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第二十話 魔王復活

 空飛ぶ船の中には防寒着が用意されていた。防寒着を着て空飛ぶ船を下りた。

 辺り一面は雪に覆われた世界だった。


 寒い。防寒具がなければ凍えてしまいそうだ。

 目の前に以前に会った雪達磨(ゆきだるま)の兵がずらりと、三千以上はいた。


 雪達磨兵の後方には一団高い段が用意されており、氷の女王が座っていた。

 氷の女王が魔王の復活を阻止に来たのか。だとしたら、大変だぞ。


 ステは緊張したが、グレースは平然としていた。

 グレースが船を下りた。


 ステもエラと一緒に船を下りた。

 グレースが厳しい表情を氷の女王に向ける。


「随分と御大層なお出迎えですね」

 氷の女王に敵意はなかった。


「魔王復活は他人事ではないからのう。しかと、見届けたい」

 氷の女王が右手を軽く挙げると、雪達磨兵たちが道を空ける。


 氷でできた祭壇が見えた。グレースを先頭に道を進む。

 エラから大龍神石を受け取り、グレースが首から提げる。


 グレースが満を持してステに命令する。

「世界の書を起動させて祭壇を活性化させろ」


 ステは冒険の書に命じる。

「冒険の書よ。祭壇を活性化させろ」


 ステの左の掌に紋章が現れた。紋章から白い光が伸びて祭壇を照らす。

 祭壇が(ほの)かに白く輝いた。


 祭壇まで進むとグレースが両手を拡げる。

 グレースの右手に箱が、左手に鍵が現れた。


 グレースが祭壇に箱を置き鍵穴に鍵を入れた。

 カチッと音がして、箱が開いた。凄まじい風が巻き起こった。


 あまりの風圧に、目を開けていられなかった。思わず目を閉じる。


 再び目を開けた時には、祭壇の上には白い髭を生やした白髪の男が座っていた。男は白の簡素なシャツを着て、白の半ズボンを穿いて、サンダル履きだった。


 男の身長は百八十㎝と、ステより高かったが、痩せ型体形だった。

 一見すると、男はどこかの治療院で療養している初老の男性に見えた。


 とても、世界を混乱に陥れた魔王には見えなかった。

 グレースが立て膝になって臣下の礼を取る。


 ステも同じく恰好だけ臣下の礼を取った。

 グレースが安心した顔で魔王に声を懸ける。


「お帰りなさいませ、魔王陛下」

 魔王は祭壇に腰掛けたまま、グレースに問う。


「ライゼンか? 余はかなり長い間、封印されていたようだな。して、世界はどうなっておる?」


「今はグレースと名乗っております。世界では人間たちが蔓延(はびこ)り、好き勝手し放題です。人間に反発する者は多く、陛下の帰還をお待ちしておりました」


 魔王が苦い顔をする。

「人間め、我が愛を忘れて付け上がりおって、粛清してくれる」


 魔王がエラをじろりと見る。

「氷の女王は知っておる。だが、お前は誰だ?」


 エラが緊張の面持ちで名乗り出る。

「貴方とマイアの間に生まれた末娘のエラです」


 魔王の表情が緩む。

「そうか。余の封印を解くのに娘が協力してくれたか。立派な心掛けよ」


 魔王の言葉にエラがほっとした表情を浮かべる。

 魔王はステの存在を気に留めず、グレースに向かって尋ねる。


「余の封印が解かれたのであれば、古の大陸の封印も解かれたであろう」

「おそらく、としか申し上げられませんが」


 魔王が尊厳に満ちた顔で宣言する。

「では、余は封印されていた大陸に行くぞ。すぐに準備をいたせ」


 グレースは畏まって進言する。


