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 医務室の方に連絡したら、案の定誰もいなかったため、カルテ作りまで自分たちでやることになった。こういう書類仕事は嫌いだ。

「なぁ。こういうのは主治医がやるもんじゃないか?」

「何言ってんの?今回のメインは斎ちゃんでしょ」

「いやだって、俺は指示に従っただけだし……」

「最初に診断したのは誰?そもそも私は、あの子の名前も知らないよ」

 そう言われてしまえば、泣き言は許されない。こうして付き添ってくれてるだけでもありがたいのだ。

「ねぇ。ホントに今日初めてだったんだよね」

「ん?あ、あぁ」

 あの時、人生で初めて輝いた魔術刻印。もう諦めかけていただけに、未だに信じられない。

「あの子達も、斎ちゃんのこと女の子だと思ってたらしいし」

「は?」

「え?」

 女の子って、俺は歴とした男……。

 …………………………。

 下を向くと、そこにはスカート。この少年。すっかり自分の格好を忘れていた。

「ちょっ……っ言えよ!」

「ゔぇっ、もしかして忘れてた?鏡見てみなよ。かなり可愛い女の子よ。私襲っちゃおうかと思ったもん」

「襲うな手をわしゃわしゃすんなあぁぁぁぁ見せないで!」

 鏡から顔を背けて現実を否定しようとする少年。側から見ると、その赤らんだ表情がとてもいい。

「あははははっ!やぁーっぱその格好似合ってるよ!これからそれで生活しなよ」

「冗談じゃねぇ!」

 怒鳴る声がいつもより高くなっていることにも笑えてきたが、それを指摘すると勿体ないと、明石少女はぐっと堪えた。

「まぁ冗談は置いといてさ」

 すっーーと、息を吸う。そして、目つきを鋭くした。

「なんでいきなり魔術が使えたのか。気になるよね」

 カターータイプ音が止まる。ゴクリと、どちらか唾を飲み込む音が聞こえた。

「ハッキリ言って、まるで分からないんだ。なんで今まで、こいつは反応しなかったのか。今でも夢だと思えるよ」

 本来、魔術刻印が刻まれるということは、その身に魔力があるということだ。魔力刻印が刻まれれば、例外無く、魔術は扱える。最低限でも、魔力を扱うことはできるようになる。

「いつもと違うことがあった?」

「まぁ、本物の患者だったってのは違うかもね」

 それじゃあ本当に、火事場の奇跡だったってことか?

「ちなみに今は使えるの?」

「えっ。試してはないけど……」

 体内の魔力を意識してみる。浄化の術式を自分の右手に転写ーー展開。

「おっ、ちゃんと出来てるね」

 閉じていた目を開けると、輝く魔術刻印と、浄化の光。明石がパチパチと手を叩く。

「良かったじゃん。これで落ちこぼれ脱却だ!」

「うるせぇ」

 悪態を吐きながらも、少年の顔には笑みが浮かんでいた。

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