王宮の茶会(1)
雑用係sideに戻ります。
王宮の茶会当日。
この日は休みをもらい、まずは宰相閣下のお屋敷に連れて行かれ、メイド長さんや他のメイドさん達によってたかって着付けやお化粧をしてもらい、髪型もどこがどうなってるかさっぱりわからないけど凝ったものにされた。
すでにこの時点でだいぶ気力を消耗しているのだが、本番はこれからなんだよなぁ・・・はぁ。
あれから何度かメイド長さんから立ち振る舞いなどの特訓を受けさせられたが、淑女というのは実に大変なものだということを身をもって知った。
はっきり言って、故郷で先輩の冒険者にしごかれた剣術や格闘技の稽古の方がよほど楽だ。
王都に出てきて、たまに見かける貴族のご令嬢達はふわふわキラキラしてるよなぁ~とか思っていたのだが、今は本気で尊敬する、うん。
馬車で王宮に到着するも、宰相閣下は主催者側とのことで、ここで一旦お別れ。
案内の近衛騎士様の後ろをトコトコついていく。
さすがは近衛騎士だけあって容姿端麗なんだけど、残念ながら渋さがまだ足りないよなぁ~などと勝手なことを思っていたら、王宮の最奥である王家のプライベートエリアまでやってきていた。
王宮に勤めていても、まず足を踏み入れることのない未知の領域だ。
綺麗な庭に面した芝生のスペースに通される。どうやら本日はガーデンパーティであるらしい。
どうにも落ち着かない感じで困っていたのだが、見知った顔を見つけて少しだけホッとして近寄った。
「今日の勇者様はいかにも王子様みたいな格好をしてるんですねぇ」
勇者様こと第三王子殿下は王族の装束に身を包んでいた。
「まったく、お前はあいかわらずだな。ちなみにこれでも略装だぞ」
「そうなんですか・・・となると、正装はものすごいことになりそうですね」
「ああ、めったに着ることはないが、正直なところ重くて大変だな」
そんな雑談をしていて、ふと大事なことに気づく。
「あの、勇者様。今さらなんですけど、王宮で王子様にこんな口の聞き方をしちゃさすがにマズいですよね・・・?」
第三王子殿下は一瞬きょとんとしたが、声を出して笑った。
「ははは。本当に今さらだな。今日はうちの家族と勇者パーティだけの非公式な催しだから、そんなことは気にするな」
いやいや、そうは言われましても、さすがに気が引けるわけで。
「そもそも今日の催しは父上が表舞台に立てなかったお前を労うために考えたと聞いている。だから今日の俺は王家の一員として、もてなす側にまわるつもりだ」
「わかりました。では第三王子殿下、本日はよろしくお願いいたします」
宰相閣下の家のメイド長さんに叩き込まれた淑女の挨拶を初めて披露した。
「こちらこそよろしく頼む・・・ああ、そうだ。
最初に言うべきだったが、今日のその格好は可愛らしくてよく似合っているぞ」
見た目を褒められたことなんてないので、どうしていいのか反応に困る。
「あ、あの、ありがとうございます」
「ああ、少なくとも魔熊を一撃で倒す女には見えないぞ」