「お待ちください。問題があります。堕天使ザッファーの存在です。ザッファーは魔王様に取って代わろうとしています」


 魔王の表情が忌々しいとばかりに歪んだ。

「なんと、あの時の天使が、再び余が前に立ちはだかるか」


「ザッファーの勢力は日増しに強くなっております。もう捨ててはおけないほど大きくなりました。封印された大陸にもザッファーは進出して来るでしょう」


 魔王の表情は険しい。

「ザッファーに余が負けるとは思わん。だが、ザッファーは片手間に相手をできる存在ではない」


「ここは一旦、スノーランドで静養して力を蓄えるべきかと思います」

 魔王は頭を下げて氷の女王に頼んだ。


「我が盟友、氷の女王よ。余を受け入れてはくれまいか」

 氷の女王の顔は歓迎していなかったが、拒否しなかった。


「面倒事は御免被りたいところ。じゃが、魔王殿の頼みとあらば止む無し。ゆるりと静養されよ」

 魔王は堂々たる態度で歩き、空飛ぶ船に乗った。


 グレース、エラ、ステも空飛ぶ船に乗る。

 空飛ぶ船に乗ると、魔王はエラに命じる。


「エラよ。少し話がある。よいか?」

「わかりました。お父様」とエラは魔王の部屋に行った。


 ステは暇になったので操舵室に行く。

 グレースがいたので話し掛ける。


「魔王は復活した。以前に教えてくれた通り、ザッファーとも戦ってくれるようだ。だが、魔王は人間に関して悪い感情を抱いているように見える」


 グレースは、むっとした顔で注意した。

「まず、一つ注意しておく。魔王ではなく、魔王陛下と呼べ」


 (こだわ)るな。いいか。エラのお父さんなわけだし、実際、偉いんだから。

「わかった。魔王陛下は人間を滅ぼすのではないのか?」


 グレースは、あっさりした態度で認めた。

「滅ぼそうとするかもしれんな。だが、原因は傲慢になり過ぎた人間にある」


 ステは賛成できないので、反論した。

「傲慢な人間は一部だ。全てが傲慢だと思われたら心外だ」


 グレースの表情に深刻さも嫌悪もない。ただ、淡々と語る。


「傲慢な人間をのさばらせるのも、傲慢になった人間と同じ罪だ。ただ、見ていただけ、は通用しない。もっとも、人間が滅びると思えないがな」


 グレースは人間を信じているのか。

 いや、あり得ない。ステは正直に疑問をぶつけた。


「どうして、そう思う?」


「全能神は聖なるパンより、マイアと魔王陛下を創造した。パンは時が経てば(かび)()える。聖なるパンであったマイアや魔王陛下でも、この理からは逃れない」


「今の人間は黴が生えたパンだ、と揶揄(やゆ)するのか」

「いいや、人間とは新たに造られたパンではない。黴そのものだ。黴は決してなくならない」


「では、魔王陛下がやろうとしている人間の粛清は無駄だと?」

 グレースは険しい表情で辛辣(しんらつ)に語る。


「人間は絶えず発生する。だが、駆除を止めた途端に世界は人間に飲み込まれる。世界を保つには、絶えず人間を駆除し続けるしかない」


 魔王の考えは、わからない。だが、グレースは確実に人間を敵視していた。

「ザッファーはどうなんだ?」


「私とザッファーと考え方は大分、違う。だが、人間の駆除を止めた途端に世界は住みづらくなる点では、同意見だ」


「やはり、魔王を蘇らせたのは、失敗だったかもしれない」

 グレースはむすっとした顔で注意する。


「魔王陛下だ。失敗と判断するのは、早計だ。人間が世界を飲み込んだ後、人間は人間を敵として行動する。つまり、魔王陛下が人間を適度に間引くほうが、人間にとっては幸せなのだ」


