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外伝M3-06-01 ホームセンターにて


 私、厚労省の宮守珠江は、今日はイザベラさんと、郊外にあるホームセンターまで来ています。


 ここは、以前皆で行ったショッピングセンターに入ったお店とは異なり、日本でも有数の巨大なホームセンターです。

 イザベラさんが求めるものが何かわかりませんので、なるべく何でもそろったこの店にやってきました。


 まずは、イザベラが探すものは、よくわかりません。

 広い店内をあてどもなく歩くのは厳しそうですので、お店の人に最初に聞いちゃうことにしました。


 でも漠然とした聞き方で、イザベラさんの欲しい物が見つかるのでしょうか?


 イザベラさんは、


「マナインクで摩導回路を作りたいのですが、この世界で模様を描く道具ってなにを買ったらいいのでしょうか?」


 なんて言っているのですが、さっぱりと分かりません。

 イザベラの世界ではどんな道具で模様を描いていたのかしら?


 すると、


「様々な鳥の羽の中で、一番大きな羽根を使います。

 鳥によって書ける太さが替わりますので、私は10種類ぐらいの鳥の羽根を常に使い分けていました。

 模様が同じであれば、ほぼ同じ太さの線がかけます

 先端を細く切り込み、そこにマナインクを浸けて書いていました」


 そこで、近くにいた店員さんに聞いてみる。


「すみません。このお店で、インクを浸けて一定の幅の線を書くことができる道具ってありますか?」


「筆ならば絵画もしくは書道もしくは化粧品のコーナーにございます。

 あと、つけペンは漫画コーナー

 ガラスの付けペンもあります。


 刷毛でしたらペイントコーナーに。


 太い線でしたらペイントコーナーにローラーブラシや

 美術絵画コーナーにエアブラシ、ペイントコーナーにはコンプレッサー式の塗装用のエアブラシもございます」


 すらすら出てくる案内にイザベラさんはものすごく感心して、いちいち頷いている。

 折角なので、私たちは聞いたすべてのコーナーを順に回って現物を見る事にしました。


 そして、現代人である私自身がこの世界の凄さを垣間見た気がします。

 1つのお店で線を書くだけでも、これほどの道具があるなんて。


 刷毛や筆はイザベラの世界にもあるようですが、これは先端が柔らかいので、摩導回路を刻むときに線の幅がぶれるので使えないとのこと。

 流石に羽ペンなどは無さそうなので、コミック作家というコーナーで、取りあえずマンガ用のペンを買うことにしました。

 付けペンのペン先が入った小箱を一通りかごに入れたとき、イザベラが「これは何ですか?」って聞いてきた?


 うん? とりくち? って書いてある。

 近くにいたエプロンをつけたお年寄りの店員さんに、これって何ですか?って聞いてみる。


「ああ、若い人は知らないかな?

 これは烏口(からすぐち)といって、製図の図面を仕上げる時、墨入れといって先端に墨汁やインクを浸けて、下絵の上から必要な太さの線を書くための道具です。

 先端をインク瓶に漬けると、毛細管現象でインクが板の間に吸いあがり、ネジの加減を調整して線幅を決め、一定の太さの線を書きます。

 ネジを緩めると先端の二枚の板が開き太い線が書けますよ」


 イザベラは思わず私の顔を見てきた。 どうも、お探しの物が1つ見つかったようね。


「これ、今何本在庫がありますか?」


「これはネジを調整することで、1本あればいろいろな太さの線が書けるので何本も必要ありませんよ」


「書いている途中で太さの調整はできないので、最初に必要な線幅を調整しておきたいので、もし在庫があればたくさん買いたいです」


「少々お待ちください」


 店員さんは商品を持って、POSでバーコードをチェックし、在庫を調べてくれた。


「最近は烏口はほとんど商品が動きませんので、現在店内在庫が10本ほどしかございません。

 その内の1本は、こちらの展示品となりますが、展示品もお買いになりますか?」


「お願いします。 これは、頼んですぐに入荷するものなのですか?」


「メーカーはまだ販売しているようですが、どうも在庫商品ではなく、すでに受注生産扱いらしく、今からのご注文では、早くても2ヵ月ほどかかるようです」


 さっきの在庫チェックで、メーカーの販売店情報も合わせて表示されていたようです。


「では、現在の店内にある在庫をすべていただきたいのですが」


「ありがとうございます」


 店員さんはそういうと、陳列台の下の引き出しを開け、紙の小箱を取り出しています。

 箱の中の烏口の数を数え、その中に展示品の烏口を布で拭いて入れて渡してくれました。

 元々が10本入りの小箱のようです。

 私たちが最初の購入者のようでした。


 これで、書く道具として付けペンと烏口を確保できました。


「ありがとうございます。

 これで羽ペンの代わりが見つかりました」


「ん、羽ペンでしたら趣味のコーナーにあったと思います」


「「え?」」


 私達は思わず声を上げてしまいました。


「製品としての羽ペンは、あまり種類はございませんので、それよりもご自分でお作りなられてもよいかと思います。

 ペットコーナーでは生きた小鳥しかおりませんが、インテリアコーナーにはクジャクや鷹など、デコレーション用の鳥の羽根が何種類か販売されていたと思います」


「この店っていったい何なの? お年寄りまで、こんなに沢山の品物をどうやって覚えているの?」

 イザベラさんがぼそっと呟いています。 まあ、私もそう思います。


 イザベラさんはあと少し買いたいものがあると言い、さっきの年配の店員さんに何か相談している。

 あの店員さんだったらイザベラをすこし任せておいて良さそうですね。


 私は隣の文具コーナーをそこに並んだ色とりどりのペンを見て、早速試し書き。


 その他、イザベラが求めるほとんどの材料は、既にこの一軒でほぼ揃うようです。 流石ですね。


 あとは、今日の買い物で一番重要なものが残っています。

 私達は、資材コーナーに行き、店員さんに声をかけます。


「手で持てて、固くて、丈夫な物ってどんな素材がありますか?」


「それですと、思いつくままですが、木材、樹脂、金属、ガラス、石材、タイルなどでしょうか。

 形の希望はありますか?

