第8話 醜悪なる執着
「とりあえず俺らは逃げよう!」
「魔女はどうしますの!?」
「それはここから無事避難できてからだ!」
本気で怒ったグレンはヤバイ、タダでさえあの2人が戦うことによる被害は大きいだろう。
それなのにグレンは本気、となると下手すると街1個吹っ飛ぶんじゃないか?
流石にそこまではしないよな……グレン。
×××
「貴様は皆さんと一緒に行かなくて良かったのか?」
「行ったところでお前が邪魔をする、ならここでお前を殺しとく。わかってて聞いてんだろ?喧嘩売ってんのか。」
この男は口調や行動はただの脳筋にも見えるのだが、多少は考えての行動が出来るから厄介だ。
大胆な行動も出来る上に、計算上での行動も可能。
厄介性だけなら群を抜いている。
ただ、だからといってあっさり負けを認めるほど、私は潔くはないのだ。
普段ならともかく、魔皇になるためならば、私は自分である事すら捨てよう。
×××
「カルデさん、あれは一体どういう状況ですか?街に大きな被害、そこにゴードンさん、グレンさん、そして……その……変質的な格好のあなた。」
部長!やめろ!それを言うな!
って、もう解除していいのか、これ。
俺は魔神装を解除し、質問に答える。
「最初に戦ってたのはゴードンと俺だ。そこに来たのがグレンっていうのがあの状況になる。」
「やはりですか。」
「カルデがゴードン先輩と戦ってたの!?どうやって?だって、カルデは……。」
「その辺も後で詳しく説明する。今はとりあえず、あの場から離れられたんだ。魔女を探すぞ。出来るだけあっちには近付かずに。」
「わかりましたわ。」
「了解!」
「じゃあ、手分けしましょう。そうね、二手に。」
×××
俺とフゥのコンビか。
まあ、お互い身近なだけあって探す場所なんかも気が合う。
非常にやりやすい。
「ねぇねぇ、カルデ!どうやってゴードン先輩と戦ったの?」
「俺の『無』属性を上手く使っただけだ。属性の質を変えて、土属性魔力を作った。俺の体質の事はお前も知ってるだろ。」
まあ、運が良かったがな、いろんな意味で。
まず、あのタイミングでそれに気が付けた事。
それと俺もゴードンも何も考えずに街ぶっ壊してたが、人がいなくて助かった。
ただ、あれだけ騒いだおかげでさっきから避難する人をチラホラ見る。
「ねえねえカルデ。カルデの探してる魔女ってどんな子?」
「えーと、見た目は12歳くらいで紫色のロングヘアって……なんでそんな小さな声で。」
「やっぱり、あの子でしょ。」
フゥの指差す方向には確かにいたのだ、メイティスが。
×××
「大剣錬金……二重。」
両手剣を二本錬金して、両手で1本ずつ握っている。
デタラメなパワーだ。
本来両手で1本を扱う物を、片手で1本、それを両手で行う。
やはり厄介だ、この男は。
「行くぞ、雑魚。」
だが、残念だな。
確かにお前にはそれを振り回すパワーがある。
それでも、確実に動きは鈍る!
いきなり上からの大振り、これは勝ったな。
私はそれを確実に避け、魔法を使う。
「巨人の拳!」
「それはわかってたんだよ!!錬金解除、鉄拳錬金。」
そうだ、それも計算内だ。
お前なら巨人の拳は粉砕するだろう。
だがな、こちらも同じ事をするまでだ。
「魔力解除!」
巨人の拳が消え、大きく振りかぶった体勢のグレンは体勢を崩す。
パワーが大きい分、その反動も当然大きい。
これで終わりだ!
「全力だ!巨人の拳!!!」
下から殴り上げるように繰り出したこれは、ハンマーというよりアッパーだ。
これでチェックメイトだろう。
「────っ!?」
「甘いなぁ。甘々だァ。俺は甘いのは苦手なんだよ。」
ガッチリと受け止めただと……!?
あの体勢でどうやって、いや、あの威力を耐える肉体がまず理解出来ん。
「お前はずっとそのままだ、弱いやつが魔女なんかの相手しようとするんじゃねぇ。あれは俺がもらう、大人しくしてろ。」
「……しのだ。」
「あ?」
あの魔女は私のだ、何者にも譲れない、私が魔皇になるための唯一の手段。
そのためなら、私はまともさも……人間らしさすら捨てよう。
「あれはぁ!!!!私のだァ!!!」
その時、彼の背後に巨人が現れた。
×××
「部長、どうして急に戻ってらっしゃるの!?」
「私たちの探す所は一通り終わりました。私たちが次やるべきはあの2人を止める事です。」
「でも、あの御二方って魔皇とそのクラスの2人でしたわよね……私たちに止められるんですの?」
「私なら、止められます。」
流石の私も嫌な予感が止まりません。
あの2人が戦う事よりも、グレンさんが本気でゴードンさんを殺そうとした場合の被害が、ですが。
「ぶ、部長!」
「カチュルさん、どうされました?……あれは。」
カチュルさんの指差す方向、それは2人が戦っていた方向で、彼らのいた方から現れた、その巨人は間違いなく……。
「……魔神の鉄槌。」