 グレースにはグレースの世界観があり、正義があるのか。魔王自身の考え方はわからないが、グレースと俺は相入れない。


 ステは自室に戻り、寝転がる。

 グレースの言いたい理屈はわかった。だが、ステには、やはりどうしても納得できなかった。


 空飛ぶ船は一時間ほど飛ぶと、白い城に到着した。

 魔王がエラと共に降りて行く。ステも降りようとした。


 グレースに止められた。


「人間の部隊がこのアイス・キャッスルに迫っている。これを見事に討ち取って、手柄を立てて来い」


 ステはグレースの言葉に反感を覚えた。

「魔王陛下の傍にいたければ信用を勝ち取れ、って話か?」


 グレースは傲岸な態度で言い放つ。

「そうだ。ステには武功がない。ここで手柄を立てろ」


 エラの傍にいたければ、従うしかないか。

 グレースは船を下りた。ステは船に残った。


 空飛ぶ船はステを乗せたまま飛び立った。雪原の上を飛ぶ。

 人間と戦う。相手はステの命を狙ってくる。人間と命のやりとりをした経験はない。


 だが、エラの傍にいてやると決めた以上は、戦わなければいけない。

 操舵室で戦いの時を待つ。


 ドントンと音がする。船の窓から見れば、空飛ぶ船が地上を砲撃していた。

 砲撃の先には白い犬が引く(そり)があった。橇は果敢に砲撃を避けていた。


 橇が光った。橇から銛が飛んできて、船体に命中する。

 警告音が船内に鳴り響く。


 モモンが叫ぶ。

「あの銛はまずい。船が破壊される。おい、用心棒。船を下りて敵を仕留めてこい」


「用心棒って、俺のこと?」

 モモンは怒った。


「他に誰がいるんだよ」

 ステは扉を開けて甲板に上がる。火球の魔法を圧縮して、橇の足を狙った。


 橇の足が壊れて、橇が横転する。橇に乗っていた二人は雪原に投げ出された。

 船が高度を下げたのでステは飛び降りた。雪は深く、膝まで埋まる。


 浮遊の魔法を唱えて、足を取られないようにした。

「大人しく、帰るんだ。引き返すなら、命を取りはしない」


 雪原に投げ出された一人が立ち上がる。一人はセオだった。

「残念だが、ここで、みすみす帰るわけには行かない」


 もう一人も立ち上がる。もう一人は、ソフィーだった。

「ステ、やはり魔王を復活させるなんて間違っています」


 相手はセオとソフィーか。やり合いたくない相手だった。

「議論はよそう。お互いの立場はもう決めたんだ」


 ソフィーが網を投げてステの動きを封じようとした。

 ソフィーの網は単なる漁網じゃない。クジラの動きすら封じる魔法の網だ。


 ステは万能属性の気を纏って獅子王刈に吸わせる。

「大鎌術・鬼刈の刃」


 迫り来る網を斬り裂いた。

 セオが叫ぶ。


「駄目だ、ソフィー。網じゃステを止められない。銛を使うんだ」

 ソフィーの銛は二撃で船を沈める。


 当たれば万能属性の気を纏っていても致命傷は避けられない。

 セオの命令を受けても、ソフィーは銛を使えなかった。


「ごめん、ソフィー」と心の中でステは謝る。

 ステは闇属性の気を練り上げる。


 ステの練り上げた気は闇属性の中でも相手の気力を奪うものだった。

 奪気の力を獅子王刈に吸わせる。


 ステはソフィーとの距離を一気に詰める。

「大鎌術・奪気の刃」


 奪気の刃は、触れただけで相手の気力を削ぐ。

 ただし、刃は鋭さを失うので斬れない。手加減して相手の戦意を削ぐのに有効な技だった。


 黒く染まった大鎌の大刃がソフィーに迫る。ソフィーは身を捻って躱した。

 躱せたと思ったところで、小刃の刃で首を刈りに行くフェイントだった。


 フェイントは成功してソフィーの首に大鎌が当たった。

 鎌を通じてソフィーの気力が流れ込んで来る。ソフィーはそのまま雪原に倒れ込んだ。


「ソフィーは倒した。命に別状はない。ソフィーを連れて帰るんだ、セオ」

 セオは敵意を剥き出しにして怒った。


