後輩
「先輩!こちらの方は終わったので確認お願いします」
「は~い・・・うん、いいよ。問題なし!あいかわらず作業が丁寧だし、前より早くなってるよね」
「ありがとうございます!」
王宮職員寮の雑用係に新戦力が加入した。王都内にある孤児院から男の子と女の子が1人ずつ。
仕事の指導については女の子の方は私が、男の子の方は調理場の男性が担当している。
男の子の方はどう指導しているのかよくわからないけど、女の子の方はちゃんと出来たらまず褒めることにしている。
だってまずは楽しく働いて欲しいしね。達成感は大事だ。
もし至らない点があれば指摘はするけど、きつく叱ることはしないように気をつけている。
そして自分で考えさせる。これが一番身につく方法だと私は思っている。
仕事以外での生活面などの2人の世話は一番年が近い私が請け負っている。
2人ともとっても真面目でいい子だし、私自身も孤児院で年下の子たちの面倒を見ていたりしたからそれなりに慣れているので、今のところ大きな問題は起きていない。
そういえば2人は私が故郷で冒険者になった頃と同じ年頃なんだよなぁ。
それぞれに将来の夢とか希望とかあるだろうけど、まずはここで一人前に仕事ができるようになってほしいと思う。
彼らが道を作れば他の子達が後に続くことができるし、さらに広がる可能性だってあるんだしね。
そういえば前に宰相閣下に孤児院からの採用をちらっと言ったことがあったけど、こんなに早く対応できるとは思えないから、きっと以前から考えられてたんだろうなぁ。
仕事の空き時間。
女の子の方は読書に夢中なのでそっとしておき、男の子に剣の稽古をつける。
以前、近衛騎士隊の訓練風景をのぞきに行った時、キラキラした目で見ていたので声をかけてみたのだ。
「私は先輩冒険者から習ったから実戦重視であんまり綺麗な所作とはいえないけど、それでもよければ教えようか?」
「お願いします!」
軽くいなすとムキになって向かってくる。うんうん、男の子は元気だねぇ。
やがて疲れきって地面に大の字に転がった男の子に声をかける。
「そうそう、大事なことを教えとこうか」
「なんですか?」
寝転がったまま視線をこちらに向ける。
「剣に限ったことじゃないんだけど、『まずはよく見る。そしてよく考えて、さっさと動く』。これが出来てりゃたいていのことはどうにかなると私は思ってるよ」
「・・・あの、それって仕事にも言えますよね?」
いつの間にか女の子も本を読み終えて近くまで来ていた。
「うん、その通り。あとはそれぞれ考えてみてね。さて、そろそろ休憩時間も終わるから2人とも支度してね」
「「はい!」」




