情報収集
翌日は女官長様の執務室を訪ねた。
宰相閣下の執務室と部屋の大きさや作りはほぼ同じだと思うのだが、壁紙が違うだけでずいぶんと明るい雰囲気になるようだ。
「お待ちしていましたわ、かわいらしいお客様方。さぁ、お掛けになって」
とてもにこやかな女官長様。後輩の女の子がかわいいのは認めるけど、私は違うだろうになぁ。
残念ながらあまり時間もないので早々に本題に入る。
「みんな、まず『誰もいないはずなのに気配を感じる』と言っているわね。特に嫌な感じがするというわけではないようだけれど。白っぽい人影は日中にも現れるようで、夜だけというわけではないみたい」
印がいくつもつけられた見取り図を出される。どうやら図書館の周辺が多いようだ。
幸い我々でも入れるエリアなので、時々うろついていてもあまり不自然にはならないだろう。
「それから1人でいた時に見たという意見が多かったわ」
「へぇ、もしかして人見知りなんでしょうかねぇ?」
「ふふふ、そうかもしれないわね。また新たな情報が入ったらお知らせするわ。そちらも何かわかったら教えてちょうだいね」
帰りにさっそく図書館のあたりをまわってみる。
「先輩・・・今のところ別に何も感じませんよね?」
後輩の女の子があたりを見回しながら言う。
「そうだね。まぁ、さすがにいきなり初日からは出てこないかもしれないから、また時々来てみようか。時間帯も変えてみたいし」
後輩の女の子がうなずいた。
「わかりました。やっぱりそう簡単にはいきませんよね」
この日の夜、またお誘いいただいたので美味しいお酒目当てに宰相閣下のお屋敷へ。
手土産に自作の王宮見取り図を見せようと持っていったら、なんか呆れられてため息までつかれた。
「本当は君はどこかの国の間諜ではないのか?」
そう言いながら睨まれる。
「え、なんでですか?ただ調べたことを図面に起こしただけなのに」
「隠し部屋と隠し通路の記載が多い。そして正確すぎる」
宰相閣下が見取り図を指でトントンと叩く。
「隠し部屋はなんとなく違和感があるのでだいたいわかりますよ。通路の方は普段から使ってますからね。暗いところも多いですけど、これ使うと移動が楽なんですよ」
「・・・他の者には絶対に見せるなよ」
「もちろんですとも」
機密情報なのは当然承知の上だが、今はほぼ独り占め状態だから混んだりするとイヤだしね。
「それから、もし補修が必要な箇所を見つけたら報告するように」
「わかりました。すでに気になるところがいくつかあるので、正確な位置と状態を後日ご報告しますね」
走りにくいと困るからねぇ。