「そうはいかない。ステは、ここで僕が止める」

 ステがピッケルを構える。ピッケルが光って、二十倍にまで大きくなる。


 セオは巨大化したピッケルを片手で悠々と振るう。

 ピッケルの一撃が大地を撃つと、雪や氷が弾けとぶ。


 ステはセオの攻撃を冷静に見切った。

 威力は大きいが隙が大きすぎる。注意すれば当たらない。


「よすんだ。セオ。そんな大振りなピッケルの攻撃じゃ、俺には当たらない」

五月蠅(うるさ)い。ここは、僕がやらなきゃ駄目なんだ」


 ステは再び闇属性の気を纏って、奪気の刃を試みようとした。

 闇属性の気を獅子王刈に吸わせた時、足に何かが絡みついた。


 ソフィーの網だった。

 気絶させたと思ったソフィーだった。


 だが、ソフィーは気力を振り絞り意識を保っていた。

 転倒したステに、セオの巨大化したピッケルが迫る。


 獅子王狩りは奪気の刃を発動させようとしているので、刃に切れ味はない。

 ソフィーの網を斬っての脱出は、不可能だった。


 やられる――と思ったところで、ドンと音がした。

 セオが後方に跳ばされた。


 空を見上げれば、空飛ぶ船の砲身から煙が立っていた。

 間一髪、モモンの判断による砲撃がステを救った。


「セオ!」ソフィーが叫び、セオに駆け寄る。

 砲弾が当たったかどうかは、雪煙で確認できなかった。


 だが、当たっていれば、セオは無事では済まない。

 ソフィーがセオを抱かえる。ソフィーとセオが光り輝いた。


 あまりの眩しさに目を覆った。光が消えた時には二人と橇は消えていた。

 空飛ぶ船が下りてきた。


 船に乗ると、モモンが恩着せがましく、声を懸けてくる。


「いやあ、危なかったですな。私の砲撃なかったら、どうなっていたことか。これは一つ貸しですな」


 セオが無事であってほしい。だが、モモンを責めるわけにはいかない。

 なにせ、モモンは味方であり、セオは敵なのだから。


「そうだな、ありがとう。モモン船長」

 モモンと一緒にホワイト・キャッスルに戻る。


 グレースが待っていた。グレースが冷たい表情で尋ねる。

「敵はどうした?」


「追い払うことに成功したよ」

 グレースの顔が不機嫌に曇る。


「首を取れなかったのか?」

 モモンが得意げに口を出す。


「敵もなかなかやるものでしてね。でも、ご安心を。このモモンが砲撃で吹き飛ばしてやりました。そうしたら、尻尾を巻いて逃げて行きました。ハッハッハ」


 モモンは上機嫌だったが、グレースは不機嫌だった。

「そうか。ご苦労だったな」


 グレースは踵を返して立ち去る。

 モモンがもっと褒めて欲しそうに、グレースに絡む。


「それにしても、敵は本当に無様なことで――」

 モモンとグレースがいなくなった。


 お城の雪達磨兵に自室を訊いて、部屋に行く。

 部屋は三十㎡ほどの、人間用のまともな居室だった。窓から白い雪原がよく見えた。


 部屋にいると、ドアをノックする音がする。

 返事をすると、エラが入ってきた。エラは安堵していた。


「お父さんと話ができた」

「少し聞かせてもらえるかい」


「お父さん、人間は嫌いだけど、そんな悪い人じゃないみたい」

 エラの言葉に救われた気がした。


「人間を滅ぼそうとか、思っていなかったの?」

 エラはちょっぴり悲し気に語る。


「逆なんだって。人間がお父さんを滅ぼそうとしたから、仕方なく戦ったんだって。人間が手出ししてこないなら、殺しはしない、って」


 気になったので確認する。

「嘘を()いている様子は、ない?」


 エラは穏やかな顔で語る。


「話したところ、嘘はなさそう。お母さんの話もちょっぴりした。だけど、育てのお父さんと同じ。普通のお父さんだった」


「そうなんだ。普通のお父さんなんだ。よかったね」

 ステも安堵した。


 エラは寂しげに語る。


