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深夜

宰相閣下が戻られる時間は聞いておいたので、改めて報告に行く。

今回も後輩の女の子は連れて行かない。隠し通路の補修が必要な箇所の報告も兼ねているためだ。


一通り説明すると宰相閣下は感心したように言った。

「君は絵が上手いな」

「それ、女官長様にも言われました」

「このまま王宮の補修担当に渡せそうだな」

あ、隠し通路の方?・・・まぁ、いいですけど。

「暗いですけど目印に白い布切れも置いてきましたから、探しやすいと思いますよ」

「それは助かる。ありがとう」

そう言いながら隠し通路についての資料を大きな茶色い封筒に収めた。


「それで、幽霊騒動の方はどうする?」

「お姉様・・・じゃなかった聖女様に相談しようと考えてます」

「それがいいだろう・・・ああ、もし大神殿に行くのなら、君の後輩の子も連れて行ってみてはどうだろうか?」

宰相閣下が予想外のことを言い出した。

「先方さえよければかまいませんが・・・でも、どうしてですか?」

「聖女殿は通常は自由に外に出られる立場ではないから、たまには君以外の者と話すのもよいかと思ってな」

じっと宰相閣下を見つめる。なんとなくこれは裏に何かあると感じたから。

「それだけじゃ、ないですよね?」

ため息をつく宰相閣下。

「君は察しがよすぎるな。彼女は幽霊の声が聞こえるという点が少々気になった。私が知る範囲ではそのような事例は記憶にない。だが聖女殿なら何かわかるかもしれないと思ってな」

「それは真贋の判別も含めて、ですよね?」

「・・・ああ、そうだ」

確かに証明できる方法などないのだから、そう思われるのもある程度は予想はしていた。

「わかりましたが、私と彼女は休みがかぶらないように予定を組んであるので、一緒に行けるとしたら夜くらいしかないですよ?」

「そうだな、大神殿の方には私から連絡を入れておこう。日時が決まり次第、連絡する」

「はい」

私はうなずいた。



その日の深夜。

私は1人で図書館へ向かう。この時間なら施錠されているが、隠し通路を使えば侵入できる。出入りに使うのが掃除用具置き場というのがちょっと難点だけど。

侵入するとさっそくご登場。やっぱり美人さんだ。

「ごめんね、今日は貴女の声を聞ける後輩は連れて来れなかったんだ。だから簡単に答えられる問いかけにするけど、いいかな?」

小さくうなずく。

「貴女は家族のもとに行きたいんだよね?」

うなずく。

「それは天の国ということで合ってる?」

それにもうなずく。天の国というのは死者が行くとされている場所だ。

「正直なところ私達だけじゃどうにもできそうにないから、協力できそうな人に相談してみようと思ってる。その人でもうまくいくかどうかわからないんだけど。また動きがあれば報告しに来るからね」

彼女は指を組んで祈りのポーズをとった。え~と、これはたぶん『よろしくお願いします』ってことでいいんだよね?


帰る前にふと考える。

「あのさ、ずっとここで1人だったんでしょ?」

小さくうなずく。

「見た感じ年も近いみたいだからさ、私達と友達にならない?本来なら身分とか全然違うんだろうけど、ここで会ったのも何かの縁だから・・・どうかな?」

少し驚いたような顔になったが、再び祈りのポーズをとった。これは了承ってことでいいんだよね?

「さて、そろそろ戻らないとね。次は後輩の女の子も連れてくるからね」

彼女は微笑んで小さく手を振った。明日も早いからとっとと寝ないとね。

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