 角材、板材が主ですが、球、正方形、三角錐とかありますよ。

 あと、ちょっと違うかもしれませんが、丸い棒やパイプなども当てはまりますか」


 貰った店内マップに、商品が置いてある場所に丸をつけてもらい、私達はショッピングカートを押し、最初に角材、板材ということで、売り場の一番端にある木材コーナーに来てみました。



「木なのに、凄く美しく切れていますね」


 木材を見てイザベラは、いたく感心している。



「木材のように細かく凸凹があるものは摩導回路が書きにくいので、できれば避けたいです」

 とイザベラさんのご意見が。


 続いて、金属、ガラス、石材、タイルなど、紹介された素材を順に見て回わります。

 この辺の素材は、すべて資材コーナーにあったので、ぐるっと回ることですべて見ることができました。 ふー。


「あと、さっき言われたパイプって何?」


 と言うことで、水周り製品の売り場の場所を聞き、少し離れた水道用品のコーナーにパイプを見に来ました。


 そこで売られていた、カットされた塩ビパイプをみると、イザベラさんは、


「これがいいです!

 これが沢山欲しいです!!」


 と言いますが、売場には数本しか置いていません。

 沢山って何本くらい欲しいのでしょうか?


 近くの呼び出しボタンを押し、店員さんに来てもらう。


「こちらの商品は、ここにあるだけですか?」


「カットされたものはこれだけですね。

 どれくらい必要でしょうか?」


「沢山欲しいのですが、すぐに取り寄せられますか?」


「それでしたら、資材コーナーで切っていないパイプを購入され、工作室でカットができますよ。

 たくさん必要でしたら、長い塩ビパイプを購入されて、店内でカットされた方が、すぐ手に入りますし、カット代を入れてもお安くなりますよ」


 そう言われ、私達は再び広い店内を通り、さっきの資材コーナーに戻ってきました。

 しかし、資材コーナーをぐるっと見渡したのですが、グレーの塩ビパイプはどこにも見つかりません。


 さっき聞いた店員さんが近くにいたので、再び質問してみます。

「長い塩ビパイプっていうのはどこに有りますか?」


「塩ビパイプでしたら、外に出た所に有ります」


 指さされた大きな出入り口を通り、屋外にでてみました。

 そこは屋外といっても、大きな屋根があり、商品には雨は当たらないようです。


 さっきは気がつかなかったのですが、外の展示場も結構広いです。

 そこには、エクステリア関係のアルミ製品や多少雨に濡れても問題がない大きな商品が置かれていました、


 見渡していると、先ほどの店員さんが来てくれまして、


「見つかりませんか?」


 と声をかけてくれて、

「パイプはこちらです」と、壁際に案内してくれました。


 そこには、素材や色、太さなど、たくさんの種類のパイプが揃っていました。


 イザベラさんはパイプに駆けより、いくつかパイプを握りながら、


「この太さがちょうど良いです」



 選んだパイプは4センチくらいの太さの塩ビパイプで、確かに握りやすそうな太さです。

 例えると、リレーのバトンくらいの太さね。


「お店の人に切ってもらうから、どのくらいの長さが欲しい?」


 そういうと、両手を広げこのくらいでお願いしますという。

 店員さんの持っているメジャーで測ってもらうと30センチ位のようだ。


 改めて、メジャーで30センチを引き出してもらい、本当にこれでよいか聞いてみる。


「この長さでお願いします」

「全部同じ長さでよいの?」

「はい。それでお願いします」

 と、イザベラは今日一番の笑顔で答える。


「4メートルパイプから切り出すのが、価格的に一番お安くなります。

 パイプのカットでは、切りシロが数ミリ必要ですので、仕上がり30センチで切り出すと、4メートルパイプからですと13本が取れますね」


「今、在庫として何本まで買えますか?」


「在庫はここにあるだけですので、4メートルパイプが10本と2メートルパイプも10本あります」


「では、それ全部欲しいです。

 これだけあれば、何個かは動くと思います」


 車ですが、かなりの量になりそうなので持って帰れるでしょうか? ちょっと心配です。


「これって、今すぐカットをお願いできますか?」


「出来ますよ」


 と言うことで、カットをお願いしました。

 店員さんはもう一人を呼んで、両脇に網がついた籠タイプの大型台車を2台持ってきて、長いパイプの両端を籠に渡す。

 短いパイプはそれぞれの籠に分けて入れて、二人で籠を押して一度に工作室まで運んでいただきました。


「加工する場合、商品とカット代金のお支払いを先にすませて来てください。

 そして、こちらの加工注文書にレジの領収印をもらってきて下さい」


 とのことで、私は先にレジに向かっています。


 私がレジ精算に向かったその間も、イザベラさんは店員さんとお話をして、まだ何かを追加で買っています。

 イザベラさんにもお金は渡してあるから、一人で大丈夫ですね。


 カットしてもらったパイプは200本以上あり、切った物をいくつかの大きな段ボール箱に入れてくれて、何とか車に乗せることは出来ました

 こんなに大量に買っちゃって、慎二さんには何か言われないか心配です。


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