「お父さんは魔王になってから、他の魔族の女性と付き合っているんだって。マイア母さんも再婚した。もう、二人は夫婦には戻れない、とは教えられた」


 大人の事情だな。

「そこら辺の家庭の事情は何とも言えないな」


「ちょっと複雑。でも、魔王と呼ばれたお父さんは、言い伝え通りの悪じゃなくて、安心した」

 エラは満足そうに告げると、部屋を出て行った。


 それから、一ヵ月は何事もなく過ぎた。

 ステは大鎌術や魔術の鍛錬に励んだが、心は晴れなかった。


 グレースがステとエラを会議室に呼んだ。

 会議室では様々な種類の魔物が作業をしていた。


 グレースが地図を前に語る。


「エラ、ステ。ついに我が魔王軍は封印が解かれた大陸に旅立つ状況になった。アシュリーは既に先遣隊として出発した。クリフトの隊も直に出る」


「封印が解かれた大陸には何があるんだ」

 グレースは険しい瞳で確認する。


「封印が解かれた大陸には全てがある。当然、大陸の富を狙い人間たちや堕天使ザッファーも大陸の覇権を狙って来るだろう。覚悟はあるか?」


 緊張で喉が渇く。

「戦う覚悟を指しているのか?」


 グレースは強い口調で、決意を確認してきた。

「そうだ。ここからの戦いは熾烈(しれつ)を極めるだろう。冒険ごっことは訳が違う」


「事前の情報では無人ではないと聞いている。封印が解かれた大陸の民は魔王陛下を受け入れるのか?」


「封印される前は受け入れてきた。だが、封印後、二百年が経っている。心変わりしている可能性もある」


 ステははっきりと意見を伝えた。

「受け入れない場合は戦争をするのか? 俺は大勢を不幸にする戦いは同意できない」


 グレースの表情は厳しい。


「行ってみなければわからない情報が多すぎる。それでも我々は行かねばならない。全ては、世の中を正すためだ」


 グレースの大義か。だが、人を幸せにしない大義なら要らない。でも、まだグレースと喧嘩する時ではない。


「ここまで来たんだ。封印が解かれた大陸を見に行こう」

 冒険したい欲求がステにはあった。


 エラも力強く望んだ。

「私も、お父さんが目指すものを見たい」


 グレースは真剣な顔で尋ねる。

「なら、確認する。エラ、ステ。お前たちを仲間(なかま)と見ていいんだな?」


「グレースと意見は違う。だが、俺は魔王陛下に協力する」

「私も、お父さんを身近で見たい」


 グレースは決断した。

「わかった。なら、二人を封印が解かれた大陸へと連れて行く」


 会議室を出ると、エラがステの手を握った。エラは不安な顔で訊いてくる。

「ねえ、ステ。これで良かったんだよね?」


「未来はわからない。わからないから、目で見て、頭で考えて、体で行動してゆくんだよ」

 エラが揺れる瞳で語る。


「本当の気持ちを教えるわ。これで良い、って考える自分と、本当に良いのって、疑問を投げ掛ける自分がいるの。いつも迷っている」


 エラは怖いのか。でも、もう立ち止まってはいられない。


「俺だって、何が正しいかわからない。でも、過ちは正せばいい。間違っていると悩んでいて、歩き出せないほうが、よっぽど悪い」


 エラは微笑んだ。

「ステは強いんだね」


「強いわけじゃないさ。ただ、俺の冒険は俺が進めないと始まらない」

「わかった。私は迷うのを止められないと思う。でも、私も、私の足で歩んで行く」


「俺はエラの傍にいるよ。だから、一緒に冒険の旅をして行こう」

二週間後、アイス・キャッスルを出る空飛ぶ船の船団があった。


 船団の中には、エラとステの姿もあった。


 道を違えた者もいれば、道を同じくした者もいる。世の中は思い通りに行かないかもしれない。望んだ結末ではないかもしれない。だが、ステが歩みを止めない限り、ステの冒険の旅は続いて行く。

【了】


©2020 Gin Kanekure

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