者様と戦士様は日に日に数を増やしつつある魔獣の討伐へ。聖女様は後方で負傷者の治療に当たる。


賢者様と魔術師様と私は冒険者ギルド側に組み込まれている。

今回の根源を調査して本格的な大量発生に至る前に芽を摘み取ることが目的だ。

出発前に冒険者ギルドの副代表に頭をなでられる。

「お前は昔からやたらと勘のいい子だったからなぁ。今回も期待してるぞ」

そんなことでいいのかなぁ?

副代表が言うには魔素が濃いあたりに高位の魔物が存在し、そこが発生源である可能性が高いという。

「10年前はそうだった。だが、今回も同じとは限らないがな」


調査初日は何の成果もなく夜を迎えた。

夜中にハッと目が覚めると、聖女様が心配そうな顔をしてのぞき込んでいた。

「大丈夫?ひどくうなされていたけれど」

「夢を・・・見てました」

今までは目が覚めると夢の内容は忘れていたのに、今回はまるで現実にあった出来事みたいにはっきりと覚えてる。だけど内容を思い出したくもないようなひどい夢。

「こちらへいらっしゃい」

聖女様に抱きしめられて眠る。

だが、翌日以降も同じ悪夢が私を悩ませることとなった。


数日は何の成果もないままだったが、5日目になって変化が表れた。

「こっちです」

私が先導して進む。まるで何かに導かれるかのように。

賢者様と魔術師様は魔素酔いの症状が出て途中で離脱し、冒険者ギルドの精鋭達と進む。

「同じ魔力持ちでも繊細だとああなるんだろうなぁ」

「おいおい、それじゃ俺達が繊細じゃないとでも?」

背後の冒険者達の軽口を聞きながらひたすら進む。


どれくらい進んだだろうか。禍々しい気配の先に魔物はいた。

最初に見た時はなんとも説明のしようがないような形状だったはずなのに、一瞬でその姿を変えた。


そして私は気づく。いつもの悪夢とまったく同じ状況であることに。

その姿も、ささやくように聞こえる声も。

しばらくは誰も動かなかったが、冒険者の1人がふらふらと魔物の方へと進んでいく。

行かせちゃダメだ!

そう思った私は意を決して剣を抜いて切りかかっていった。



その後のことは、ほとんど覚えていない。

ただ、ここまで苦戦したのは初めてだと感じたことだけはうっすら記憶に残っている。

ぼんやりと目を開けると、冒険者ギルドの副代表に抱きかかえられて移動しているようだった。

「気がついたか?もう少しで聖女様のところに着くからしっかりしろよ」

どうやら怪我をしているようだけど、全身が痛くてよくわからない。

「・・・あの魔物は?」

「ああ、お前のおかげで倒せた。だから頼むからあともう少し耐えてくれ」

返事も出来ずに私は再び眼を閉じた。

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「魔王さんちの勇者メイド」連載始めました
魔王と記憶をなくした勇者の少女の物語

「名前のない物語」シリーズ
人名地名が出てこないあっさり風味の短編集
― 新着の感想 ―
[一言] カテゴリー【恋愛】なので、討伐部分はサクッと。(実際にはそれなりの奮闘とか苦難とかがあったのでしょうね)
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