表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/58

雑用係の帰省

魔王討伐の旅から戻ってきて、さて仕事再開・・・と思ったら5日間の休暇が与えられた。

旅に出たら休みがないと私がごねたのを宰相閣下はしっかり覚えていたらしい。

「代替人員の都合で5日間しか確保できず申し訳ない」

と謝られたが、報酬はちゃんと上乗せしてくれたんだから別に休みなんていいのになぁ。

どうせ体力底なしだからたいして疲れてないし、何もしないってのもなんか落ち着かないんだよね。


王宮の職員寮にいるといろんな人から勇者パーティについて根掘り葉掘り聞かれて面倒なので、せっかくの長めの休みだから故郷へ顔を出しに行くことにした。

報酬を受け取る時に宰相閣下に話したら、魔王討伐の旅で勇者パーティを追いかけるのに使った馬を貸してくれた。

うん、やっぱりいい人だ。惚れ直しちゃうね。

ま、それはさておき、馬なら朝早く出発すれば暗くなる前には到着できる。

さすがは王宮、いい馬だけあって思っていたより早く故郷の町に到着した。


まずはかつてお世話になった冒険者ギルドの支部に顔を出す。見知った顔がちらほら。

「よう!久しぶりだな」

「おかえり~」

「王宮に就職したとか聞いたけど、もう追い出されたのか~?」

まったく、みんな言いたい放題である。

しばし昔話に花を咲かせ、その日は冒険者ギルドの隣にある食堂兼宿屋で一泊。

冒険者仲間達が再会を祝っていろいろとおごってくれた。


翌日、これまた大サービスでご馳走もりだくさんな朝食をぺろりと平らげてからお花屋さんで花束を買い、町のはずれにある礼拝所へ向かう。

各地にある礼拝所は王都にある大神殿の支部にあたり、神官が常駐している。

礼拝所に入る前に裏手の墓地へ足を運ぶ。

「父さん、母さん、ただいま。久しぶりだね」

目的のお墓に花を供えて手を合わせる。

「私は元気に暮らしてるから安心してね。じゃ、また来るよ」


礼拝所に入って祈りを捧げてから隣の孤児院へ移動すると、わらわらと出てきた子供達にまとわりつかれた。

「お姉ちゃん、おかえり~!」

「王都の話を聞かせて~」

「何かおみやげあるの~?」

マジックバッグから王都で買ってきたお菓子や絵本、文具などを次々と取り出してみんなに手渡す。

報酬の一部を使ってマジックバッグを拡張しといてよかったなぁ。

そんな様子を神官様がニコニコと見守っていた。

みんなと遊んでから昼食も一緒にとり、子供達のお昼寝タイムを利用して神官様と久しぶりに話す。

神官様は両親を亡くしてからの私にとって親代わりのような人だ。

今夜も宿屋に泊まって明日の朝早く王都へ戻るつもりであることを話したら、このまま孤児院に泊まることを勧められた。

「子供達も喜びますし、何よりここは貴女の家でもあるのですから」

素直にお言葉に甘えることにした。


いったん宿屋に戻ってオーナー夫妻に挨拶をして馬と荷物を引き上げる。

そして孤児院に戻る前に少し寄り道。

町のはずれの小高い丘からは町が一望できる。私の一番好きな場所。

王都と比べたら本当に何もないけど、今でもこの町は大好きだ。

だけど、ある時から急に「王都に行かなきゃ!」というわけのわからない衝動に駆られ、町を飛び出した。

今にして思えば、背中の勇者の紋はその頃に出現していたのかもしれない。

でも、勇者であろうとなかろうと私は私だ。きっとこれからも思うままに生きていく。

「さてと、孤児院のみんなにイケメン勇者様が魔王を倒したお話でも聞かせてあげるとしますかね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「魔王さんちの勇者メイド」連載始めました
魔王と記憶をなくした勇者の少女の物語

「名前のない物語」シリーズ
人名地名が出てこないあっさり風味の短編集
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