大神官長様
今日は仕事はお休みの日。
あらかじめ連絡しておいたので、大神殿で暮らす聖女様に会いに行く。
そして今日は宰相閣下の計らいにより大神官長様と話す時間もあるようだ。
勇者選定の件ならこっちは本当に気にしてないんだけどなぁ。
まずは大神殿の一般向け礼拝堂で祈りを捧げてから、あらかじめ指定された門で宰相閣下から渡された書状を見せる。
すでに話は通っていたようで、若い神官様が案内してくれる。
大きなガラス窓のある明るい部屋にはすでに聖女様が待っていた。
「こんにちは!聖女様」
「よく来てくれたわね。楽しみに待ってたのよ」
あいかわらず儚げな美女である。筋肉萌えだけど。
「申し訳ないけれど、大神官長様は来客中でもうしばらくかかるそうなの。手が空いたら呼びに来られるそうだから、それまでこちらでゆっくりしていってね」
私と聖女様はお茶を飲みながらあれこれ話す。
最近では戦士様も時々ここを訪れては話をしていくらしい。
旅では口数は少なかったけど大丈夫なのかな?・・・ま、がんばれ戦士様。
私と宰相閣下のあれこれを話したら、どうやら一番楽しんでもらえたようである。
「ふふふ、情熱的で素敵よねぇ」
ん~、私は情熱的なんだけど、宰相閣下の方はどうなのかなぁ?
しばらくすると若い神官様が呼びにきて大神官長様の部屋へ案内される。
聖女様はついてこないらしい。ちょっと不安。
国王陛下は意外にもずいぶんと気さくな方だったけど、大神官長様はきっとそうはいかないだろうしなぁ。
部屋に入ると大神官長様が立ち上がって私の方に歩み寄ってきた。
「よく来てくださいました。本来ならこちらからお伺いするべきところなのですが、いろいろと決まりごとがあってかないませんのでどうかお許しください」
握手をしてからソファーに座るよう促される。
ここまで案内してくれた若い神官様がお茶を出してから退出し、大神官長様と2人きりになる。
「まずはこの度の勇者選定にまつわる神殿の不手際、真に申し訳ありませんでした。神殿を代表してここにお詫び申し上げます」
私の前に来た大神官長様がひざまずいて頭を下げる。
「あ、あの、私は本当に全然気にしてませんから、どうか頭を上げてください!」
「・・・ありがとうございます」
大神官長様は立ち上がってくれた。
「大変申し訳ないのですが、貴女が真の勇者であることを確認するため、少しだけ頭部を触らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「はぁ、かまいませんよ」
座る私の頭を大神官長様が両手でそっと触れる。
・・・これ、なんだろ?なんだかとても温かいものが流れてきてる感じがする。
やがて手を離した大神官長様は向かい側のソファーへと戻っていった。