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脚本「輝きの季節」

作者: 夏目歩知

登場人物


青山ハルカ(19)短大生

斉藤タクヤ(19)大学生・ハルカの彼氏

風間リョウ(19)大学生・ハルカの幼馴染

その他




○表参道(夕)


   イルミネーションが煌めく歩道。


   クリスマスソングが流れる。


   大勢の人々が行き交う。


   斉藤タクヤ(19)が前を歩き、青山ハルカ(19)が後ろを歩く。


○同・公園(夕)


   カップルがベンチに座ってイチャツイテいる。


   タクヤがブランコに座っている。


   ハルカがブランコをこいでいる。


タクヤ「俺たち、友達に戻れないかな」


   ハルカはブランコを止め、じっとタクヤを見る。


ハルカ「なんで?」


タクヤ「恋愛って時間の無駄じゃね?俺は、マスコミに就職したいから、テレビ局でバイトやる。


ハルカに会う時間がなくなっちゃったんだよね」


   ハルカ、唇が震える。


ハルカ「わたしだって、やりたいことくらいあるよ、でも、タクヤにも会いたい!友達なんてやだ!」

   

   タクヤはブランコから立ち上がって、


タクヤ「重いんだ。別に結婚するわけじゃないし、付き合っててもしょうがないじゃん」


   ハルカは苦しそうな表情。


ハルカ「一緒に成長しようぜって……」


   ハルカ泣き出す。


   タクヤ、一瞬ハルカに近づくが、踵を返す。


タクヤ「一生会えなくなるわけじゃねえし。もっといい男いるだろ」

   

   タクヤ、立ち去る。


   ハルカ、泣き続ける。


   カップルは楽しそうに笑っている。


○土手の並木道


   桜が満開である。


   ハルカが自転車をこいでいる。


   後ろから風間リョウ(19)が自転車で追いついて、


リョウ「よう、ハルカ!アンタ就活してないんだって?どうすんの?」


ハルカ「大学に編入する」


リョウ「へんにゅう?」


ハルカ「そう」


リョウ「何勉強すんの?」


ハルカ「マスコミ」


リョウ「へー。がんばって!受かるといいね」


ハルカ「あんがと」


   桜の花吹雪の中、二人の自転車が通る。


○神社(夜)


   祭囃子が鳴り響く。


   お祭りの屋台がたくさん並ぶ。


○同・金魚釣りの屋台(夜)


   金魚釣りに夢中のこどもたちとおやじ。


   ハルカが立って見ている。


   ハルカの手にはうちわ。


おやじ「あ、プロのねえちゃん!今年もきたか!」


   ハルカ、作り笑顔をする。


○ハルカの回想


   浴衣姿のハルカが、金魚を釣りまくっている。


   小さい桶に金魚がいっぱい。


   となりでタクヤが楽しそうに見ている。


○同・金魚釣りの屋台(夜)


   ハルカ、ボーっとして、涙が頬を伝う。


   ハルカ、後ろを向いて駆け出す。


   おやじがそれを見て、


おやじ「あれ、やらないのー?」


   おやじ残念そう。


○同・道(夜)


   雨が降ってくる。


   濡れながら歩くハルカ。


○病院(夜)


○同・病室(夜)


   タクヤがベッドに寝ている。


   タクヤの頭には毛がない。


   ベッドの横に金魚鉢。


   金魚鉢の中に赤と黒の金魚がいる。


   金魚をじっとみるタクヤ。


   窓の外はどしゃぶり。


○神社(夜)


   神社の境内で雨宿りするハルカ。


   ハルカ、ケータイを出し「タクヤ」の番号を表示。


   ケータイをじっと見るハルカ。


   と、ケータイが振動する。


   慌てて電話に出るハルカ。


ハルカ「もしもし!……なーんだ、リョウか。なに?……え?うそ!」


   ハルカの手からうちわが落ちる。


○病院(夜)


   廊下でハルカとリョウが話している。


リョウ「たいしたことなくてほんとよかった」


ハルカ「食中毒って……。夏にカキなんか食べるから」


   ハルカふくれる。


   リョウは笑って、


リョウ「おばさんらしいね。じゃ、先帰るわ」


ハルカ「ありがと!迷惑かけちゃってごめんね」


   ハルカ、おがむ。


   リョウは手を振る。


   と、タクヤが通りかかる。


   ハルカ、タクヤ見つめ合う。


   ハルカ、タクヤのもとに走る。


ハルカ「どうして?」


   ハルカ、じっとタクヤを見る。


   タクヤはニットの帽子をとって、


タクヤ「スキンヘッド、にあう?」


ハルカ「……」


   ハルカ、こぶしを握って、


ハルカ「なんで言ってくれなかったの?」


   タクヤ、ハルカの髪に触れる。


タクヤ「髪、のびたね」


   リョウがタクヤに近づいて、タクヤの手を振り払う。


リョウ「ハルカに触るな!」


ハルカ「やめて!」


リョウ「お前のせいで、どれだけハルカが傷ついたと思ってんだ?」


  リョウがタクヤの胸倉をつかむ。


   タクヤ、リョウにらみあう。


ハルカ「やめてってば!」


   ハルカ、リョウの手をふりほどく。


タクヤ「また会えてうれしかった」


   タクヤが去ろうとする。


リョウ「ハルカ、行こう」


ハルカ「待って!いかないで!もう一人にしないで」


   立ち止まるタクヤ。


○同・病室


   窓の外、紅葉した樹木。


   タクヤ、ベッドに寝ている。


   タクヤ、以前よりやつれている。


   ハルカ、横に座っている。


タクヤ「明日の試験、がんばれよ」


ハルカ「タクヤがいない大学なんて行っても意味ない」


タクヤ「ばか!俺は休学してるだけだ、必ず復学する。だからお前は合格してうちの大学こい」


ハルカ「ぜったいだよ」


タクヤ「お前こそぜったい受かれよ」


   ハルカ、うなずく。


ハルカ「大好きだよ」


   ハルカ、赤面してもじもじする。


   爆笑するタクヤ。


タクヤ「おっもしれーなー、あいかわらず」


ハルカ「ばか!」


   タクヤがハルカを抱き寄せる。


ハルカ「ずっといっしょにいたい」


   タクヤ、ハルカにキス。


   赤い金魚がはねる。


タクヤ「病気がうつるぞ」


ハルカ「いいもん」


タクヤ「ガンがうつるわけねーだろ、ばーか」


   タクヤはハルカを抱きしめる。


○大学・全景


○同・掲示板・前


   合格発表を見に来た学生たち。


   ハルカ、掲示板を見て笑顔になる。


○病院の病室


   タクヤのベッドの周りに医者と看護師。


   苦しそうな表情のタクヤ。


○大学・中庭


   ハルカ、ケータイを取り出す。


   メールを作成するハルカ。


   『サクラサク、一緒に成長しようぜ』


   送信して微笑むハルカ。


○病院・病室


   意識がないタクヤ。


   タクヤのベッドの近くに医療器械が運ばれてくる。あわただしく動く医師たち。

   

   金魚鉢の黒い金魚が死んで浮いている。


○大学・中庭


   ハルカがスキップをする。雪が降ってくる。両手を挙げて雪を受け止めるハルカ。


(完)

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