活動開始
王宮の廊下を普通に歩いているだけなのだが、やたらと注目を浴びている私達。
近衛騎士など軍務に関わる人達は若い人も多いんだけど、文官や女官は意外と平均年齢が高めだったりする。十代前半の後輩の女の子は当然目立つことになり、かなり緊張しているようである。
「大丈夫、別に怖くないからもっとリラックスしていいよ」
ポンポンを彼女の肩を軽く叩いた。
幽霊の調査に後輩を巻き込むことにしたので宰相閣下にご挨拶に行くことにしたのだが、女の子だけ連れているのは男の子に逃げられたからだ。
『幽霊だけは勘弁してくださいっ!』
あの時の逃げ足は本当に速かったなぁ。
何があったかは知らないが、そっち系は苦手だったか。これはぜひとも先輩冒険者から聞いたさまざまな怪談話を披露したいところではあるよなぁ。
女の子の方は最初から乗ってくるのは確信していた。読書好きの彼女が読む本の系統にバッチリ合っていたからねぇ。
執務室のドアをノックして入室する。
「こちらが今回協力してもらえることになった頼れる後輩です」
隣に立つ後輩の女の子の肩にポンと手を乗せる。
「あ、あの、よろしくお願いいたします!」
彼女はぺこりとお辞儀をした。
「ああ、よろしく頼む。だが無理はしないようにな」
子供相手だと宰相閣下も普段より少し柔和な表情になるようだ。
「それからいつも美味しいお菓子をありがとうございます。あの、お菓子を作って下さる方にお礼の手紙を書いたので、もし出来ましたら渡していただきたいのですが」
彼女の小さな手が淡いオレンジ色の封筒をおずおずと差し出すと、宰相閣下は立ち上がって彼女に歩み寄り、直接受け取った。
「ああ、必ず渡すことを約束しよう。うちのメイド長もきっと喜ぶことだろう」
宰相閣下は彼女の頭を優しくなでた。
「君もこんなおかしな先輩ではいろいろと大変だろうが、仲良くがんばるように。仕事の方もしっかりとな」
「はい!」
ちょっといい雰囲気出してますけどもさ。
「なんか私の扱いがひどくないですか?!」
宰相閣下の執務室を出る。
「先輩、これからどうするんですか?」
「もうすぐ休憩時間も終わっちゃうから今日は戻るよ。宰相閣下が女官長様に話を通してくださるそうだから、明日は詳しい話を聞きに行こう。できれば実際に見た人の話も聞きたいけどねぇ」
「なるほど、まずはやっぱり聞き込みですよね!」
うん、ノリノリなようで何よりだ。