外伝M3-09-01 生み出されたもの
私イザベラは、この世界に来ることで、すべての財産を失い、自分の身に付けた技術も役に立たず、出来ないことを悔やむしかありませんでした。
しばらく落ちむ日々が続いていたのですが、ある時、マリアさんが、私にあげると言って、何かをいただきました。
それは、マリアさんと慎二さんで作ってくれた物と聞きます。
それをよく見た私は、とてもとても驚きました。 それはもう口から墨を吐くぐらいの驚きです。 あ、私の世界のことわざです。
なんとそれは、2cmくらいある、球状のマナクリスタルでした。
それは、私がかつて見たことがないような とびっきりきれいで、高い透明度のものであり、とてもきれいなものでした。
それは、手に取った時、強い物が伝わってくるような物でした。
いえ、私はマナクリスタルが発するエターナルを感じられるわけではありません。
しかし、いつも扱っている物ですから、何となくですがマナクリスタルを持った時に、その違いは判ります。
これは、まぎれもない最上級のマナクリスタルです。 この世界にはないはずのマナクリスタルです。
これだけ大きく、不純物も一切入っていない透明な物は、元の世界でも国宝級だと思います。
でも、悲しいことにマナクリスタルは大きければよいという物ではありません。
なぜならば、マナクリスタルを小さく分けることが出来ないからです。
マナクリスタルは非常に硬く、普通の金属では金属の方が曲がってしまいます。
これだけ大きいと、どれだけ強い摩導具が作れるかわかりませんが、それこそ国家級の道具や武器のようなものに使われるのかもしれません。
遺跡から発掘されるもにはもっと小さく、不純物が混ざっており、形もいびつで、表面も荒れているため透明感もさほどありません。
そう、私の世界のお料理で使う、氷砂糖みたいな結晶です。 えっ、氷砂糖はこの世界でもあるのですか!? その、梅酒ってどんなお酒なんですか?
自分で割ることはできないのですが、発掘現場では偶然に割れたものは沢山あります。
割れた面を見ると、やはり中には不純物がかなり混ざっており、結晶と言うよりは遺跡で発掘される結晶は人工的に固めたような感じがします。
だから割れていたのかもしれません。
マナクリスタルはあまりにも固いために、普通加工はされず、採掘されたままの形で摩導具に使用することになります。
マナクリスタルは、あらかじめ大きさや形で選別されて売られているので、必要となるマナクリスタルを指定して購入し、摩導具に組み込みます。
もし、可能であれば小さなマナクリスタルを作っていただけないかとお願いしたところ、なんと小さなものもいくつかいただきました。
これでも大きいと言うと、マリアさんが小さなマナクリスタルを、魔法で小さく割っていただけました。
信じられないことに、魔法だとこれを割ることが出来るようです。
そのおかげで、実験するには十分な量の小さなマナクリスタルを作ってもらうことが出来ました。
私は、幸せ者です。
勝手にだめと思ってあきらめていたマナクリスタル。
しかし、それも飛び切り高品質なものが手に入ったのです。
でも、マリアさんは病気だそうで、それもエターナルを体に流すと悪くなると聞いていたのですが、大丈夫なのでしょうか?
え? 治ったって?
えぇー! そんなこと聞いてないですよ!
いきなり治ったのですか?
聞くと、先日貴子さんの里から東京へ帰る途中で行った施設。
そう、検疫の特別な施設ね。
あそこで、この世界の検査装置で診察した時、体の中を表示する装置ね。
あれで、マリアさんの体の中がはっきりと映っていました。
私もそこに参加していたのですが、あれが治療だったのですね。
わたしは、その機械の画面を見るのが楽しくって、気が付きませんでした。
だって、私が人の体の中を見ているのですよ!
体をぐるっと動かすと、体の中も動くのです!
初めて見る装置にも、目が離せませんでした。
あそこでは、どの装置や検査も私の知らない物であり、ずっと興奮していました。
残念なことに、記録簿など私物は預けてあり、記録するものが何も持ち込めなかったのです。
そこで、後で書き溜められるように、見たものをすべて忘れないように覚えようとしていたため、マリアさんの病気が治ったことは聞いていませんでした。
それで、あの時皆さん騒いでいたのですね。
私は、画面が置いてある部屋で、その画面や機械をずっと見ていたため気が付かなかったようです。
あぁ、そうだったのですね。
あの時、慎二さんがストレージに転送したのですね。
そういえば、お腹の白い部分が急に消えたことは見ていましたが、あれで治ったとは思っていませんでした。
ストレージを使ったことは秘密なので、あの後はその話は一切しませんでした。
と言うわけで、隠していた訳ではないようなのですが、治ったことは特に黙っていたようです。
メンバーは全員そこにいたので、知っている物と思っていたようです。 私を除いてですが。
そんなことが検疫検査の途中であったのですが、本人もいつもと同じようにしていたので、さっき聞くまで気が付きませんでした。
そういえば、その検査のあと、思いっきり慎二さんからエターナルを吸い取ったようです。 ちょっと、うらやましいです。
そして、マリアさんの体のマナ溜りが、完全にエターナルを受け入れが出来るようになりました。
そこに慎二さんからエターナルを一気に大量に流し込むことで、黒いものでおおわれていた部分も、とけて流れて綺麗に掃除されたそうです。
マナ溜りも快調となり、パイプ内部のつまりも一掃され、体中のエターナルの流れが太く通りやすい物となったそうです。
ふふ、慎二さんったら、まるで洗面台のパイプクリーナーですね。
その結果、今のマリアさんの魔法能力は、子供の頃をはるかに超えたようです。
この世界にはエターナルが非常に少ないようなので、まだ慎二さんの力が必要らしいのです。
でも、マリアさん自体の体の流れも良くなっているので、時間はかかるようですが、ご自身だけでもマナが貯められるようにもなってきたそうです。
ほぼ全快、いやそれ以上なのですかね? 本当によかったです。 やっぱり慎二さんてすごいですね。
この世界では、魔法使いは1人もいませんので、マリアさんの魔法の力がどれ程のものなのかは比較のしようがありません。
まあ、この世界では魔法で指先に小さな炎を灯しただけでも、きっと大騒ぎでしょうね。
これでマリアさんの心配事は消えたようなので、後は私のエリクサーが出来れば全員の願いが、すべて叶ったことになるのかな?
何か難しそうな私の望みが残っちゃって、申し訳ないと思っています。
でも、必ず親友を助けたいので、ご苦労をおかけしますが、これからもなんとかお願いします。 神様、仏様、慎二様!
でも、マリアさん、本当によかったね。
あ、そういえば、あの時私も歯の治療をしていただきました。
軽い虫歯だったのですが、検査の時その場で治ってしまい、魔道具でもそんなことはできません。
やはり、魔法なのでしょうか?
私も爽快ですので、せっかく作っていただいたマナクリスタルを使った作業を始めたいと思っています。