【幕間】手紙
「先輩、お手紙を読んでるんですか?」
休憩時間に後輩の女の子が話しかけてきた。
男の子の方は少し離れた場所で調理場の男性陣と楽しそうに雑談をしている。
「うん、故郷の孤児院の世話役をしてくださっている神官様から」
「よく手紙のやり取りをされてるんですか?」
「そうだね、お互い手紙を書くのが好きというのもあるんだろうけど」
「先輩がうらやましいです。私、お手紙を出せる相手がいなくて・・・」
少しさびしそうな表情になる後輩の女の子。
「ん~、だったら、まずは私に書いてみるというのはどうかな?ほら、普段は忙しくてあんまりゆっくり話す時間ってないじゃない?どんなことでもいいからさ」
「じゃあ、もし私がお手紙書いたらお返事くれますか?」
小首をかしげながら聞いてくる様子がなんともかわいらしい。
「もちろん!まかせといて」
「わかりました!じゃあ近いうちに必ずお手紙渡しますので待っててくださいね」
笑顔の女の子は小走りで離れていった。
その後ろ姿を見ながら、ふと彼女が手紙を出せそうな相手を思いつく。
あとでちょっと話をしてみるか。
また1人きりになったので手紙に視線を戻す。
故郷の神官様との手紙のやり取りは、以前なら近況報告が普通だったのだが、ここ最近は孤児院の増改築工事のことがほとんどだった。今回は無事完了したとの報告で、ご丁寧に詳細な内訳までついている。
私が魔王討伐パーティのサポート役として得た報酬の大半を孤児院に寄付し、その分を使っているからだと思うんだけど、寄付したんだからあとは好きに使ってくれていいのになぁ。あいかわらず生真面目な方だ。
でも、次に故郷へ戻ったらどうなってるか少し楽しみではあるけどね。
さてと、今日もいい天気だし、がんばって働いて稼ぐとしましょうかね。
次回は2020/10/10(土)夜に投稿予定です。