王宮の茶会(3)
王宮の凝った菓子にあれこれ手を出していると、腕を組んだ国王陛下と王妃様が近寄ってきた。
「楽しんでいるか?」
国王陛下が声をかけてくれた。
「はい!どれも美味しいです」
隣の王妃様もにこやかだったのだが、その後の発言が物騒だった。
「そう、それはよかったわ。
つかぬことをうかがいますけれど、貴女はどなたかお付き合いされている方はいるのかしら?いえね、うちの息子が魔王討伐の旅で一緒だった貴女のことをよく話すものだから。あの子ってば、それまで女性の話なんてこれっぽっちもしたことなかったのに」
「ちょ、ちょっと母上!何を言ってるんですか?!」
会話を耳にした勇者様こと第三王子殿下が割り込んできた。
「あら、私だって平民の出ですもの、身分なんて全然気にしませんわよ?ほら、やっぱり互いに愛し愛されが一番大切ですものねぇ」
「いや、ですから、こいつは魔王討伐の旅の仲間であって、そういうのじゃないんですよ。ただ、あまりに他の女性と違うものだからちょっと気になっていただけで」
よくわからないけど、目の前で母と息子の口げんかが始まってしまった。
でも、王家の皆様ってずいぶん家族仲がいいんだなぁ。
「で、実際のところはどうなんだ?うちの息子もそれなりに優良物件だと思うんだが」
いつのまにか私の横に来ていた国王陛下が少しニヤニヤしながら私に聞いてきた。
「いや、あの、そんなこと言われましてもですね・・・」
そうか、これが素の陛下なのか~と思いつつも対応に困って宰相閣下に視線を送るが、王宮の使用人に何か指示を出しているようで、こちらに気づいていないようだ。
さて、どうしたもんだか・・・ま、いいか。
「あの、国王陛下。宰相閣下から聞いておられますよね?」
「ん、何のことだ?」
怪訝そうな表情になる国王陛下。
「宰相閣下が求婚されたことですよ」
「・・・まさか、お前か?」
「はい。ですが残念ながら即座に受けてはいただけなくて、現在はまだお互いを知る段階なんですけどね」
にっこり笑って答えた。
国王陛下が小声で聞いてくる。
「お前、あれのどこが気に入った?」
「すべて、ですかね。もともと年上好きではあるんですが、外見は渋くて細身のインテリ系、さらに眼鏡ありと好みのど真ん中でした。宰相閣下は頭脳明晰な方ですし、私みたいなものにもちゃんと気遣いしてくださいます。さらに私を平民や女ということで見下したりせず、対等に見てくれます。それになにより宰相閣下ってなんかかわいいと思いません?」
国王陛下はしばらく黙っていたが、突然大声で笑い出した。
「わはははは!よし、わかった。俺はお前の味方になろう。何かあればいつでも相談しろ。あのくそ真面目なヤツはお前みたいなのが振り回してやるくらいがちょうどいい」
そう言いながら背中をバシバシ叩かれてちょっと痛い。
いやいや、ありがたいんですけど、国王陛下に恋愛相談はさすがにどうかと思うんですが。
こちらに気づいた宰相閣下は苦虫を噛み潰したような顔をしていたけど、もしかしたらものすごい援軍を得てしまったかも。
国王陛下は再び小さい声で話しかける。
「それから勇者選定の件だが、俺も知らなかったこととはいえ、本当にすまなかった」
「いえ、私は全然気にしておりませんので大丈夫です。ああ、でも今後また何かあれば私でよろしければいつでも使ってやってください」
「ああ、よろしく頼む。まぁ、出番などないのが一番いいんだろうがな」
国王陛下とがっちり握手をした。