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出番

「へぇ、幽霊がいるとはさすがは歴史のある王宮ですねぇ」

「あくまで噂だがな」

いつものように焼き菓子に釣られて休憩時間に宰相閣下の執務室へ行くと、雑談でちょっとおもしろそうな話が飛び出してきた。

「女官達から白っぽい人影が視界の隅をすっと通り過ぎるのを見た、という話が女官長殿のところにいくつも上がってきているそうだ。今のところ特に実害はないようだが、気味が悪いと不安になっている者もいるようだな」


お菓子をほおばりながらピンとひらめいた。

「これってもしかして宰相閣下の手駒の出番じゃないですかね?」

「・・・は?」

コイツ何を言ってるんだ?とか思ってそうな顔の宰相閣下。

「だって、今のところどこかに正式な調査依頼を出すほどの事態でもないんですよね。でも不安に思う人がいるなら早いとこ解決した方がいいじゃないですか」

「それはそうだが、君はただ面白そうだから首をつっこみたいだけだろう?」

宰相閣下の言葉にニヤッっと笑う。

「それは否定しませんよ。でも何であれ正体ははっきりさせといた方がいいと思うんですよね。それによって対処も変わると思いますし」

実害のない幽霊とかだったら王宮のアクセサリーとでも思えばいいけど、そうでない場合が問題になりそうだからなぁ。

しばらく考えていた宰相閣下が口を開いた。

「無茶をしないと約束できるなら頼みたいが」

「承りました!」

座ったまま宰相閣下に敬礼をした。



いつものように後輩達の分まで焼き菓子をいただき、職員寮に戻ろうと立ち上がった時にふと思いついた。

「そうだ、この件に後輩達を巻き込んでもいいでしょうかね?」

「なぜだ?」

「こういうのって子供の方が勘が鋭かったりするんですよね。それに王宮内を覚えてもらうという名目ならうろついてもあまり不審に思われないのではないかと」

宰相閣下は、ほんのわずか考えたようだったが了承してくれた。

「絶対に危険な目にあわせないというのなら認めよう。だが君自身も王宮内をすべて把握しているわけではないと思うのだが?」

王宮の片隅にある職員寮の雑用係なら、そう思われるのが普通なんだろうけどね。

「これでも元冒険者ですからね。立入禁止エリアはまだですが、私が入れる範囲ならマッピングはだいたい出来てますよ」

「王宮はダンジョンではないのだがな」

あきれたような表情になる宰相閣下。

「似たようなもんじゃないですか。やたらと複雑だし、正体不明の何かがいるとか、ますますそれっぽいし」

宰相閣下はため息をついた。

「とりあえず立入禁止エリアには勝手に入らないように」

「は~い、宰相閣下の許可を得てからにしま~す」

宰相閣下に再び敬礼。

「それと君が作ったという王宮の地図も気になるので一度見せて欲しいのだが」

「いいですよ。今度お見せしますね」

焼き菓子の袋を抱えて宰相閣下の執務室を出る。

もしも本当に幽霊だとしたら剣や腕力で解決というわけにはいかないかもだけど、まずは作戦を考えるとしましょうか。

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